世界に無神経さを示した中国の衛星破壊 [日経BP]

松浦晋也氏の記事。 大体の部分は既知の問題ではありますが

今、このタイミングで中国が実験を実施した理由は、明らかにアメリカが進めるミサイル防衛構想(MD)への対抗措置だろう。MDでは、衛星軌道上に赤外線センサーを搭載した早期警戒衛星を配備し、大陸間弾道ミサイルの発射を宇宙から検知する。実験を行うことによって、中国はアメリカに対して「いざとなれば衛星破壊も辞さないし、そのための手段も持っている」というサインを送ったわけだ。それは同時に、中国が将来的にアメリカに対抗する超大国を目指すという意思表示であり「だから我々の意志を尊重せよ」という無言の要求でもあったわけだ。

しかし、どうやら中国首脳部はスペース・デブリに関する認識が甘かったようだ。国際社会は「中国は、自国の利益のためにはスペース・デブリの放出のような、人類全体の未来に有害なことであっても行う、無神経な国である」と受け取ったのである。

中国にとって、今回もっとも望ましい事態は、アメリカの観測網によって実験が観測され、しかもアメリカが一切を公表しないことだったはずである。しかし、実際には、1月17日に、米エイビエーション・ウィーク・アンド・スペース・テクノロジー誌が米中央情報局(CIA)情報として衛星破壊を報道した。エイビエーション誌は別名「政府御用達リークメディア」と言われるほど、米政府筋がリークに利用する雑誌だ。明らかにアメリカ政府には、中国の実験を国際問題化する意志があったのである。

なるほど、中国のダンマリは軍部と政権中枢との乖離かと思いましたが、むしろ想定外の大ブーイングが起こったから、というのもシンプルな考え方ですね。 となると、アメリカ側はMDへの対抗措置であるという分析をした上でカウンターとしてリークしたわけですか。 ロシアだけは「いやー俺らも昔はよくやってたもんだしなぁ」なんて言っちゃってますが、結局中国がやったのは世界中の衛星で混雑してる軌道で散弾ぶっ放したという事であって、何の言い訳にもなってませんしねw 

■関連:人工衛星破壊実験は「史上最大規模の宇宙ごみ投棄」 [AstroArts]

CelesTrakには、軌道データに基づき衝突の確率を計算するサービス(SOCRATES)も用意されている。実際に今回のデブリが衝突する確率を計算してみると、2月2日から9日(世界時)の間で人工衛星に1キロメートル以内にまで接近するケースは23件、一番近い接近は衛星からデブリまで175メートルで、一番危険性があるとされた接近は約0.016パーセントの確率で衝突に至る。

1週間で0.016%。 もちろん今後にわたって確率は蓄積されます。 さらに、捕捉しきれない極小デブリもその比ではないでしょうね。

■関連:宇宙非武装、提唱後着々と…中国衛星兵器 03年から実射実験 [産経]

宇宙空間での標的破壊に成功した中国の衛星攻撃兵器(ASAT)について、複数の消息筋は、中国が実射実験を2003年からほぼ年1回のペースで進めていたことを明らかにした。実射実験開始は、中国が02年のジュネーブ軍縮会議で、宇宙空間の非武装化を提起した翌年にあたり、中国が国際社会に向け宇宙非武装論を掲げる一方で、米国の偵察衛星などを想定した衛星攻撃の技術獲得を着々と進めていたことが裏付けられた。

実験は四川省西昌の衛星発射基地から、中距離弾道ミサイルを転用した固体燃料ロケット「開拓者1号」(KT−1)を使って行われた。同ロケットは、実験開始前年の02年に存在が公表されているが、実験は目的を隠すため衛星打ち上げを装って行われてきた。

米側では03年の段階から、中国の衛星攻撃兵器の実射実験であることを察知していたが、これまで事実の公表を控えてきた。標的破壊の成功が確認されたことで、太平洋地域で同盟関係にある日本、オーストラリア、カナダに事前通報したうえで、中国批判の足並みをそろえるため、実験から1週間後の1月18日(日本時間19日)に事実を明らかにしたという。

実験に至るまでにはもちろん構想・研究開発に長い年月を要しますから、宇宙兵器開発であわよくば出し抜こうと考えていたであろうことは明らかですね。 中国の固体ロケット「開拓者」はこれまで衛星打ち上げで数回失敗していたと聞いていましたが、どうやら衛星破壊実験に偽装したものであったと。 入念なことですねえ。