『いわゆるA級戦犯』を読んだ

自分も書く時は"「A級戦犯」"と括弧付きで書きますが、まさにその意。 この本では「戦犯」として実刑を下された人物、容疑をかけられた人物、赦免された人物などを一人一人掘り下げて「戦犯」という単純で大雑把なレッテルを排することにまず努めていて、その描かれている人物像がとても興味深いものになっています。 「A級戦犯」とはつまり戦争を共謀して実行した罪という意味ですが、そんな計画性が旧日本軍にあるはずも無いのは自明ですし、同じく戦争を行なった連合国側も同罪という話になります。 「戦争指導者の無謀さが自国民を殺した」という向きもあるでしょうが、それはそもそも為政者としての責任であり、「戦争犯罪」とは無関係です。 パール判事が旧日本軍の個々の「事例」を批判したところでそれらは日本軍固有のものではなく、「戦勝国が敗戦国を裁く事など出来ない」というのが氏の最終的な主張です。 それは氏が後年に広島を訪れた時に語った言葉によく表れています。 サンフランシスコ講和条約? あれは刑の執行・減刑・赦免を定めたものであり、わざわざ拡大解釈までして執行後の扱いまで拘束するものではありません。 それ以前に、当時何の問題も起こっていなかった「A級戦犯」釈放・あるいは合祀であり、合祀の6年後に一大キャンペーンを張って内外に焚き付けた国内反日メディアがいたという事です。
この本で特に印象に残ったのは、自分も逮捕しろと詰め寄ったのにGHQから放置プレイされた石原莞爾や、旧ソ連の言い掛かりで戦犯にされるも後に外相に復帰した重光葵、晩年のパール氏の訪日などです。 単純に読み物としても面白い本ですね。

 
 いわゆるA級戦犯
 著者:小林よしのり
 出版:幻冬舎
 発売:2006/06/30