小説版『日本沈没』を読んだ

30年前に発表された第1部と、去年発表された第2部を読了。 いやあ素晴らしく面白かったです。 2006年版映画から入ったのですが、この小説版のボリュームは半端ではありませんでした。 映画が原作とはかなり違ったストーリーであるという話は小耳に挟んでいましたが、ここまで来るとほとんど別物ですね。 じわりじわりと忍び寄る異変の足音、難航する避難民受け入れ交渉、引き裂かれ沈みゆく大地になおも取り残される人々、共に沈むことを選ぶ人々、そして全てが終わった時に訪れる巨大な喪失感、こういったものが緻密な構成で描写されていて非常に読み応えがありました。
第2部では発表当時から現在ほどの時が過ぎた後の世界観が描かれています。 異変から4半世紀後、日本人入植先で融和に成功した地域もあれば紛争に発展した地域もあり、現存する日本政府がこれらを強力な求心力と技術力をもって再編しようと乗り出すという展開から始まりますが、異変後の異常気象やなりふり構わない大国間同士の駆け引きの中で日本人が日本人足り得るためにどのような選択をするか…というような展開で、あんな人やこんな人が要所要所で再登場します。 ページにかなり詰め込まれていて人物描写が物足りない印象もありましたが、失われてゆく景色を目に焼き付けようとする様はスケール感がありなかなか込み上げるものがありました。 ちなみにこの第2部は原作者の小松左京氏の体力の問題で、現地アジアに詳しいSF作家の谷甲州氏が代筆したそうです。 文体的には読み易い印象でした。
うーん、久々に世界観にどっぷり浸かれました。 他の小松作品にも興味が出てきたので、『さよならジュピター』あたり買ってみようかな。


日本沈没(上)
小松左京 (著)
出版社: 小学館 (2005/12)

日本沈没(下)
小松左京 (著)
出版社: 小学館 (2005/12)

日本沈没 第二部
小松左京 / 谷甲州 (著)
出版社: 小学館 (2006/07)