JAXA、H-IIBロケットフェアリング分離試験を公開 [Robot Watch]

いつもナイスレポなRobot Watchですが今回は松浦さんが取材に行っていたようです。そして分離試験のナイス動画もあり。

直径4m、全長10mもあるHTVを打ち上げるためには、従来よりも大型のフェアリングが必要となる。このため、JAXAは、従来H-IIAロケットで使用してきた直径5m、全長12mの「5S型」フェアリングの全長を3m延長し、全長15mの「5S-H型」フェアリングを新たにHTV用に開発した。5S-H型は、打ち上げ直前まで、内部のHTVに現場作業者がアクセスするための直径1,300mmのアクセスドアを持つ。また、HTVの一部突起はフェアリング内部に収まり切らないので、フェアリングの上方5カ所に流線型のふくらみ(バルジ)を追加し、HTVを完全に覆って保護できるようにしてある。

H-IIBフェアリングH-IIAと同様に、2つに割れて二枚貝が開くように開く「クラムシェル型」という分離方式を採用している。2つに分かれるフェアリング同士とロケット本体とは、全部で558本のボルトで接合する。分離面には、火薬を詰めたステンレスパイプを配線してある。パイプは潰れた断面形状になっており、電気信号で火薬に着火すると、爆発した火薬から発生するガスの圧力で断面が丸く膨らむ。その時の圧力で接合面のボルトをすべて引きちぎり、分離する仕組みだ。この方式だと、火薬から発生したガスがステンレスパイプ内に留まるので、ガスがペイロードに付着して悪影響――例えば太陽電池面にガスが付着すると発電量が低下する――を及ぼすことを防げる。

接合面には、ステンレスパイプを2本平行して走らせてあり、どちらかが着火しなかった場合ももう一方が着火すれば分離が正常に行なわれる仕組みとなっている。今年7月24日に行なった第1回試験では、ステンレスパイプを2本同時に着火して、正常動作時の分離を確認した。公開された第2回試験では、ステンレスパイプを1本のみ装着し、一方のパイプが不発に終わった状態を模擬、それでも確実に分離が行なえるかどうかを確認した。

どうやらフライトモデルにはバルジが追加されているようです。フェアリング分離のための爆破ボルトは2系統に冗長化されているもので、片方だけでの分離試験も行なわれた模様。てまあ基本はH-IIAと同じでしょうから信頼性は充分高いものでしょうけど。ていうか川崎重工三菱重工を通さず直接JAXAと契約してたんですね。

すでに実績のあるH-IIAフェアリングを改修するだけなので、フェアリングの開発は当初簡単であろうと思われたが、実際に開発作業に入ると、打ち上げ時と同じ荷重をかける試験で一部が破損するなどのトラブルが発生した。「たった3mの全長延長なので、当初は大丈夫かと思ったが、打ち上げ時のH-IIBの加速度が、H-IIAよりも大きいことなどからトラブルが発生した」(有田誠・JAXA H-IIBプロジェクトチーム ファンクションマネージャー)。

その結果、先行して実機打ち上げ用のフェアリングを製造して種子島に輸送し、並行して試験モデルで分離試験を行なうこととなった。すでに実機用フェアリング種子島に輸送済みで、今回の試験結果が良好ならば、8月17日の週から組み立て作業に入る。

今回の試験後、JAXAの中村富久H-IIBプロジェクトマネージャーは、「詳細は取得した衝撃や振動のデータを解析する必要があるが、見た限りでは成功です」とコメントした。H-IIBは、9月11日に予定される打ち上げに向けて、最後の関門を通過したことになる。

以前起きた試験中のボルト破損は打ち上げ時の加速度が異なるというところから発生したそうです。これはどうなんでしょう、事前のシミュレーション結果から想定していたよりも負荷が掛かったということでしょうか。まあ実際作ってみないと分からないこともありますが。まだ今回の解析は残っていますがとりあえず件の強度については既にパスしているのでここまで来れば問題は無さそうです。