ISAS相模原キャンパス特別公開に行ってきた(前) 2012.07.28

はい、というわけで今年も例大祭に行って参りました。オリンピック見ながらだったのでアップするのがものすごく遅くなり申し訳ありません! 更には今回もアホみたいに写真撮りまくったので選んだだけで150枚超えちゃいました。これで2日間参加したらどうなるの。


あとなんか文字数制限に引っかかったので分割して上げています。

出発


今回は節約のため高速バスにて京都発横浜行き。23時55分発に乗車。速攻で消灯。



休憩はアナウンスもなくひっそりと。ていうか初の高速バス乗車にテンション上がってなかなか寝られん! そのうちうつらうつらしてると、ヒザの上に置いといたiPhoneを落っことしてしまって真っ暗の車内を探すのにかなり苦労。何だこの時間。



真夜中のSA。独特のwktk感ありますよね。



神奈川県内に入り、夜が明けてきました。ここまで来たらもう起きとこうと思い顔を洗う。

07:20

 

淵野辺駅着。近場の喫茶店で朝食を摂取。ほとんど寝てないからコーヒーが染みるぜ。

08:50

 
相模原キャンパス到着! 非常に好天で、既にかなりの暑さです。キュレーション体験の整理券の列に行ってみると、既に満員とのこと。そりゃ定員20名ですからねえ… そんなわけで、川口先生の講演の整理券を確保。






