H-IIA13号機/月周回衛星「かぐや」打ち上げ関連

■大阪での報道

11号機の時は朝刊最終面ベタ記事でショボーンでしたが、今回のは夕刊1面写真付きで大きく扱われていました。 なんかおかんが線引きまくってました。

こういうのに普段あまり興味のない知人達にもロケット見に行ったといったら「あー、かぐややね、ニュースやっとったよ」と声を揃えるので、今回は結構認知度高いんですねえ。 首相辞任にモロにバッティングしてこれなら上出来ですねw

■各紙社説

今更ながら各紙比較。 色々整理してたら結構体力食ってしまってw

「かぐや」出発 日本の宇宙新時代につなげたい(9月16日付・読売社説)

確かなロケット技術を持っているかどうかは、国の安全保障にかかわる。その代表例が北朝鮮のミサイル開発などを監視する情報収集衛星だ。他国に打ち上げを依頼することはできない。

H2Aの打ち上げ機会が増し、実績を積めるよう、政府は支援を惜しむべきでない。惑星探査や技術衛星などの計画を立案し、着実に進めるべきだ。

世界の宇宙開発は変貌(へんぼう)しつつある。

中国やインドといった新興国が技術力を強めている。日本の「かぐや」に続いて、中国とインドも来月以降、それぞれ独自に月探査機を打ち上げる予定だという。米国や欧州は、月を経て火星に至る壮大な計画を立てている。

取り残されないよう、日本も、着実に成果を積み重ねたい。

かぐや、月へ―ワクワクさせてほしい [朝日]

月探査が熱くなっているのは、科学上の興味からだけではない。さらに遠くの宇宙をめざすための基地として期待されている。月の土壌に含まれる資源も関心を集めている。

米国は、月に有人基地を造る計画を発表し、有人宇宙船の開発を進めている。

中国の探査機は「嫦娥(チャンア)1号」。月に住む伝説の美女にちなんだ命名で、この秋にも打ち上げる。将来は、有人基地の建設も視野に入れているようだ。インドの探査機は「チャンドラヤーン1号」。この名前は、月の乗り物を意味する。来年に打ち上げる計画だ。

日本も、かぐやの後継を検討しているが、まだ決まっていない。

月の有人探査では、米国が、日本を含む各国に参加を呼びかけている。

日本は何をめざすべきか。自らの強みを生かして存在感を発揮しつつ、国際協力の中核を担う。そんな戦略を練るべきときだろう。

【主張】「かぐや」月へ 宇宙新時代への先触れだ [産経]

1年間にわたる観測期間中、地球に送られてくる諸データは、太陽系に関する人類の理解を深めてくれる。ただちに、応用可能なものではないが、知のもたらす興奮や感動は、世界の科学に貢献する力を持っている。

米国は3年前から、月への有人探査再開を目指して新宇宙計画を進めている。月面基地を建設し、火星に向かうことを視野に入れている。欧州のほか中国なども月を目指している。

中国は年内に初の月探査衛星「嫦娥(じょうが)1号」を、インドは来年に、やはり初の月衛星を打ち上げる計画だ。ロシアも先ごろ、宇宙計画を発表した。

資源探査や国威発揚など、各国の目的に差はあるが、月探査には巨費がかかる。いずれ国際協力へと進むはずである。将来、日本が主導権の一角を握るためには、かぐやを成功させることが必要だ。かぐやを開発した宇宙航空研究開発機構JAXA)の研究チームには頑張ってもらいたい。

今回、H2Aを打ち上げたのは、三菱重工業だ。JAXAに代わって民間の手による事業となった。かぐやの打ち上げは、日本の宇宙開発のひとつの節目である。人材育成を含めて、尻切れにしない長期展望が望まれる。

社説1 夢より成果が問われる月探査(9/16) [日経]

月探査にはロマンや夢があり、素人受けもする。研究者も観測でそれを意識するだろう。しかし、重要なのは実質であり、研究者にはノーベル賞を狙うぐらいの気構えで学問的に意義のある成果を求めたい。過去の探査の焼き直しなら約550億円もの巨費を投じる意味はない。

月探査は米国や中国も今年から来年にかけて計画し、米国には月面基地構想もある。国内には競争意識をあおる動きもあるが、国威発揚を宇宙開発の原動力にする時代ではない。日本では月探査に関し過去に観測装置の開発に手間取って計画を断念し、資金を無駄遣いした例もある。意義、投資効果の評価は重要だ。

「かぐや」は科学衛星で初めてH2Aロケットを使った。宇宙関連機関統合の効果でもあるが、能力の小さい固体ロケットへのこだわりを捨てたことで、大型の科学衛星、探査機も打ち上げ可能になった。搭載重量の制約から小粒で運まかせの傾向のあった宇宙探査も、これからは大型衛星による着実な目標達成と科学的意義の大きな成果が求められる。

今回、H2Aは打ち上げが三菱重工業に移管され民営化された。地球周回軌道への投入は成功し、民営化は幸先のよいスタートを切った。民間活力で商業衛星の打ち上げも受注しやすくし、H2Aの国際競争力を上げるのが民営化の狙いだ。独り立ちには政府の支援も必要だろうが、日本の宇宙産業が官需頼みの体質から早く脱却するよう望みたい。

探査機かぐや 月の向こうも見据えて [東京新聞]

月は今のところ、原始地球に火星クラスの惑星が衝突し、その際に放出された破片が集まって誕生したとの説が有力だが、これが本当かどうか。「かぐや」の観測で解明の糸口をつかめる可能性がある。

こうした科学観測のデータは将来の月面活動などにも役立つと海外も注目している。月面基地をつくる場合、水や酸素の現地調達が不可欠で、その可能性が分かるからだ。

搭載したハイビジョンカメラを使い、月の地平から地球が昇る“地球の出”が世界で初めて動画撮影され、公開される。その映像は宇宙の神秘への興味をかきたてるだろう。

米国は三年後にスペースシャトルの運用を打ち切り、火星への有人飛行に乗り出す。月面基地建設を将来の火星探査に向けた中継基地と位置づけ、来年以降の探査はこれに沿って行われる。中国も将来の有人飛行や資源探査を視野に入れ、年内に無人機を月に送り込む。インドも来年打ち上げる。

この中で、わが国は「かぐや」以降の月探査をどう進めるのかがはっきりしない。無人の科学観測に徹するのか、あるいは有人活動を視野に入れた探査に乗り出すのか。

月について空想を膨らませる時代から、人類が将来月とどうかかわるかが問われる時代になってきた。

各紙共通して、月・惑星探査における将来計画を明確にし積極的に推し進めるべきであるという主張が見受けられます。 これに同意します。
一紙だけ毛色が違うのが日経でw、「無駄遣いした例」だ「投資効果」だのとおよそ科学探査にそぐわない言葉が目立ちます。 もちろんやるからには長期的な将来計画に繋げ、そのための成果が期待されるわけですが、投資とかなんとかはむしろH-IIAの民営化に振ってほしいところであります。 打ち上げ前にも『巨額の国費を費やす宇宙開発なら、月を研究するより、宇宙から、温暖化に悩む地球を調べたり日本の安全を保つのに必要な情報を集める技術を磨くのが先。そんな考えもある』というような冷やかしを書いておられ、穿った見方をすれば「より目先の利益を優先すべきだ」という主旨の主張が見られます。 まあ何だな、露骨過ぎますよと(笑)