第11回宇宙科学シンポジウム 講演集 [ISAS/JAXA]

1月に行なわれたシンポの資料がアップされてます。かなり大量にありますのでミーハーに取り上げてみました。それだけ目を通すだけでも2日がかりw

S1-01 あかり: 最近の成果と現況

液体ヘリウムを使い切って定常運用を終了したあとも機械式冷凍機で運用していたところ、去年2月に冷凍機が故障してフル稼働出来ない状態だったそうですが、一度温度を上げて不純物を気化する運用をしたら良い感じになったので現在再び冷却中だそうです。

S3-02 地球を観て宇宙を知る”地文台” JEM-EUSOミッション

でかっ! こんなゴツイものを曝露部に取り付けるのか… 現在光学系の試験も行なっているそうです。

S6-11 次世代赤外線天文衛星SPICAミッション部冷却システムの開発

SPICAは「あかり」の4倍以上の経の主鏡を搭載しますが、液体ヘリウムを使わず機械式のみで5kまで冷却。SMILES搭載のものをベースに開発されていて、今後地球観測衛星に搭載されていくそうです。


S3-12 小型月実験機(SLIM)の検討概要

「かぐや」が発見したマリウス孔付近を探査するという話は去年の特別公開で聞きましたが、その穴の温度データが載っています。穴の底の日陰部分は±数十度で安定した環境のようです。超小型ローバーも搭載して総重量441kg(ドライ101kg)、打ち上げはイプシロン4段形態を想定。イプシロンけっこうやるな!
ところで右上がパラパラアニメになっていますw

S3-14 次期太陽観測衛星SOLAR-C計画

黄道面から40度くらい傾けた惑星間軌道から太陽を観測しようというアグレッシブな衛星(?)。A案とB案があり、A案はいかにも探査機という形状で「はやぶさ」の3倍の性能を誇るμ20イオンエンジンを搭載。B案は「ひので」を踏襲して大型化しておりH-IIAの5Sフェアリングに収まるサイズだそうです。

S3-16 木星圏探査用ソーラー電力セイル(中型セイル)の研究開発状況

はやぶさ」とIKAROSの弟分。木星通過が4年半、トロヤ群到着が9年の見込みだそうです。クルージング中もIKAROSと同様にガンマ線バーストやダスト、赤外線背景放射や黄道面など天文観測を行なって時間を有効活用。

S3-17 国際共同木星圏総合探査ミッション

NASAESAJAXAがそれぞれ周回機を投入し共同観測するミッション。水星探査MMOと同様にJMOとして磁気圏を観測するそうです。

S3-18 MELOS火星探査WG報告: ミッション概要

MELOS-1は周回ミッションメインで、MELOS-2で着陸ミッションを検討するようです。H-IIA204型で火星軌道に2トン強送り込めるらしい。それぞれミッション内容は検討中で、ランダーD案として無着陸サンプルリターン(大気・微粒子)が挙がっています。

S3-19 月ペネトレータの技術開発の成果と今後に向けた利活用についての展望

2008年の試験で起きたクラックなどの不具合対策を行ない、2010年の試験でついに! いやあ、やりましたねえ…

P1-071 シミュレーションとフライトデータによるIKAROSセイル膜面の展開・展張挙動の評価

膜面が振動している様子が写った2次展開時の画像がいっぱい載っています。

P1-076 小型ソーラー電力セイル実証機IKAROSの姿勢制御運用について

セイルのたわみによる太陽光の拡散でトルクを発生し、スピンレートの多寡によって太陽指向を制御しているそうです。これか。

P1-077 IKAROS搭載薄膜発電システムの性能評価

薄膜太陽電池の重量は約3kg(10m²)。1AUで360Wだそうです。

P1-122 スペースプレーン技術実証機の開発研究

昨年実施された試験が載っています。

P2-023 Sprint-A搭載の導電性テザー実証実験の通信・データ処理システム

導電性テザーによる推力発生はエクストラ項目のようです。

P2-043 ASTRO-G LDRのEM試験

大型展開アンテナの展開時の鏡面精度の再現性に手こずっているASTRO-Gですが、素材の変更や「きく8号」アンテナEMでのテストなどを実施したところ、改善できる感触を得たようです。