あまりに暑いので講演会場であるフィルムセンターに避難。メイン会場の開場は10時予定で、すでに路上まで大行列発生。その後20分前倒しで開場したようです。

10:00 宇宙科学セミナー『「はやぶさ」が挑んだ人類はじめての往復の宇宙飛行、そして太陽系大航海時代』(川口淳一郎はやぶさ」元プロマネ


こちらの講演は写真撮影NGとのことで、メモから起こしてみます。

広報部長・寺田氏よりご挨拶と注意事項


今日も暑い中ありがとうございます。昨日も同じ時間帯でお話しさせていただいたが、昨日来た方がまたいらっしゃるんじゃないかと思い、かなり入れ替えてきた。2010年6月13日に帰ってきたはやぶさの写真、「まほろばに〜」次のプロジェクトの立ち上げに繋げたいと話させて頂いている。今日ははやぶさ2の話も少し。
日本は大金星を挙げた。サッカーの話(会場笑い) 決勝リーグに是非進んで欲しい。自分の力を信じたから。臆せず挑戦した。2010年6月13日、帰還を前に少し心配していた。南アフリカW杯の日程(会場笑い) あとはパラシュート、簡単じゃないか?そんなことはない。再突入はとても難しい。失敗してもサッカーで取り返してくれるんじゃないかと(会場爆笑)
偕成社から出たはやぶさ本、絵を描いたのが池下さん、文章は松浦さん。考えられないような力作。
はやぶさイトカワに行ったからもういい?そんなことはない。S型小惑星、Stoneの頭文字。専門家も石ころだと思っているが、イトカワを見てこう言った。「ええ姿や」笑ってください(笑い)
月面は石と砂。地球は石だけでできていない。表面に大量の水、炭素化合物。イトカワの微粒子をどれだけ調べてもひとかけらの水も炭素も出てこない。つまりイトカワのような天体だけが集まって地球ができたわけではないということ。片手落ち。地球の材料にはC型小惑星=Crabon はやぶさ2ターゲット。環境進化や温暖化への理解が進む。炭素化合物。地球誕生時に二酸化炭素がどれだけあったか。
1999JU3、名前はまだ無い。1999年に軌道を確定したもの。後進に道を譲りアドバイザーとして参加している。「絶対ここに行け、他には目もくれるな」と言っている。JU3、JU3…「じゅんさん」(会場笑い)
やがて生命への理解に繋がる。小惑星帯、火星・木星の間。一様ではない。一番内側がS型、そしてC型、P/D型。S型はこんがり焼かれた石。外側には水や炭素が残っている。出来た時の温度が下がっていく、氷点より上がることのないスノーライン。万年雪の限界のよう。P/D型とは氷と泥の小惑星。生命起源の情報が冷凍保存されている可能性。地球の生命は地球起源?地球外起源?遺伝子が見つかれば大変なこと。
ホイヘンスがタイタンに着陸。石ころがころがっている。根源的な疑問、石はいつどうやってできたのか? タイタンの空はオレンジ色。大気があるから明るい。メタンの雨で地形が浸食され川や海がある、懐かしい景色。生命がいるかも知れない。
はやぶさの試料回収は浦島太郎。カプセルの蓋を開けたのは浦島さんじゃなくて藤村さん(会場笑い) 何も入ってないように見えて真っ白になった(会場笑い)ヘラですくってみると沢山の鉱物があった。乙姫様は開けてはいけないと言ったが、もう一度イトカワに行くわけじゃないから(会場笑い)
前人未踏の挑戦、どの国も考えていなかった。「こうすればできる」 日本人はやらない理由を探す。椅子の脚は最低3本。6本目までも付けようとして「やらなくてよかった」と言う。我々は一見楽観的だが、3本足でどんな高いところにでも手が届くという文化。学生にはこう言う、教科書や論文には過去しか書いていない、最初の3か月は独学でやって見ろ。やれる理由を見つけて挑戦しないと成果は得られない。本は1ページでも役に立つなら1冊分の価値があると教えてもらった。全部読まなくてもいい。
はやぶさ式子育て方」という本を出した。「トンビの子をハヤブサにする方法はないか」という面白いコピーを考えてくれた。しかしこの本は家族に評判が悪い。「あなたに子育ての本を書く資格はない」と家内に言われる(会場笑い) 三日坊主の勧め。いいことだ。「2日も頑張ったじゃないか」(会場笑い) 展開が開けない状況を打破するために新しい1ページを探しに行くのは良いことだろう。
私は座右の銘を持たない主義。先輩から影響を受けたことは多いが座右の銘は先人のコピーだと思う。最悪なのは名言だとかをネットで検索して見つけようということ。自分で考えるべきだと。拾い読みは良いこと。その人にとっての1ページを探しに行けばいい、そして読んだ気になれたらそれでいい。
秋田県道川。糸川はここに移って実験を始めた。イトカワ地名にも道川と付けた。1955年、ペンシルをランチャにセットする糸川の姿。私が生まれた年。カッパロケット。馬車がロケットを運ぶ。K-9M、つい20年ほど前まで観測ロケットとして打ち上げられていた。
はやぶさは2005年、燃料漏れで消息を絶った。もう一貫の終わりと思った人も多かったのでは。だがプロジェクトチームは諦めなかった。はやぶさのゴールは地球だ、迷いは無かった。簡単なことではない。百に一つだと思っていた。幸運にも7週間目に電波が入った。夢じゃないかと。イオンエンジンが止まった。「来るものが来た」。逆に「残り4か月動いてくれれば」と思った。だが奇跡が起きた。バイパスダイオードを入れてくれていた技術者には頭が下がる思い。打ち上げ前には試験もしていない。神がかり的。だが大きなリスク。電力不足、ロックアップの危険。探査機が死んでしまう。実際に起きたが、遮断機能が正しく機能した。ほんの一瞬タッチの差でイオンエンジンを停止できた。はやぶさ自身がしつけを守って助けてくれた。クロス運転ではマイクロ波の半分が反射して熱に変わり、空焚きになる。熱で絶縁が壊れると二度とエンジンが動かなくなる。太陽の方向に向けないよう細心の注意を払った。
2009年11月29日、中和神社に出掛けた。中和器の安全を願って。FOXの映画にも出てくる。決してセールスマンをしているわけでは無いがご覧になって欲しい(会場笑い)飛不動にも通わせて頂いた。東映の映画でかりんとうを食べるシーン。最初からではなく行方不明になってから。突然信心深くなった。地元には新田稲荷。ここから淵野辺駅への途中線路沿い。毎晩帰りに願掛け。御利益は確かだと思う(会場笑い)
5月12日、3300万kmからスタートラッカで地球を撮影。あまりに明るくてスミア。「終の一駆け」 最後のTCM、なんとなく不安に思った。5月中旬にイオンエンジン起動試験、なんと動かなかった。すっかり傷んで同じ手順では動かなくなっていた。なんとか事なきを得た。
東映の映画ではNASAとやりあうシーン。渡辺謙が格好良く切り返す。しかし実際にはこんなやりとりは無かった。このシーン、NASAにはちょっと刺激的(会場爆笑) しかし国際協力で駆け引きはしていた。NASA単独のサンプルリターンで抜け駆けしないようにとりつけた。仲が悪いわけではない。子供に「NASAと仲良くしてください」と言われる(会場笑い) NASAは真摯に我々を応援してくれた。NASAの研究者に「驚くべき復旧が起こりつつあるね」、宇宙協会からは「アポロ13の探査機版だ」と言われた。フォン・ブラウン賞も受賞した。アメリカは確かな成果にフェアな評価をしてくれる。本当に懐が深い。有り難い。
50年・100年後の話を。我々は責任を果たせていない。ロケットで行かなければならないという先入観。そう思って欲しくない。将来を語る時、専門家であるほど無責任なことを言えない。まずロケットと航空機の境目が無くなる。そして動力源の革新。原子力は地上では色々物議を醸しているが、木星より外側ではもう原子力しか無い。宇宙でこそ原子力が必要。月や惑星に滞在可能な研究施設ができ、太陽系で資源開発・利用が始まる。宇宙航路が拓かれ深宇宙港という港ができる。移住が始まる。最初にできる居住施設は刑務所だろうと思う(会場笑い) 太陽系大航海時代ラグランジュ点。原子力で出港する。ステーションと地球の間にはコミューター。こんな時代が来る。これはもう現実のことだとはやぶさが示した。十数年前からこの話をしている。前々信じられていなかった。
イオンエンジンやプラズマロケット、光子ロケットは推力が小さい。深宇宙港から出発しないといけない。引力と遠心力のバランスした点に深宇宙港を作る。工場や精錬場、鉱石を持って帰りレアメタルを取る。残った鉄やニッケルは捨てずに港の拡張に使う。整備ドック、リハビリ施設、娯楽施設、観光地。生命起源に迫る資料は地上に持ち帰ると危険、未知のウイルスがいるかも知れない。分析施設をここに作る。街を作る。若い人にはこういう世界を見て欲しい。
学校で習うのは「HOW」だけ。何をするべきかパッと教えてくれるはずもない。今の教育と試験は如何に要領よく生き字引に近いかを評価しているだけだと思う。センター試験もどの試験も参考書全部持ち込みしても何の問題も無いのでは。英語の単語ひとつで人生左右するかも知れない。とんでもない。社会に出た人には辞書を引けば簡単に分かる。創造性を評価する方に変わっていかなければいけない。親や教師にも創造性が求められる。
2番じゃダメですか?と政治家だけじゃなく国民全体がそう思ってないか心配。トップに立つとどうしていいか分からなくなる。2番とは最高ランクに格付けられていること。1番の人は格付けられる必要が無い。1番の人が格付ける。我々は追われる立場になったが、日本政府はもう一度後方集団から学びなおしたらどうかと考え始めてる。考えられない。
「Science」にはやぶさサンプルの分析結果が特集された。確かに素晴らしいが、本心はそう思ってない。そんなことを気にするのはいかにも格付けを信奉してるかの現れだと思う。格付けから脱皮しなければいけない。一生懸命学習すればノーベル賞を取れるというのは間違い。学習する教科書は過去だけ。1969年、人類2回目の月面着陸。2年前に打ち上げられた200kgほどの探査機「サーベイヤー3号」を訪ねた。アポロ着陸機は15t。人類はやる気になれば数年でこれほどまでに進歩するという大きな証拠。太陽系大航海時代を目指す心は生まれていた。イトカワにも人類が訪れ、ターゲットマーカーを探してくれるかも知れない。人工的なタイムカプセルを残してきた。
若い人たちには未知を探して欲しい。その人なりの1ページを探して欲しい。「高い塔」私の言葉なので座右の銘ではない(会場笑い) 水平線の向こうの未知のものが見えてくる。挑戦する心を忘れないで欲しい。(会場拍手)


