三菱重工、初の商業打ち上げ受注(1) 山積する課題をどう解決するのか [日経BP]

商業打ち上げの主戦場は、年間30機程度の市場が存在する静止衛星だ。現代の静止衛星は、軌道上初期重量が2〜3tと、非常に規模が大きくなっている。過去20年以上、最大シェアを獲得し続けている欧州のアリアンスペース社は、巨大な「アリアン5」ロケットで2t超の衛星を2機同時に打ち上げて、1機あたりの打ち上げコストを下げる戦略を採っている。一方H-IIAだとこのクラスの衛星は単機打ち上げにならざるを得ず、価格競争力を保持するためにはより一層のコストダウンが必要となる。

そしてなによりも、漁業権の関係で主に夏と冬の2シーズンに限られている打ち上げ時期が、商業打ち上げビジネスにとって障害となる。衛星の運用開始時期は、カスタマーの事業計画で決まる。打ち上げ時期がずれれば、カスタマーにそれだけ損失がでるわけだ。

このためロケット側は、カスタマーの要求に合わせた時期に打ち上げを実施できることが必須である。ライバルが365日いつでも打ち上げ可能であるのに対して、種子島からの打ち上げ時期が限定されているというのは、足を縛られた状態で走れと言われているに等しい。今後、国が本気でMHIの商業打ち上げビジネスを支援するつもりならば、打ち上げ時期の見直しは必須である。

巨大な静止衛星種子島宇宙センターに運び込む手順も問題となる。大きくかさばる静止衛星の輸送には、ウクライナ製のAn-124輸送機(開発は旧ソ連)のような巨大な輸送機を使用する。米スペース・システムズ/ロラール社が製造し、2005年2月にH-IIAロケット7号機で打ち上げた運輸多目的衛星「ひまわり6号(MTSAT-1R)」の場合は、まず鹿児島空港までAn-124で運び、ついで陸路鹿児島港へ。さらに船で種子島・島間港に運び、最後に陸路で種子島宇宙センターに搬入した。

このように複雑かつ高コストな輸送手段しか使えないのでは、商業打ち上げビジネスでは話にならない。アリアン5を打ち上げている南米フランス領ギアナギアナ宇宙センターでは、空港から直接陸路でセンターに衛星を搬入できる。本気で商業打ち上げビジネスを行うのならば、新種子島空港から直接衛星を種子島宇宙センターに搬入できる必要がある。

しかし、新種子島空港は滑走路長が2000mしかなく、大型機の着陸に対応していない。An-124は短距離離着陸性能に優れた機体なので、運用次第では2000mで離着陸できる可能性もあるが、これまで実績はない。

まあ確かに現状の種子島の打ち上げ環境は「国内仕様」という感じではあります。 打ち上げ時期については地元とナシ付けて何とか出来そうな話ですが、今後継続的に商業打ち上げサービスを行なうのであればいずれ整備し直すのは必須でしょうねえ。 空港が短いのも何とかしないと、わざわざ移設した意味がないですし。