金星探査機「あかつき」の挑戦 第11回:2μm赤外線カメラIR2で金星の夜面を見る [ISAS/JAXA]

 いまや携帯電話のカメラでさえ数百万画素の時代、IR2が“わずか”100万画素で自慢できるのには理由があります。それは、宇宙用のCCDは携帯電話で使うものとまったく違う性能や耐久性が必要とされること、さらに赤外線を感度よく捉えるためマイナス210℃という極低温にまで冷やして使われることです。この温度まで冷やすのはとても大変です。まず、性能の良い冷凍機を使わなければなりません。そして冷やしても壊れないCCDやレンズ(低温で縮むときに大きな力が発生します)を工夫する必要もあります。実際、IR2カメラ開発の途中ではいろいろな部品が壊れましたが、それを担当メンバー全員が知恵を出し合って解決してきたのです。

宇宙空間という極端な環境下で安定的に性能を発揮するために様々な設計が凝らされているんですね。

 IR2カメラには、金星観測のほかにもう一つ重要な役割があります。それは太陽系を漂う塵、黄道光を波長1.65μmの赤外線で観測することです。2010年10月下旬に観測を行いました(図3)が、そのときは探査機姿勢の制御やカメラの温度制御などに手こずり、性能を100%発揮した観測はできませんでした。金星軌道投入の失敗によって、「あかつき」はまたしばらく太陽系内の旅を続けます。LEONチームではこの機会を積極的に利用し、さらに素晴らしい黄道光データを得ようと計画を練っているところです。

時間は十分ありますし、是非見てみたいですね。