質問コーナー

―P/D型小惑星とは?
川口先生:私も専門家ではないが、C型小惑星の水は氷として存在しているのではない。含水鉱物という形。本当の氷があるのはもっと遠いスノーラインの向こう側、表面が氷と泥で覆われている天体が現れる。それがP/D型。今のところはそれくらいしか分かっていない。D型、隕石の破片からD型だろうと思われているのは最近ようやく1つ見つかったがその正体はまだ分かっていない。そのサンプルリターンはとんでもない成果を上げるのではないか。はやぶさ2の後にはやぶさMk2、第2世代。木星あたりにあるトロヤ群小惑星を観測しあわよくば試料を持ち帰ろうと思っている。それがP型・D型の巣。


―(小〜中学生)すみませんこの本にサインを貰えませんか(会場爆笑)
川口先生:是非そうさせて頂きたいところだが、混乱もある。スタッフと相談を(会場笑い) この本ってどの本ですか?(会場笑い) (川口先生の著書と思われる)


―子供の頃はどんな子供でしたか?
川口先生:昨日はちょっとだけスライドに出した。同じく単に学ぶだけの少年だった。私達の世代はアポロ計画まっただ中で育ち、アメリカの宇宙ファンとして過ごした。宇宙は好きだったが将来は何をやるか分からず、日本の宇宙開発はいつまで続くんだろうという気持ちで見ていた。ちょうど中学校の頃に何度も失敗しながら「おおすみ」を打ち上げて、一方では月面着陸、大きな違いがあった。70年代後半、大学の終わる頃にはスペースシャトルが秒読み。使い捨てロケットが無くなるんじゃ無いかと言われてどうなるか分からなかった時代。せめて数年間宇宙開発に携わってみようと思い進路を決めた。学びから脱皮して決められたのは大学の終わり。昨日はこういう質問があった。「文系だけどどうしたらJAXAに入れるか?」 大学に進む時、どちらかというと理数系が苦手だからと文系だ、文系が得意だと思って文系大学を選択する、その結果として就職先を決めるのは間違い。質問からはずれるが、後輩の女性の研究者がおり、彼女は文学部考古学科。卒業時に航空宇宙工学に身を転じた。私も大学は機械工学だったが院に進む時に航空宇宙工学に変わった。「学校はHOWを学ぶだけ。学校を選ぶことで将来を決めるのは全くナンセンスだ」と話した。スティーブ・ジョブズは大学に半年しか通っていない。スタンフォードの演説がネットで見られると思うが、大学に行っても読み書きしか教えられないところだと気付いて辞めたと書いてある。本当にやりたいことが分かればそれから考え直せばいい。質問から離れたが、私も小さい頃は宇宙と決めて取りかかったわけではない。色んなことに興味を持って過ごせば何をしたいか目覚める時期が来るだろう。そんな風に考えて貰いたい。全然違う答えになってしまった(会場笑い)


―質問というより提言に近いが、今はやぶさ2が厳しい状況に置かれている。かねがね思っていることだが、国民との一体感が薄れている気がする。はやぶさ奇跡の帰還を果たし、ブームが起き、国民全体で応援する風潮はあるが、皆さんお集まりなのははやぶさが大好きな方々ばかりだと思うが、その反面前々はやぶさに興味ない、「砂粒持って帰って何になるんだ」「2号機が必要なのか」みたいなネット上の書き込みがある。先生方は一般に向けはやぶさの意義や成果を伝えていく。私もジャーナリストとして携わっているが力が足りないと感じショックを受けた。それなりに理由がある。熱心な方々はずっと興味を持って追ってていいのだがそうじゃない人にどうやって伝えていくのか。国民との一体感と言っても今のサイエンスというのは論文至上主義で学者の本文は論文だみたいな、はき違えていると思っているのだが、サイエンスというのはそもそも何故そうなるか分からないことを突き詰めていくものだと思う。論文を書くことだけが目的になってる感じ。若い人もそうだが改めていかないと。いくら最先端の成果を挙げても最初の1年間とか占有してしまって伝わってこない。国民が応援したくても何をやっているか見えてこない…(ここで川口先生ストップ)この国は科学リテラシーが無いから国だけでなく民間にもどんどん活用していって欲しい。
川口先生:演説ありがとうございます(会場笑い) 全ての人が100%何かの方針に賛成するということはあり得ない、反対する人がいて当たり前、だから国は面白い。皆が一丸となって応援し始めると全体主義もいいところ、そうなってはいけない。色んな人が色んなものを求めていく文化の上に立っている。宇宙開発だけやってればいいのではない、その通り。そういう世界があってもいいと思えたらそれでいいのではないか。多様でいい。(会場拍手)


