社説:衛星撃墜実験 中国に宇宙の非軍事化迫れ [毎日]

米国や旧ソ連は1980年代に同様の実験に成功している。それから遅れること約20年で、中国が追いついたことを意味する。

これに対して塩崎恭久官房長官麻生太郎外相は、破壊された人工衛星の破片が飛び散って、よその国の衛星にぶつかる恐れがあると中国に抗議している。いささか見当違いではないか。

日米が膨大な費用をかけて進めているミサイル防衛システム(MD)の根底が揺らぎかねないという安保戦略上の問題なのである。

もうひとつ疑問がある。中国が衛星撃墜実験を実施したのは今月11日で、中国外務省は「事後に日米など関係方面に通報した」と主張している。

米国のメディアが最初に報道したのは17日だが、米国務省はその前日の16日に中国の駐米大使に抗議したという。官房長官王毅駐日大使に抗議したのは23日だ。

中国から通報があったなら、なぜ首相官邸はメディアが報道するまで伏せていたのか。通報は官邸にあがっていたのか。かつて北朝鮮工作船日本海に侵入したとき、当時の防衛庁首相官邸の間の情報伝達の悪さが明るみに出たが、今回、危機管理に手抜かりはなかったか。

米国は、中国の宇宙空間における軍事技術開発の目的をより透明にするよう求めている。英、オーストラリア、カナダも、中国の軍事戦略と今回の実験との関係に懸念を表明した。

日本政府も、もっと単刀直入に宇宙の軍拡競争をこれ以上やらないよう中国に迫るべきだ。衛星の破片を問題にしているだけでは、「日米はミサイルでミサイルを破壊しようとしているのだから、破片はもっとたくさん出る」と中国に反論されるのがおちだろう。

実験の後、中国自身は宇宙の非軍事化を強調している。大変結構な主張である。だが言葉と現実行動の間に落差を感じる。その溝を埋めるためには、日中の首脳会談を、宇宙の非軍事化を推進し、平和利用の協力を論じあう場にすべきではないか。

記事の主旨としてはなかなか的を射た指摘であるように思います。 米国のASAT、あるいはMDに対する政治的取引を目論んでいるという指摘は米シンクタンクからもされていたそうですし、日本政府の抗議のトーンが他国と比べて低いのもまた見て取れます。 宇宙基本法策定やMD推進の手前、あまり大きな声を出せないなんて事があるのかどうか知りませんが、宇宙基本法は宇宙条約の解釈水準に沿うものですので杞憂でしょう。

ツッコミどころとしては、衛星軌道を回る物体を物理破壊すれば破片は飛散しながらそのままの勢いで軌道を回り続けますが、弾道飛行する物体は第一宇宙速度に達していないため破壊してもそのまま大気圏に落下するのでスペースデブリとはなりません。 MDをデブリ問題の引き合いには出せないと思います。 まあ記事のは物の例えかもしれませんが…

平和利用、それは大いに結構ですが、馬鹿正直な軍部の一部を除いて「中国は一貫して平和利用をどうのこうの」とシラを切り通されるのがオチですね。 実際今そうしてますし。 なんせ今まで日本が中国の横暴に対しまともに対処できた事があったでしょうか。 せいぜいまた北朝鮮がハジケて中国がその対処に右往左往する隙を突くくらいしか今の日本には出来ないでしょう。

ともかく、中国が宇宙を平和利用しない気満々なのは今回の件でよく解かったことです。 幸いロシアを除けば中国の行為を非難することで関係国は一致しているので、「衛星軌道上での攻撃行為」を制限する方向で締め上げるべきかと。 その場合、問題はアメリカの出方と思いますけど。 弾道ミサイルを排除できない以上は防衛手段であるMDもこれに抵触させるべきではないでしょう(現状のMDの信頼性は別にして)