宇宙を利用した防災への取り組み〜災害被害を軽減するために〜 [JAXA]

きく8号」の地上アンテナは2時間もあればセットアップができるのですが、「きずな」のアンテナはセットアップにも時間がかかります。いずれにしろ、まだ実験用の機器なので、専門家が行かないと組み立てられない仕様になっているのです。

 JAXAから数名の専門家が被災地に行き、常駐するとなると、県の職員たちはその対応をしなければならず、それに手間がかかります。もちろん、私たちはできるだけ手間をかけまいとしますが、アンテナの設置場所を用意していただいたり、被災地に向かう高速道路の通行証を手配していただくといったことは、県の方にお願いするしかありません。そういったことがネックになったのでしょうか。こちらから、津波の被害を受けたほかの自治体に電話をかけてみましたが、衛星回線のメリットを理解していただいたにもかかわらず、他に優先すべきことがあり、今はそのために人員を確保できないということで断られたこともあります。

元が実験用の機器ですから、その分複雑な作業が要求されるのがネックになったケースもあったんですね。

 SARを搭載する陸域観測技術衛星2号「ALOS-2」が、「だいち」の後継機として2013年度の打ち上げを予定しています。現在開発中のALOS-2は、14日周期で同一地域を観測し、災害時には24時間以内の観測を目標としていると聞いています。また、広域観測モードの機能が強化されるようなので、今からとても期待しています。

 しかし、「だいち」が昨年の5月に運用を終えてから、次のALOS-2まで空白期間があるというのは、実用面で非常にマイナスだと思います。衛星データの利用を事業化するためには、ALOS-2以降も継続して、常にSAR衛星による観測ができる状態にしておくべきだと思います。

大いにうむ。

 ところで、最近、富士山が噴火するのではないかと話題になっているようですが、富士山も47ある常時監視の活火山のうちの1つです。今の富士山の状況は、観測結果を見る限り、火山活動の変化を示すデータはありません。また噴火警戒レベルも、平常を示すレベル「1」と低く、噴火の兆候は見られません。

やはりラスボスは九州方面ですよね…。

 例えば、岩手県山田町の役場がその1つです。津波の数ヶ月後、山田湾の被災前の「だいち」画像がほしいという依頼がありました。山田湾では牡蠣やホタテ、ワカメなどの養殖が盛んで、湾内には4000台もの養殖筏が敷設されていたそうです。しかし、東日本大震災津波により、筏は全部流されてしまいました。養殖を再開しなければ、山田町で漁業を営む人の収入がありません。そこで、筏が写っている被災前の画像を基に、山田湾の復興を行うことになったのです。震災から1年が経った今では、7割ぐらいまで復旧したそうです。

ああなるほど、そういう利用もアリなのか。そうですよね。

 また、「だいち」で行っていたブラジルの森林の違法伐採の監視も、早く再開したいという声があります。なぜなら、昨年の5月に「だいち」の運用が終了して監視を止めたとたん、違法伐採の頻度が増えてしまったのです。

あらま…。ALOS-2は来年打ち上げ予定ですから、今から期待です。