『この国の国民でよかった』

「アンマンに到着したのが夜中でした。明くる朝一番には、ヨルダン国王に面会できました。政府関係者でなく、自衛隊員でもなく、マスコミ関係者でもない。ごく普通の日本人一青年であります。何とか救い出してあげたいのでご協力下さいとの申し出に、国王は大変親身になって話を聞いて下さり、さっそくあらゆるつてを頼ってイラク国内の情報をさぐって下さいました。そして、すぐに香田証生さんを誘拐した犯人を二名特定して下さったのです」
おお、と参加議員は息を呑んだ。そこまで順調に進んだのにどうして殺されたのか?!
「ところが、ここからが硬着状態に入りまして、なかなか情報が取れませんでした。というのも、誘拐犯人が、反イラク政府グループに香田さんを売り渡してしまったのです。なんとか誘拐犯に接触して、香田さんを買い戻すように交渉しましたが、反イラク政府グループはまったく交渉には応じず、最悪の結果を迎えることになったのです。外務省としても出来る限りのあらゆるルートを使って努力をしましたが、本当に残念です。

結局、日本人人質は反権原理主義者に利用されただけだったってワケです。

その後、私たちはご遺体を収容し、香田さんのご遺族に届けました。私も同行し、親御さんに対してごあいさつをして参りました。その時、対応していただいたご両親のお言葉を、ぜひ皆さんに伝えたいのです。マスコミには何度も報告しているのに、取りあげてくれません。皆さんの口から、有権者に向けて発信してほしいのです」
参加議員はさらに身を乗り出した。
「ご両親はこうおっしゃいました。ふつつかな息子が、勧告を無視してイラクに入国したがために、日本政府に大変ご迷惑をおかけし、多くの国民にご心配をおかけしたことにおわび申し上げます。私の息子のために、本当に寝食を問わずに対応していただいた全ての方に感謝申し上げます。私の息子は本当にこの国の国民で良かったと思っています。日本の国に生まれたことを誇りに思います……。私は副大臣として、ていねいに対応したつもりですが、こうしてご両親が感謝の意を表して下さり、日本の国民に生まれて良かったと面と向かって伝えていただき、本当に心を動かされました。マスコミは自衛隊派遣の是非や、撤退の賛否などについてばかり論評を費やしておりますが、香田さんのご両親の肉声を大きく取りあげてはおりません。どうぞ、真実の声を、無念の想いを皆さんもご理解下さい」
と、静かに発言を結ばれた。
(強調当方)

本当に素晴らしいご両親です。 かたや労力を費やした政府に対し訴訟を起こす逆切れ人質もいれば、家族の意を無視して政争の具に利用する活動家もいるというのに。 マスコミは煽るだけ煽ってフェードアウトしすぎ。
改めてご冥福をお祈りいたします。