司会:もう少し易しい質問を(会場笑い)


イオンエンジンで車は作れますか?
川口先生そうなればいいが力が弱い。燃費が良いと力が弱いので地上で動かせない。が、いずれ科学は動力源を変えていく。新しいエンジンが作られていく。エネルギーや環境を解決するためにはそういうものがでてこないといけない。そういう活動はいずれは実を結ぶ。


―計画にはなかったが、最後に写真を撮った。何故撮ろうと思ったか?
川口先生:私達自身も見たいと思った。写らなくてもいい。映す計画も無ければ、カメラも2度と使わないつもりだった。帰りの飛行では余計なものは全部電源を切っていたので凍り付く。海路が動くか分からない。スタートラッカで点で見えたが、地球を面として見るのは帰ってくる数時間前しかない。自分たちが見たいと思ったが、同時にはやぶさにとっては故郷かなと思い、はやぶさもそういう気持ちではないかなと思った。だからあえて撮ろうとしたのだろう。


―ターゲットマーカがタイムカプセルみたいになるという話があったが、ミネルバが再発見される可能性はあるか?
川口先生:難しいかも知れないがイトカワから数千〜数万kmを一緒に飛んでいるはずなので、探そうと思えば探せるかも知れない。ターゲットマーカはタイムカプセルと言っても1億年くらい。イトカワ自体の寿命があと1億年くらいだと思われている。人類が闊歩し始めたのは数百万年前と言われているが、ほ乳類は小惑星の大衝突で恐竜の時代が終わる6500万年前から。そういう小惑星木星などの引力のバランスで軌道を乱した小惑星が地球のそばに落ちてくる。どんどん供給されて無くならない。1億年に1回くらい衝突する。人類は終わりかも知れない。種が生まれて数百万年、あと何万年か、大して長くないかも知れない。他の天体に出掛けたりしているかも知れない。そういうスケールのものを残した。


イトカワの平べったいところにミューゼスの海と名付けたのは何故か?
川口先生:いいことを聞いてくれますね(会場笑い) 実はダジャレ。はやぶさプロジェクトはMUSES-C。SEA。読み方としては「ミューゼスの海」でもいいのではないか? 月にはいっぱいある。ミューゼスとは芸術などの神様。アミューズメントのミューズ。いい名前だと思うが、公式には採用されなかった。IAUに申請したが「こんな小さい小惑星に海があってはいけない」と却下された(会場笑い)

はやぶさは最後燃え尽きたが、はやぶさ2はどう帰還させるか?
川口先生:今日はその話はしていなかった。はやぶさは本当は再突入を予定していなかった。化学エンジンを故障してやむを得ず。地球スイングバイをして他の彗星や小惑星にフライバイすることを構想していた。はやぶさ2ではもう1度地球に戻せるなら戻したいと思っている。その時の燃料の残量による。ノートラブルなら残っているかも知れない。野望がある。沢山持っていけばラグランジュ点に係留できる。残念ながらそんなに余裕は無さそう。それができたらそこからはやぶさ2を回収して博物館に展示できるなと思うが難しい。

今後の講演のネタのこともあるのである程度端折って起こしました。やっぱ皆さん熱いですねw


■第1会場

 
満を持して本会場へ。メチャクチャ密度が濃いので、はっきり言って1日じゃまずマトモに回りきれません。全部ガッツリ見て回りたいところですがある程度的を絞ることになります。1階のはやぶさブース周辺はかなりの混雑なのでまず2階から。

宇宙帆船による太陽系探査

 
 

IKAROSから発展させたハイブリッド型ソーラー電力セイルによる木星探査! 現在のIKAROSでは遠心力による膜面展開方式を採用していますが、大型化に向けては収納/展開にかかる難易度が段違いになります。というわけで、インフレータブル型や形状記憶合金ブームなども検討中のようです。そういえば先日打ち上げられたこうのとり3号機に積まれていたSIMPLEというインフレータブル構造物実験装置や、あとS-310によるインフレータブルエアロシェルカプセル再突入実験など最近盛り上がってますね。
あと燃料による燃料電池ってなんだか言葉遊びみたいですがw、これが実用化されればかなり効率化できそう。




液晶デバイスが展示されていました。反射の仕方が変化していることが分かるかと思います。
スラスタ以外のスピンレート調整方法として考えられているものを聞いてみると、液晶デバイスの膜面上の取り付け角度を変えることで可能になるとのこと。他にはイオンスラスタなども。





イカロス君!



何故かリポD常設。



気圧を上げまくる実験は人だかりが凄い。

宇宙に広がるプラズマの世界

 
真空放電管によるオーロラ実験。紫なのが窒素で、もうひとつがなんとアルコールw 紫ではなく青く光っているのが分かります。ちなみにこれに磁石を近付けると発光の形状が変化します。

あかつき


超絶技巧あかつきペーパークラフト!! 静岡大の院生の方が作成されたそうです。自分も確保したのですが、作るのに1週間くらいはかかるらしい。



リチウムイオンバッテリ。民生用のものを「あかつき」搭載品サイズに組み込んで評価に用いているそうです。現在の「あかつき」の環境から、大体40%あたりが一番劣化が少ないのではないかと推定。



これについてはよく聞いてないのですが、太陽電池パネル。



こちらはスタートラッカの試験用モデル。


「あかつき」平面アンテナ。耐熱性能が高いということで通常こちらを太陽に向ける姿勢で運用中ですが、どうしても徐々に熱がこもってくるので金星到着前には想定していた温度を上回る計算になるそうです。そこからはいわば耐久試験ですね。万一という時には機体を回転させたりするかもという話も。



ふと足元を見るとあかつき艦隊。なんかペーパークラフト版より小さいなと思ってよく見ると、折り紙のような作りになっています。これは相模原キャンパスに直接送られてきたものらしい。多分100機くらいありますよねw

IKAROS

 
なんとあのイカロス君のうたがCD・DVD化するそうです! 握手券とか付いてない? ない?




