JAXA/三菱重工、H-IIBエンジン燃焼試験を公開 [日経BP]

mixiで笹本さんが見に行ってたと書いてましたが、松浦さんも取材してたそうです。

ロケットエンジンの試験には大変な手間がかかる。8月11日は深夜午前1時半から準備が始まり、実際の試験が行われたのは午後0時ちょうどだった。

例えばH-IIAロケットの打ち上げは整備棟からロールアウトして約10時間後に打ち上げが行われますが、燃焼試験でも同じくらいの時間がかかるようです。

H-IIBでは、LE-7AというH-IIAで開発したエンジンが既に存在したことから、少ない開発費でより大型のロケットを開発する手法としてクラスタリングが採用された。

日本としては初めての液体ロケットエンジンクラスタリングだが、「実際にやってみると、意外に簡単だった」(後藤智彦・三菱重工宇宙機器技術部・H-IIBプロジェクトマネージャー)という。クラスタリングでは2基のエンジンからの噴射ガスがぶつかって干渉したり、ガスがぶつかった部分が高温になり、そこからの照りかえしがエンジン本体に影響を与えるなど、エンジン1基の時とは異なる課題が発生する。しかし、かつては実際に燃焼試験を行わなければ確認できなかったことが、コンピューター・シミュレーションで済むようになるなど、周辺技術の進歩が開発を容易にすると同時に低コスト化した。

H-IIBは、徹底して既存のH-IIAの部品の流用することで開発コストを抑えている。新規開発は直径5.2mの第1段の基本構造のみ。第1段エンジン、第1段の周囲に4本装着する固体ロケットブースター、第2段、飛行中の機体の姿勢は飛行方向を制御する電子系、ペイロードを保護するフェアリング――すべてH-IIA用ものを流用するか、小改修を施して使用している。また、今回のBFTに使用するエンジンも1基は、H-IIAロケットの開発の時に使用したエンジンを再利用するなど、開発費用の低コスト化も徹底している。

来年夏打ち上げの試験1号機の調達費用は147億円。2号機以降はこれよりも安くなる見込みだが、現時点では未定となっている。ここでも費用の抑制は徹底しており、1号機に使用する第1段は、来年初頭に種子島で行う実機を使用した燃焼試験「実機型タンクステージ燃焼試験(CFT:Captive Firing Test)」に使用するものを流用する。CFTは機体構造に大きなストレスがかかるので、これまでCFTに使用した機体を打ち上げに流用した例はない。しかし「過去のCFTに使用した機体を調べたところ、十分打ち上げに使用可能な状態を保っていることがわかった」(有田誠・JAXA宇宙基幹システム本部H-IIBプロジェクトチームファンクションマネージャ)ことから、CFTの機体流用を決めた。

いや凄いケチりよう徹底した節約ぶりですねw 一連の燃焼試験で使われたLE-7Aエンジンの片方は再利用だそうで、更に来年種子島で行われるCFTで使用する機体の1段目はそのまま試験1号機に流用するとか。 …あ、でも打ち上げちゃったらH-IIみたいに飾る機体が残らなさそう…('A`) でもまあ中の人の様子を見ると開発はすこぶる順調そうで何よりです。

しかしH-IIBを巡る情勢は必ずしも明るくない。H-IIBは来年夏に打ち上げを予定している試験1号機を皮切りに、2015年まで年1機ずつ、HTVを搭載して打ち上げることになっている。つまりHTVという官需専用の機体なのだ。三菱重工は2005年にJAXAからH-IIAロケットの移管を受けてから、「年2機の官需に加えて、商業打ち上げ市場から年1機の打ち上げを受注したい」として営業活動を続けているが、現在のところ受注にまで至った案件はない。

H-IIBは、静止トランスファー軌道へ8tの打ち上げ能力を持つ。三菱重工は「国際競争力確保にはトランスファー8tの能力は必要」として、H-IIBでも国際市場からの打ち上げ受注を目指す意向だが、先行きは不透明だ。しかも、年2機の官需を持つH-IIAと比べ、H-IIBは年1機とビジネスの基礎となる官需の部分が弱い。

かなりの部品が共通なので、「まとめて官需が年間3機」というビジネススキームに持っていくことも可能だろう。しかしそのためには「H-IIB」ならではの部分をより一層低コスト化することが必要になるはずだ。

確かに、そもそも打ち上げ需要自体が頭打ちですから下手すると持て余してしまいかねません。 まあだからこそH-IIAを極力流用して大型化したんでしょうね。 ただ、それだけだと開発技術が育ちませんから、今ある技術を枯らしつつより洗練されたシステムに更新していくという流れが必要でしょうが、何とか繋げていってほしいものです。