P3-046 はやぶさ2衝突装置について

現時点での案もKaバンドアンテナを積んで平面アンテナが横並びになっています。もうこれで行くんでしょうね。軌道図も載っています。フライトモデル製作は2012年半ばに終え、その後打ち上げまで試験を実施。
観測センサにはレーダーによる地下構造の観測も加わってますが、これは「かぐや」のレーダーサウンダ的なものでしょうか。「はやぶさ」の観測でイトカワ内部は結構隙間だらけだろうというデータが得られましたが、それをより詳細に観測するようです。小型ランダ(たぶん海外からの応募)には顕微鏡まで積んでいますw インパクタによるクレーター生成は1999JU3に到着してから1年くらい後に実施する計画のようです。

P3-042 はやぶさ2衝突装置の科学目標

上のインパクタについてですが、IKAROSに積んだDCAMのような小型分離カメラでインパクタ衝突の撮影が検討されているようです! 5fpsだそうですが、これもかなりの見所ですね。

P3-048 ASSERTトモグラフィ観測による小惑星内部構造探査

今度は複数機体勢(多分2機)で確実にキメる意気込み。ミネルバをベースに余裕のある設計を組み込むようです。加速度計を搭載し、可能ならインパクタの震動も計測。
海外からはドイツやフランスから提案がある「MASCOT-XS」というローバ。サイズは10kg級でかなり詳細な観測が出来るようです。またこちらと「はやぶさ2」本体にESAの彗星探査機ロゼッタのローバで実績のある内部構造観測センサ「ASSERT」の搭載を提案中。どんどん豪華になっていきますね−。

P3-053 次期月探査計画における月面天測望遠鏡(ILOM)の開発状況

SELENE-2ミッションで月面に安定した天測装置を設置することで月の秤動を超精密に測定するそうです。天頂方向ということはやっぱり極への着陸ですよね。

P3-058 RRMD-V(被ばく線量計測用 実時間型放射線計測装置)を用いた月面放射線環境の実測

月面で有人活動をする上での被曝観測を行なうようです。

P3-059 SELENE-2の着陸地点検討報告

着陸地点について多数の候補が提案されています。中央丘人気ですね。

P3-082 Solar-CプランA適用に向けた薄膜軽量太陽電池パドル検討状況

SOLAR-CのプランA(イオンエンジン型)では軽量化のために薄膜太陽電池をフレームに固定して展開する方式が検討されているようです。この手があったか。

P3-085 SOLAR-C太陽極域観測案のシステム検討状況

イオンエンジンと地球スイングバイで軌道傾斜角を上げるSEP案と、木星スイングバイと地球スイングバイで一気に傾けるJupiter案があるそうです。なんちゅう豪快な。

P3-087 SOLAR-C極域観測ミッション案向けイオンエンジンの開発・検討状況

こちらに各国のイオンエンジンの主要諸元がまとめられています。μ10は高効率ですね。SOLAR-Cにはμ20が検討されていますが、こちらはHIsp型で推力40mN・比推力3800秒(μ10は8mN・3000秒)で更に高効率。凄いです。
イオン源については3万時間も視野に入っているようです。中和機については「はやぶさ」での劣化を受けて試験モデルの分解調査を行ない、中和機の損耗を確認し、対策を施して試験中。「はやぶさ2」向け対策を踏まえてμ20にも反映するそうです。ちゅうかイオン源と中和機セットで試験すると年間1000万円かかるのか…

P3-102 ソーラー電力セイルにむけた低温推進系統合型燃料電池の研究

深宇宙探査において推進剤を用いた燃料電池を検討中。

P3-103 ソーラー電力セイル探査機に向けた大型展開膜面構造に関する研究

膜面の折りたたみ方式についても色々検討中。

P3-106 太陽光圧を利用したソーラーセイル用燃料フリー姿勢制御系の軌道上実証結果と今後の開発展望

支柱型とスピン型の姿勢制御における比較一覧。スピン型の場合は外乱に対する補償が最小限で済み、かつ軽量というメリット。

P3-110 国際共同木星圏探査ミッション 〜木星探査衛星システム検討について〜

JMOは定常運用で赤道面から木星磁気圏観測(スピン安定)、後期にはスイングバイで軌道傾斜角を変更し三軸姿勢制御で撮像を行なうようです。太陽電池パドルは4翼ですが金星軌道付近では1翼だけ。柔軟な探査機ですね。

P3-122 火星複合探査計画MELOSにおける着陸探査

MELOS各案。個人的には無着陸サンプルリターンが目を惹きます。