宇宙ビジネス「欧米の背中とらえた」(ルポ迫真) [日経]

要ログイン記事。

 失敗を糧にH1開発後は、宇宙空間から大気圏への無人再突入実験機などに挑み「米国の技術者と話しても、教える側に回ることが増えた」。エンジンの共同研究にも誘われた。「知識も経験も肩を並べた」

 そんな浅田の自負を打ち砕いたのは「売れるロケット」という日本にない発想だった。96年に初めて打ち上げられたアリアンのロケット「アリアン5」。ある学会で浅田は「何てつまらない開発なんだ」と感じた。エンジンの仕組みはH2Aがはるかに勝っていた。

 だがロケットは衛星を運ぶ手段でしかない。技術で劣っていても、確実に安く時間通りに届けてくれるロケットを顧客は選ぶ。「欧州は実績や価格に熱弁をふるっていた。技術力をアピールするのは私だけ。完全にピントがずれていた」。浅田は挑戦者として再び海外勢の後を追い始めた。

 H2Aの打ち上げ費用は現在、85億〜100億円。アリアンとの差はほとんどない。だが、欧州には年間200億円もの政府支援がある。欧米より衛星の官需も少なく、日本は不利な点が多い。

 部品の種類を減らすにはどうすればよいか。自動車などに使われている汎用品を使うことはできないか。いま浅田は、1回の打ち上げ費用を半分程度の50億円以下に抑える方法を模索する。

アリアン5も元々は有翼往還機エルメス打ち上げを想定して開発されたものでしたが、エルメス計画中止を受けて商業向けデュアルロンチに特化してきたんですよねえ。デュアル前提なので衛星1機当たりは割安になりますが、H-IIAでは大型化傾向の静止衛星を同様にデュアルでカバーすることは困難。H-IIBならスペック上は近付けそうですが、大型衛星用の5/5Dみたいなフェアリングの開発が必要でしょうし一筋縄じゃ行かなさそうですよね(HTV用5S-Hの開発もちょっと苦労しましたし)。他方でファルコン9のような価格破壊ロケットも(提示額が市場価格に近付いてきたという資料もありますが)台頭してきましたので、世界的に再編の時期にある感じです。