探索運用。「はやぶさ」の場合と違うのは、IKAROSは大きな膜面で加速度が発生し軌道が変わってしまうことなんですよね。ですからほんの数か月でも予測が難しく、しかも探索運用自体の機会も限られるのでかなり難しくなります。是非とも見つかって欲しいですね。イカ坊おきろー!



ガンマ線バースト偏光観測も大きな成果であります。


 
今年も森先生が包囲されている光景を目にすることができました。

■第2会場

赤外線天文学

 
「あかり」の主鏡とセンサー。



 
若田さんが持ち帰ったIRTS。今回しっかり撮ってみました。




今年もSPICAの主鏡イメージが登場。これ写真じゃさほどでもないですけど実際かなりの大きさですよ。


―SPICAでは完全な機械式冷凍機を搭載するが、何Kまで追い込むか。JWSTは?
放射冷却だけで20K、機械式冷凍機で4Kまで冷却する。ヘリウムによる冷却では周りを囲むのでその分口径が小さくなる。機械式冷凍機について日本のお家芸アメリカでは作れと言われてもそう簡単には作れない。JWSTは約40K。感度を犠牲にしても大口径で高い空間分解能を得ているが、SPICAは極めて高感度を狙う。近赤外と中赤外、観測域の違い。



で、質問したことによりあかりちゃんの薄い本2巻ゲット! ネタバレは伏せておきますが今回もかなりトばしております。こちらもいずれWEBに公開されるかと思われますので請うご期待。

X線ガンマ線

 

ここで例のコンプトンカメラの話を聞いたら、なんと背後からあの会見をされた方がw ということはもしかして高橋先生? 2枚目の写真の中央あたりの部分がコンプトンカメラですが、本気出したらGoogleストリートビューやムービーのような撮影も可能とのこと。




天然シンクロトロンハァハァ


JAXAの科学衛星データアーカイブ

科学データを公開しているDARTSについてのミニ講座。
 
 
 
 
 

うむ、フォーマットの話はさっぱりわかりません! 世界各地の受信局を通じて送られてきたパケットを整理し各観測機器のデータを取り出していくという手順が必要なんですね。

「あかり」ギャラリー

 
通路にどーんと貼り出されていました。美しい…


中庭

ローバーの実演が行われています。今日は天気が超いいので発電も捗っていることでしょう!


 
銀河連邦の出店が並んでおります。小腹が空いてきたのでいくつかお菓子類を摂取。JAXAカレー魔王は興味深いですが時間が無いので泣く泣くパス。

■第3会場

電気推進


加速効率の一覧。こうして見ると惑星間航行はやはり電気推進の独壇場ですね。



マイクロ波放電式イオンエンジンの概念図。実は今まで中和器ってどうやって電子を誘導してるのかよく知らなかったんですが、聞かぬは一生の恥! それ用の電極があるそうです。純粋な電子だけというわけではなく、僅かにイオンも放出されるとのこと。



イオンビームで高層大気を観測! そういうのもあるのか。


 

イオンスラスタ以外にも様々な電気推進が研究されています。


 
μ-1! 去年は見に来られなかったので初めて見ます。何これイオン源と中和器ハイブリッドなんですか? いや写真撮るだけでその場で聞けなかったのが惜しいです。


 

DCアークジェットがチェンバ内に鎮座召されていました。内部壁面は焦げております。


 

試作品はこないだ博物館の方に展示されていたものですかね。こちらも生々しく焦げております。



μ-20が青々と動作中でした。


 
 
 

そしてμ-20を実証するのがこのDESTINY。μ-20単発で「はやぶさ」μ-10の3基同時運転を上回る推進性能を持っています。将来的にはSOLAR-DやはやぶさMk2搭載を狙っている強力なヤツ。現在はイプシロンで打ち上げる小型衛星シリーズの3機目を狙っています。このパネルを見るとH-IIA相乗りも狙っているっぽいですね。DESTINYもう1つの目玉としては薄膜太陽電池。大幅な軽量化が見込めます。
更に重要なのは、運用負荷を下げるための自律化。「はやぶさ」ではほぼ付きっきりでした。イオンエンジンで航行するということは常に軌道が変化しているということで、しかも推力は結構変動します。今後深宇宙を狙うにあたっては解決しておかなければならないところです。マンパワーは有限ですからね。



こちらはやぶさ2用中和器単体の動作試験。西山先生に手応えを伺ったところ、「これでいくしかない」との言。またクロス運転機能については「はやぶさ」ではぶっつけ本番のため空焚きや組み合わせなどの問題がありましたが、そのあたりの汎用性も高めて搭載するそうです。


■第4会場

宇宙環境試験室

 

  • 60度〜+80度の大気圧下で熱試験を行う設備が公開されていました。ギラギラ。


本日のM-V

■再び第1会場

はやぶさはやぶさ2

 
はやぶさ」が「はやぶさ2」コスしてます。衝突装置もしっかり付いていましたw




ん? なんぞこれ? はやぶさコスの隼…?




はやぶさ」と「はやぶさ2」主要諸元比較。ミッション機器をたっぷり搭載し、滞在期間も6倍に。ローバやらランダやらインパクタやら分離しまくりで楽しそうですね!




