イプシロンロケット試験機による惑星分光観測衛星(SPRINT-A)の打上げ中止について [JAXA]

さて、今回は打ち上げ19秒前にエマージェンシーストップがかかり8月27日の打ち上げは中止されました。

No.1699 :27日イプシロン初号機打ち上げ中止、森田プロマネ記者会見 [宇宙作家クラブ ニュース掲示板]

こちらで27日16時から行われた会見の模様が詳細に起こされています。


原因は姿勢異常、ロケットがロール軸周りに閾値より1度ほど逸脱した「かのような」値が送られてきたため自動停止したというもの。当初はバッテリー(熱電池)が起動せず打ち上がらなかったと報じられましたが、熱電池は打ち上げ15秒前に起動するものなのでこれは単に打ち上げシーケンスが中断された結果であります。2度行われたリハーサルでは打ち上げ18秒前までの手順を確認していますが、そこでは今回のような現象は発生しなかったようですね。また実際には姿勢異常は無く、機体にも異常は見られなかったとのこと。現時点ではセンサーや計算プロセスではなくデータの転送過程に問題があった可能性が高いと見ているようです。また、新開発の自律点検システム「ROSE」は打ち上げ準備作業で使用するものなので今回の件には関わっていません。
つまり原因としては恐らく比較的対処が容易なものと見られており、再設定される日時はさほど先にはならないでしょう。

打ち上げ直前に中止となったイプシロン - そのとき何が起きたのか [マイナビ]

大塚さんが当日の流れを分かりやすくレポートしてくださっています。

イプシロンロケット試験機 打上日再設定の見通しについて [ファン!ファン!JAXA!]

 平成25年8月27日(火)にリフトオフ約19秒前に打上げを中止したイプシロンロケット試験機については、現在引き続き原因を調査中であり、慎重を期して今後の原因調査作業、対策確認等を行っていくことと致しました。
 このため、打上げ日を8月中に決定することが難しい状況です。

 原因調査の結果や打上げ日については、わかり次第お知らせします。

ロケット打ち上げ再挑戦は9月 JAXAが発表 [47NEWS]

 トラブルの原因調査が終わらない上に、発射場の内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)周辺に台風が接近して作業に影響する恐れがあるため、8月中の打ち上げを断念した。

イプシロン打ち上げ 来月1日以降 [NHK]

JAXAは原因の究明に基づいて対策を完了させたうえで、気象条件などを考慮して速やかに具体的な打ち上げ日を決めたいとしています。

イプシロン機体異常なし、データ伝送のトラブルか JAXA [産経]

 新型ロケット「イプシロン」の打ち上げが直前のトラブルで中止されたことを受け、鹿児島県肝付(きもつき)町の宇宙航空研究開発機構JAXA、ジャクサ)内之浦宇宙空間観測所では28日、関連企業を含む数十人態勢で原因の調査を行った。原因はある程度まで絞られたとみられ、他の箇所でも同様の問題が起きないか検証を始めた。

 宇宙関係者の間では、不具合の原因は比較的短期間で判明するとの見方が強い。当初は8月30日にも可能とされた打ち上げ時期が9月にずれ込んだのは、再発防止のため、より慎重な確認と検証を進めていることも一因とみられる。

JAXA:新ロケット「イプシロン」打ち上げは来月以降に [毎日]

 宇宙航空研究開発機構JAXA)は28日、新型固体燃料ロケット「イプシロン」の8月中の打ち上げを見送り、9月1日以降に打ち上げ日を決めることを明らかにした。打ち上げ日は決める際に2日以上の間隔を置いて設定するため、実際の打ち上げは9月3日以降となる見込み。

イプシロン打ち上げ、9月3日以降 [南日本新聞]

 宇宙航空研究開発機構JAXA)は28日、トラブルで延期した新型固体燃料ロケット「イプシロン」初号機の打ち上げ日を8月中に決定することは困難と発表した。打ち上げは早くても9月3日以降になる見通し。

どうやら再設定は9月初旬になりそうな感じですね。最短でいけば3日後という話もありましたが現地自治体との調整なども必要ですし、少し余裕を持った日程で行くようです。

信号系トラブルか 開発責任者「想定外のことが…」 [産経]

 JAXAなどによると、初号機は機体自体に異常はないことから、原因は信号系のトラブルの可能性がある。IT(情報技術)の積極採用を目指すイプシロンだが、駆け出しから技術の未熟さを示した形だ。

 また、イプシロンは低コストや打ち上げの簡易さを徹底追求し、新たな発想で開発された。こうした開発姿勢が裏目に出て、今回のトラブルに何らかの形で影響しているとすれば、開発姿勢自体を再考する必要もありそうだ。

 イプシロンは将来、商業衛星の打ち上げ市場への参入を目指している。契約日にきちんと打ち上げることは顧客の信頼を得る上で重要な要素の一つであり、市場参入へ不安を残すスタートとなった。

はァ、なんでのっけからこんな切り捨てるような記事書いてんの?
トラブルはトラブルですから当然しっかり対処する必要があります。しかし、打ち上げ直前に中止されるなんてことは別に珍しくもありません。最近ではファルコン9は打ち上げ0.5秒前に緊急停止しましたし、多大な実績のあるアリアン5もメインエンジン点火後に緊急停止を行っています。どちらも商業打ち上げ市場を狙う、あるいは多大な実績のあるロケットですがそれで信頼性が落ちたなどという話はありませんので余計な心配でしょう。むしろ何かあれば安全側に倒すということが大事です。今回の件では送られてきたデータが何らかの理由で誤差を含んでいたというもので機体そのものは健全でしたが、よく分からないまま打ち上げるのは当然危険です。ましてや全く新しい管制システムを導入したロケットの初打ち上げであり、それを実証するための「試験機」です。実績あるロケットよりトラブルが出やすいのは当然で、そんな事は海外のユーザーも百も承知ですし、逆に1回成功したくらいで信頼性がどうこうということにもなりません。
また安全確認を非常にシビアに行っているというのもありますし、今は確実に打ち上げを成功させるための必要なプロセスにあります。この段階で開発体制がどうのこうのと訝るのは根拠のない邪推に過ぎませんし、「絶対不具合を出すな」「絶対予定通り上げろ」というような圧迫こそ大きな失敗に繋がる要因です。そもそもロケットが延期するなんて日常茶飯事。この程度で打ち上げ失敗したかのようにつるし上げてる人もちらほら見かけますが、もう少し心に余裕を持って新しいロケットの誕生を見守って頂きたいと思います。この記事の最後のページにあるコメントのように。(この記者、それ読まずに書いたんですかね?論調がまるで違いすぎてズッコケるレベル)


また一部では「打ち上げ失敗だ」などと言われていますが、ロケットにおける失敗(Failure)とは打ち上げた結果の1つを意味します。今回のように失敗しないために打ち上げ直前に中止(Scrub)するというケースは上にも書いたとおりままあることで、そこを混同することは誤解を招きます。どのような要因であっても打ち上げ中止とは確実に打ち上げ成功させるための判断です。


ただこの記事では触れられていませんが、現地住民の方々や調整が必要な行政関係などに影響があることは否めません。それはたとえ理由が技術的なものであれ天候上のものであれ変わりませんが、多くの方々にご協力頂いているという意識が必要なことは言うまでもありません。自分もなんか偉そうに書いてしまいましたが足を向けて寝られません。