平成21事業年度財務諸表 [JAXA]

こちらの事業報告書に色々載っています。

ブラジルがPALSARデータを利用することで雨期の監視能力、抑止能力を持ったことにより、ブラジル国内に於ける森林伐採(炭素固定量の減少につながる)は2007年まで(19,000平方km)、2008(12,000平方km)、2009(7,000平方km)と激減させることに貢献した(ブラジル国立宇宙研究所のレポートで報告)。

衛星の機能・性能に劣化傾向はなく、設計寿命3年を上回る4年2か月の運用を達成した。

「だいち」について。ブラジルでの違法伐採監視はかなり成果を挙げているようです。あと「だいち」はまだまだピンピンしているらしい。

・ 平成21年9月に8年間の設計寿命期間中の運用を正常に終了し、後期利用段階に移行した。これまでに6機のユーザ宇宙機と衛星間通信実験に成功した。
・ DRTSとALOSとの間で衛星間通信実験を継続的に実施し、ALOSの観測データの総データ量のうち、99.5%(当初計画95%)をDRTSにより取得するとともに、その観測データの総データ量はレベル0データ換算で199TBに達した。また、DRTSを用いたALOSの観測データについて、99.93%(目標99%)の安定したデータ中継を実現した。

・ 米国のデータ中継衛星(TDRS)を定常的に利用可能とするために、地上設備の改修、試験、NASAとの試行運用を実施し、平成22年4月からのTDRS定常運用開始の準備を完了した。このTDRSの利用により、ALOS観測の機会が約20%増加すると見込まれている。

ALOSデータの地形図作成・修正への利用が定着したことを受け、JICA国際協力として、フィリピン・ミンダナオ地域の地形図作成プロジェクト(ALOS画像を用いた1/50,000地形図作成、約10億円/2年間のプロジェクト。うちALOS画像購入費は約2000万円)等が開始された。

「だいち」からのダウンリンクはもうほとんど全部DRTS経由だそうです。アメリカのTDRS使えるようになったのはいいことですが、そろそろ後継機作りましょうよw あと「きぼう」からも定常運用中。1日2〜3パスあるらしい。

超低高度衛星技術試験機(SLATS)の研究
10月からシステム設計に着手し、重量300kgの小型衛星で、硬度250kmから180kmの間での高度保持、大気密度及び原子状酸素に関するデータ取得実験が成立する見通しを得た。
低軌道で高度維持が可能な衛星としては、平成21年3月17日に打上げられたESA重力場観測衛星GOCEが高度約255kmで運用されている。SLATSでは高度180kmで高度を維持することが可能である。

うおおこれってイオンエンジンで高度を維持するというアレですか。小型赤外カメラはALOS2に搭載して実証するらしい。凄いねこれ。珪素複合材の光学系は直径80cmらしい。


ほとんど同時に実施された4計画のうち、相補的データを互角な量と質で得た日米が世界トップにある。

おお、めっちゃ強気。あと「かぐや」の制御落下による閃光はオーストラリアの天文台以外にもインドからも観測されていたそうです。

衛星/センサー ミニマム成功基準 フル成功基準 エクストラ成功基準 平成21年度の達成状況
小惑星探査機
MUSES-C
はやぶさ
(期間:15年)
打上げ運用とイオンエンジン
1000時間以上の可動
(期間:15〜17年)
小惑星へのランデブー達成と
科学探査の実施
(期間:17〜22年)
探査機の地球帰還
探査機を地球と会合させカプセル回収のため、
復路運用を予定通り実施し、地球リム部への
誘導を達成した。

