ついに起きてしまった人工衛星衝突 “使えない高度”が現実になる時代に [日経BP]

今後、相当厳密に、(1)打ち上げ時にロケット最終段などをデブリにしないような打ち上げ方法を取る、(2)衛星の寿命が尽きた時にデブリにならないように処理する──という対策を厳密に実施しなければならないだろう。さもなくば、人類の宇宙利用も宇宙進出も、デブリのために不可能になる可能性がある。そのためには、宇宙開発に興味を持つ発展途上国にも働きかけることが必要になる。

これらの情報によると、衝突時の相対速度は11.77km/秒。560kgと900kgもの質量が、12km/秒に近い相対速度が衝突したということは、史上最大級の運動エネルギーによる人工物体同士の衝突といえる。

低高度のデブリは、わずかに存在する空気の抵抗を受けて軌道が低下し、やがて落下して燃え尽きる。しかし、抵抗となる空気が非常に薄くなる高度700kmを超える軌道に入ったデブリは、かなりの長期間、数百年以上に渡って地球を回り続ける。

高度800km付近の宇宙は、地球観測衛星通信衛星などが、主に南極と北極上空を結ぶ極軌道で盛んに利用している。極軌道を飛ぶ物体はすべて南極と北極の上空を通過する。このため、両極付近では衛星とデブリが衝突する確率が高くなる。同時に空気抵抗によってデブリが短期間で落下することもないので、現在もっとも衝突の危険性が高くなっている。

2007年の中国の衛星破壊実験は、その高度帯で実施したこともあって、国際的な非難を浴びた。

今回の事故により、ケスラー・シンドロームが現実の懸念となって立ち現れたと言わねばならない。衛星の衝突によって発生するデブリは、衝突時に与えられた初速のベクトルに従って軌道を変化させ、軌道傾斜角も、軌道高度も異なる軌道に入り、時間の経過と共に、地球が完全な球ではないことから発生する摂動によって地球全体を覆うように拡散していく。今回の事故で発生したデブリも「高度500kmから1500kmの軌道に広がった」と報道されている。

今回発生したデブリに遭遇する確率は、ISSよりもハッブルの軌道のほうが大きい。STS-125の飛行のためには、今回の衝突で生じたデブリの軌道データに基づいて、再度危険性の見積もりを行うことになる。

今回の衝突事故は、決して日本にとっても他人事ではない。日本は現在、高度700kmの極軌道で地球観測衛星「だいち」を運用している。今回の事故によるデブリ拡散は、だいちの運用に影響を及ぼすだろう。また、より低い高度490km付近の極軌道で運用している情報収集衛星の運用にあたっても、デブリ被害の定量的な評価と回避方法を再検討するべきである。

というわけで、今後は運用が終了した衛星の処理義務もより厳格に適用される必要があるという話。 確かに。 衛星と一緒に軌道に乗る最終段もそうですが、再着火し放題のLE-5Bならテストついでに噴かせばいいんじゃないでしょうかね。 低軌道に連携する小型衛星を大量に上げて静止軌道衛星の代替にするというような構想もあるそうですが、それらもこういう危険性を考慮する必要があると思います。
あとNHKニュースとかで「だいち」の運用も取材してましたが、軌道に近いデブリは常にチェックしているそうです。 僅かずつではありますがデブリも衛星も軌道は常に変化してますしね。