LRO探査機器の主任科学者がスパイ容疑で逮捕される [月探査情報ステーションブログ]
アメリカの月探査機ルナー・リコネサンス・オービタ(LRO)に搭載されている機器の1つ、小型合成開口レーダ実証実験 (Mini-RF)の主任科学者で、クレメンタイン計画、チャンドラヤーン1などの月探査にも参加していた科学者、スチュワート・ノゼット容疑者が、スパイ容疑でアメリカ連邦捜査局(FBI)に逮捕されました。
報道等によると、ノゼット容疑者は、機密情報をイスラエルに売り渡そうとして、イスラエルの諜報部員になりすましたFBI捜査官に対して、金を見返りに情報の提供を持ちかけた容疑が持たれています。
ノゼット容疑者が主任科学者を務めているMini-RFという装置は、小型のレーダーで、電波を月の地表に発射することで、その電波の散乱状況などから、月の表面の様子、とりわけ氷の有無などを探ることを目的とした装置です。
ノゼット容疑者は、アメリカの月探査衛星クレメンタインの電波を使って、月に氷があるかも知れないということを提唱したことで知られています。この手法は「バイスタティックレーダー」(bistatic radar)と呼ばれるもので、クレメンタイン衛星が地球に発射する電波が、月の表面を通るときに、何らかの作用で散乱されることを利用したものです。
ノゼットらのグループは、この手法で、クレメンタインの電波が南極付近で散乱される状態を調べたところ、何らかの散乱体、おそらくは氷のようなものがあるという結論に達しました。この結果は1996年、科学雑誌「サイエンス」にも掲載され、月に氷が存在するかも知れないという話の先鞭をつけたことでも知られています。