はやぶさ」はあの500点採点表が有名ですが、JAXAにおけるサクセス基準ではこのようになっているようです。

平成21年行政刷新会議に於いてHTV事業が仕分け対象となり、意義を認める意見もあったが、1割予算削減を目標とされた。

平成22年度分は国際約束上削減できないことから、平成23年度分以降について予算の縮減を行う。

人命が懸かっているものをムリして削って万一のことがあったら元も子もありませんからねえ…まったく。

ISSへの補給機である米国のスペースシャトル、ロシアのプログレス、欧州のATVに比較して、単位重量あたりの貨物輸送コストはHTVが最も廉価。

HTV構成機器の国産化開発を計画通り実施。
・能力向上型大容量リチウムイオン電池、船内用LED照明(宇宙用としては世界初)の製造を完了し、HTV2号機へ搭載・設置。
・HTV3号機搭載予定の国産トランスポンダ(無線中継器)は開発を完了した。また、同じく3号機搭載予定の国産スラスタは認定燃焼試験を完了して製造に着手。

製造責任一元化の目的で製造プライムとし、コスト低減のため運用機6機の一括発注を実施。

ISSへの同規模の補給機である欧州のATVの機体価格はHTVの1.4倍以上に相当する。
国内で7機連続生産する衛星や宇宙機の製造実績はなく、連続生産に対応した製造、調達、審査を効率的に実施。

コンポーネント国産化も順調に進んでいるようですね。バッテリはHTV-2から、スラスタはHTV-3から国産化

ISS近傍で安全かつ精度高く相対静止、ロボットアームで把持する独自の「新しいランデブ・結合方式」を実証した。
・米国企業がNASAの複数のために開発する類似の補給機にHTVのランデブ方式を採用し、HTVで開発した日本製の近傍接近システムの販売に繋がった。

やはり日本独自で開発した技術を実証したというのが今後のISSプロジェクトにとっても大きいですね。いきなりCOTSで使うと言ってもNASAだっておっかなびっくりでしょうし。じゃなけりゃ日本がHTVやると最初に言った時にあれほどスルーされたりしませんw

部品枯渇対応として進めている、アビオニクス機器などの再開発について、IMU、GCCの部品共通化、モジュール化などの達成目処を得た。また、再開発品とフライト品の電子部品まとめ調達の枠組み構築により個別発注と比較して電子部品調達に係る経費を削減。

2段燃焼中振動については構造様式変更による抜本的対策のトレードオフ検討、モーターケースについては材料国産化に関わるフィジビリティ検討を実施し、それぞれの課題を抽出し対応案を設定。

電子部品まとめ調達(20機)による効果として、個別発注と比較した主要機器の電子部品調達費を30%程度削減。

モーターケースの材料も国産化を検討。特許関連はどうなんでしょう? あとH-IIAの不適合発生件数のグラフ、回を追うごとに見事に反比例して減少していますね。

従来の加工品を使用した聞こうとは異なった機械的なメカニズムで作動する衛星分離機構の仕様案の設定、解析を実施し、その技術的成立性の見通しを得た。これにより、ペイロードに与える衛星分離衝撃を従来の4分の1以下に低減可能なフライト品の開発が可能となった。

これこないだのISAS特別公開でも聞きましたね。現在4000G(H-IIA/B)なのを1000Gにまで低減するそうです。

次期大型ロケットエンジン(LE-X)について、燃焼安定性、燃焼室の寿命評価シミュレーションなどの高精度かを図ると共に、燃焼室の実機大試験を実施する等、各要素技術について実現性を検討、評価して、エンジンシステムとして実施可能レベルに到達。

大型のエキスパンダサイクルは世界初の代物ですが、これについても要素試験が進められている模様です。

・HTV要求の低軌道への打上げ能力16.5tを上回る16.9tを実証。

H-IIB。どうしてこうなったww

中期の両級か更新計画の立案、保全実施計画の見直し、競争化の導入等、老朽化が進む設備に対するきめ細かい取組みにより、保全費を含めた鹿児島宇宙センター全体の打上げ関連施設・設備の年間維持費(維持・運営費)を平成19年度実績比約8.7%(約3.5億)削減。

うーん、打ち上げ時に支障が出てないとはいえあの老朽化ぶりはかなり心配です。てかデルタ4の射場不適合による延期、ここ5年で4/8って妙に多いですねえ。アトラス5は0なのに。初段が液酸/液水なせい?