 
そしてこれが話題のインパクタ(衝突装置)とそのライナ(衝突体)。純銅。小惑星表面の組成に少なく、かつ分離して観測しやすい素材。ちょっと持たせてもらいましたが2kgありかなりズッシリしてますよ。そりゃこんなもの2000m/sでぶつけたらクレーターの1つや2つ(?)できますわな。



こちらに一筆をとのことでしたので、ヘタクソですが寄せさせて頂きました。誰か適当に書き足しておいてくれないかなあ(願望)




こちらの方にも既に沢山。




キュレーション体験実施中。マニピュレーターを用いて模擬粒子を拾い上げるわけですが、この時かなり苦戦しているようです。通称「こんなに大変なんですよ」イベントとか何とかw

月探査関連

SELENE-2。
 
ローバのアームでしょうか。


 
走破性能を高めるため様々な走行機構を検討中。柔らかい方がグリップが良いようですね。



 
陸技術。誘導とスロットリングはクリティカルな部分ですね。日本はアイソトープは使えませんので(笑)、越夜には再生型燃料電池などを駆使してひたすら耐える必要があります。



模擬レゴリスを体験。かなりのきめ細やかさです。


 
SELENE-2着陸地点の国民投票。あの穴がほぼ当確の様相です。虎穴に入らずんば虎児を得ず。穴があったら入りたい。


 
 

「かぐや」観測画像ギャラリー。鉄量マップは初めて見かけました。



小型月着陸実験機SLIM。小型衛星シリーズですが、NEXTARの面影はもはや見当たりませんw 見ての通り、セラミックスラスタを搭載する計画です。ちなみに「あかつき」でのスラスタ破断は推進剤を供給するための圧力をかけるヘリウム系バルブの閉塞による混合比異常が原因で、スラスタは設計通りの性能を出しています。むしろその後の調査過程における様々な破壊試験で多くのデータが得られたとも言えますね。



これは越夜用のドーム。断熱材で覆うことで放熱を大幅に減らし保温に貢献します。


 
SLIMではSELENE-2に先駆けて高度な自律着陸を目指しています(といっても同時進行に近い気もしますが)。イチオシはやはりあの穴。


 
一瞬よく分かりませんでしたが、なんと観測機器を投げちゃうそうです! 踏破困難な地形に阻まれた場所からでも目的の地点へ無回転で安定した投擲を行い任意の機器を設置。確かにこうすればクレーターの内部なども容易に調査できそうですね。根掛かりすると切るしかないですがw



観測ロケットに実験用の太陽観測センサを積んで技術実証するそうです。


■第5会場

イプシロンロケット

 
 
小型科学衛星シリーズとしてサクセスクライテリアを設定してるんですね。


 

隣にインフレータブルカプセルが展示されてました。どうやら今度実験する物と同等サイズのようですね。ちなみにこの実験、九州地方の大雨による土砂災害の影響で延期されていましたが8月7日に実施するというアナウンスがありました。


ミニ講演 森田泰弘プロマネ

さて、毎度濃厚な雰囲気を放つこのブースの講演を実はまだ聞いたことがありませんでしたので、来年の打ち上げ前にがっつりレポですよ。

 

イプシロンは全段個体3段式ロケット。直径2.5mでM-Vと同じ。全長24m。M-Vからちょっと短くなった。軌道投入は最大1.2t。小型といってもそんなに小さくない。打ち上げ場所は念願かなって内之浦。来年打ち上げる衛星はSPRINT。イプシロンは切り開くロケット。新しい技術をつくろうとしている。モバイル管制、自律検査。ロケット管制がパソコンになる。



私のスライドもだんだん進化しているが、ロケット打ち上げの仕組みを簡単にして敷居を下げようというもの。機体の性能だけでなく組立や点検といった運用を簡単に・少人数・短期間・コンパクトにする。衛星にとっての使いやすさ。M-Vまではレーシングカー。乗用車みたいに簡単に乗れるものにする。ユーザーにとっての使いやすさ。目指すはボタン一つで飛んでいくサンダーバード



色々新しいことに挑戦しているが、代表格は打ち上げシステムの改革。鍵を握るのは電気製品。誘導制御、通信、それを動かす電機。それらの一部を自動化して人手を介して行っていた点検作業を自律点検させる。鉄腕アトムは知能を持ったロボット、イプシロンは知能を持ったロケット、別名「ロボケット」そろそろ皆さんの間で浸透してくれるといいが(会場笑い) 打ち上げ風景は随分変わる。管制室はロケットの機器が正常か異常か点検して火を付ける心臓部。


2006年にM-V最終号機を上げた時の写真。沢山の管制装置とそれを見る人、最高100人くらい。アポロ時代のお祭り騒ぎが未だに続いている。むしろ大好きだが、残念ながらいつまでもこれだと未来は開けない。この巨大な管制室がパソコン数台と数名に集約される。ネットワークにアクセスできればここからでも管制できる。そうなれば私は現場にいなくてもいいと言われそうで怖いが(会場笑い) これらをモバイル管制と呼ぶ。こういう取り組みは世界でも初めて。



イプシロンロケットは固体燃料。乱暴にいうと花火、非常に構造が簡単だが燃え尽きるまで止められない。軌道に投入する時に燃料が余ると目的の軌道を通り過ぎる。液体だと切ればいい。正確さでは固体は損をする。イプシロンでは色んな工夫をしているがなかなか大変。F-1ドライバーだったら運転できる車。皆さんでも乗れるようにする。



反則技みたいだが第4段に小さな液体ロケットをオプションで載せられるようにする。来年打ち上げるロケットにも使う。M-Vの時代にも制御用の小さな液体エンジンは載せている。それを4段ロケット用にちょっと改造。これは実際にもうできている。地上試験用に組み立てている写真だが、網目の下に小さなエンジンが隠されている。このへんに誘導制御や通信などが載っている。エンジンよりも遥かに沢山の電機。一番上は衛星を載せる台。これはここで組み立てていた。


振動試験の様子。飛んでいく時のような振動をかける。モーターケース、2段目の胴体。見覚えがあると思うが、隣に置いてあるM-V3段目を改造したもの。水を入れて圧力をかける試験。緑色の部分が試験装置。力をかけて打ち上げる時の耐えられるかどうかという試験。無事に終わった。来年8月打ち上げ。ちなみにこのモーターケースはプラスチック製。炭素の糸をぐるぐる巻きにして熱を加えてものすごく丈夫。しかも軽い。M-Vの時よりも遥かに軽くて丈夫、安くて性能が良い。しっかり改良している。



イプシロン開発では地上設備でも工夫。発射台、まっすぐ上に飛んでいく。M-V時代のものを改良して使う。発射台の位置を上に持っていって音響の反射を減衰させる。下にスロープを付けて燃焼ガスを反射しないようにする。これらの影響は従来の1/10ぐらいになる。能代でサブスケールモデルで確認試験をした。(動画)2秒ぐらい。効果を確かめた。



大きなロケットモーター燃焼設備もあり、2008年3月にM-V2段目燃焼試験。推力100t、燃焼時間100秒くらい。(動画) この会場から出て表にあるM-Vがそのとき使ったもの。


内之浦大隅半島の先の方にある秘密基地みたいなところ。世界の射場はだだっ広いところにある。ケープカナベラル、バイコヌール、種子島。何故か固体は山の中、外からはなかなか見えない。山の峰の先をちょん切って作った。レーダーや別のロケット打ち上げ設備や誘導制御などの設備が山のあちこちに隠されている。国道と発射台を結ぶ橋があるが、M-Vを運ぶ橋ということで「五運橋」と呼んでいる。ここの補強工事をしている。イプシロンを運ぶにはもう少し丈夫にしたほうがいいということで、M-Vは金属製で2分割だった。イプシロンでは一体のもの。


イプシロン開発はいよいよ佳境、準備は順調。となると2号機はどうっているのと聞かれるわけだが、まず2013年にSPRINT-A、ちょっと間が空いて2015年にERG。合わせてイプシロンの改造。コストを下げて性能を上げるという調子の良いことを考えている。3段ロケットの上にたくさんの電機を載せる構造。今は金属の棚でボルトで結合。簡単だが重くなり人手と時間もかかる。これを2号機ではプラスチック製にして最初から棚の形にすることで軽くなり人手も少なく安くなる。これからはプラモデルのように簡単な構成で作れるようにしようという私のアイデアサンダーバードに続くガンダム方式(会場笑い)


イプシロンでどんな衛星を打っていこうかというもの。全く個人的な希望、決まってるものも決まってないものもある。まず来年SPRINT-A。2015年12月にERG。言っても怒られないと思うが、ほぼ限りなく決まっている。3号機以降は競争が熾烈。ひとつの候補は経産省のASNARO。シリーズなので是非ともイプシロンでと。一説では2015年に打ちたいという話もあるので、もしかしたら2015年に2・3号機両方? 他にはDPFやSLIMが4号機。一生懸命競争している。毎年1機、できたら2機打てるような体制をこしらえていきたい。


質問コーナー

―春の筑波の公開で総合環境試験棟に2段目があったがあれは何を?
森田先生:多分音響試験。固体ロケットは相模原でできることが多いが音響試験は筑波が充実している。


イプシロンは日通のトランスポーター(輸送トレーラー)に乗れる?
森田先生:今司会をしている人がトランスポーターの専門家なので(会場どよめき)
司会:載せた時のイプシロンとトランスポーター合わせて170t。今の橋だと心許ないということで強化。トランスポーターはプラレールのように繋いでいくことができる。
森田先生:もし気が向いて1段目を大きく作ってしまっても運べる(会場笑い) 街の交差点、私が泊まっている旅館の近くの電信柱を抜かないとだめという噂があるが抜かなくても良さそう?
司会:港から実験場まで2ルートある。「消防署ルート」と「ラーメン屋ルート」(会場爆笑) 8月の後半、それ次第で抜くか抜かないか(会場笑い)
森田先生:できたらラーメン屋ルートで(会場笑い)


―スライドの左上に気になるマークが
 
森田先生:イプシロン命名の謎については初号機打ち上げの時の記者会見で公表しようと約束しているので言いにくいが(会場笑い)、アレを見れば大体分かる(会場爆笑) ああやっぱりそうかと思って頂ければ。


―(小学生)1週間くらいで打ち上げられるという話だが
森田先生:1段目を据え付けて、次は2段目、3段目、打ち上げまで6日間。約1週間で撃てるようにしようというのがスローガン。何故かというと、サンダーバードは毎週やってるから(会場爆笑) 君が大人になる頃には飛行場にいっぱい並んでいてブーンと行って帰ってくる
―そうなるとニュースにならない(笑)


―五運橋、イプシロンの時には「E運橋」とか?
森田先生:五運橋のほうが運が良さそう(会場笑い) ちなみにイプシロンの時はM-Vの管制室は使わなくなるので、レーダーの基地のあたりにプレハブを作って小さな会議室のような管制室にしようかと。イプシロン管制センター、略してECC(会場笑い)


M-Vから1/5にコストを圧縮するという書き方だったが、上の方もこりゃいいということで予算を削ってくるのではないかと心配しているが、
森田先生:射場運用に関わる費用の観点で書いてあるが、機体の値段もあってイプシロンはまだ半額。もう少し先の計画としてE-1がある。2017年を目処に低コスト版をつくろうと。これが1/3。世界の同クラスで同じくらいになる。人件費や円高で勝負するには損だが、ロケットを作るのに必要なこととしてはトップレベルになるのでは。打ち上げ機会を増やして成果がどんどん出てくる。その好循環を作る。今は何年かに1度だが、毎年世界最高の成果を出す。そうすると予算もぐっと取りやすくなる。
―是非1年間で50回を(会場笑い)


―カラーリングは
森田先生:何か良いアイデアは?
―縦縞・赤白もしくは黒か黄色の(会場笑い)
森田先生:Σ(゚Д゚) 個人的には白地に黒い線を縦に(会場笑い)


―(小学生)毎週打ち上げたら漁師さんとかどうなるか(会場どよめき)
森田先生:今は昔と違って1年間通していつでも打てるようになっている。イプシロンはこれまでとちがって雨にも風にも負けないロケットにしようと思っている。多分決めた日に素直に上げられる。すると年50回、何時間×50、今よりは迷惑をかけることはぐっと少ないかなと思う。


―モバイル管制で想定外のエラーが起きた場合はどう対処するか
森田先生:究極の目標は全部機械にやらせることだが、人間が依然2・3人居る。何をもって正常化、異常かを確認しながら進める。今のところは人手でもって対処する。


―打ち上げの人数150人から1/10にする、担当を減らすのか、10人ぐらいいたのを1人にするのか。
森田先生:両方あると思うが、一番は組み立て工程の簡略化。今までは専門家が独立していたが、さっき言ったようにプラモデルのように簡単にする。特殊なエキスパートが沢山いたのが、一般の人が少人数で色んな作業をできるようになる。1人の人が色々できるようになる。


―ヘルメットは?
森田先生:いーい質問! 僕はヘルメットを被るのがというより被れと言われるのが嫌いだが、能代で燃焼試験をした時はイプシロン管制に近い。念のために被るかも。というのも、ひと実験の割ってヘルメット返すときにふと見ると傷だらけ。知らない間にぶつけてる。多分被った方がいいのかなと。


イプシロンに載せられる衛星は最高どのくらい?
森田先生:軌道によるが、ぎりぎり地球を回るような軌道には1.2tくらい。小型と言いながら結構立派。より遠くに行こうとすると軽くなる。はやぶさが500kg。あの倍くらい。


M-Vのような基地外加速で飛んでいく?
森田先生:基地外がどれくらいかによるが、発射瞬間が3Gくらい。だんだん機体が軽くなり、3段終端で10Gくらい。


―4段目が液体で調整できるということだが、3段目までで予定よりも加速が付いた場合にも調整できる?
森田先生:3段目で軌道に乗っている。高すぎれば低く、低すぎれば高くできる。スピードの調整=高度の調整。位置エネルギー


―技術継承という点ではマイナスではないか?
森田先生:いい質問。自動で点検してくれるから少人数になると話したが、工場での作業は沢山ある。データベースを作りロケットに教え込む。それ自体はエンジニアがする。95%は工場や相模原。色んなエンジニアが教え込む。その作業で継承されていく。決して空洞化が起こるわけではなく、むしろ加速される。


M-Vは電波誘導、イプシロンではどのように
森田先生:私は担当が誘導制御、そういう質問を待っていた(会場笑い) イプシロンでは慣性誘導。イプシロンの次の世代ではアンテナ系もモバイルできるのではと。そのためにはレーダー不要にする必要がある。残念ながら古典的な電波誘導は卒業する。今は地上にたくさんのレーダーや軌道計算機が必要。1つ40億〜50億もする。これからは自分で計算させる。

最終的にはテレビの中継車スタイル。「モバイル追跡系」。ここまでくると発射基地には台さえあればいい。当面の目標。


―「いつでも打てるように」とあったが、ロケットは基本的に耐候性が悪い。そのあたりの改良は
森田先生:色々工夫があって、例を挙げるとM-Vの場合はロケットに付ける通信用コンセントが一杯付いていてそこが防水になっていないため雨に弱い。ノーズフェアリングのコルクが悪いというのは伝説。イプシロンでは防水になるだけでなくそもそもコンセントが表に出てこない。ロケットの一番下の外から見えないところに付いている。1時間8mmくらいの雨・風速30mでも設計上は打てる(会場どよめき) じゃんじゃん降りの大嵐の中でも打てるものなら打てる。実際にはしないと思うが(会場笑い) M-V時代に比べると心配することは少なくなる。


はやぶさくらい探査機はどのくらいのところまで打ち上げられるか
森田先生:200kgくらいまで惑星間軌道に打てる。小型軽量な部品を使えばはやぶさと同じような探査機も打てる。イプシロンのような小型ロケットでも惑星探査をやろうという話になっている。そのうちの1つがSLIM。

いやあ、しかしノーズフェアリングのコルクが弱いというのは俗説だったというのは意外でしたw というか設計上では嵐でも打てるというタフなロケットになるようで、これはそうそう延期がなさそうで見る側としても実に心強いですね! むしろ自分の身を心配すべきレベルですねw 森田先生の講演は初めてでしたが、とても丁寧な話し方で分かりやすく、それでいて濃かったです。しかしやたら鋭い質問を連発していたあの小学生はいったい何者…!?



あと森田先生にサインを戴きました! ありがとうございました!


ロケットシミュレーション


これすんごいやってみたかったんですが、ちびっ子の山だったので諦めましたw


後編へ