JAXAタウンミーティング第36回:大阪市 2009年7月25日開催 [JAXA]

大阪で開かれたこの回では川口先生が来て濃い内容になっていたようです。これは行けば良かったなあ。

<打ち上げ時の保険について>
参加者:予算が非常に少ないということでびっくりしたのですが、打ち上げるときに保険をかけていますね。
本間:JAXAの衛星は、基本的に保険はかけていません。
広報部長:打ち上げ保険といって、打ち上げをやって万が一失敗したときに原因究明をできるようなものはかけています。それは微々たるもので、いわゆる衛星本体をそのまま保証するような額はかけていません。
本間:実はかけたいのですが、保険料は高いです。そのときの相場によりますが、大体15%くらいですから、例えばロケットと衛星で300億円としますと、45億円は保険料を払うわけです。商業衛星は当然リスクを自分で取りますから保険をかけるのですが、JAXAの場合は保険をかけるよりは、万が一失敗したらもう一度予算要求したほうが平均で見ると資金の使い方としては合理的だろうと考えています。

およそ15%だそうです。成功率が9割以上なら、自前で賄えるもの以外は確かに掛けない方が効率は良いですね。

<気象のコントロールについて>
参加者:JAXAの範囲から逸脱するかもしれませんが、例えば今日のように雨が降る、こういうときに雨を降らさないような方法とか、地域ごとに庶民が喜べるようなことはできないものでしょうか。
本間: いずれはやりたいと思っています。今、雨を降らせる技術は、どうも中国とかロシアでよくやっているようです。空気中に何か散布しています。雨を降らせないというのは、結構きつい技術かと思います。今のところ、いかに正確に予報できるかというところが限界です。

やりたいんかwww

<(1)はやぶさの打ち上げについて(2)M-Vの後継について(3)宇宙科学の予算について>
(中略)
川口:(1)意外に思われるかもしれませんが、M-Vロケットで打ち上げていますが、非常に不思議な打ち上げ方をしています。わかりやすく言うと、3段目を軌道に乗せない打ち上げ方で打ち上げているのです。そのため、能力が目いっぱい引き出され、思いがけなく能力のある打ち方になっています。
では、H-IIAを使ったらどうなったかというと、飛行時間が1年間短くなったと思います。ロケットで頑張るか、イオンエンジンは普通のロケットの10倍くらいの性能があるので、イオンエンジンを使って、その後加速をするかという選択になります。「はやぶさ」は1回スウィングバイをしていますが、スウィングバイをしないで打ち上げることができるという意味では、H-IIAを使うと早かったと思います。その意味で、1年間短縮できたということです。

H-IIAだとスイングバイ無し、かつ1年短縮。「はやぶさ2」は是非H-IIAで上げて欲しいですよねえ。

はやぶさの運用制御について>
(中略)
川口:打ち上げ前にプログラミングされていたのは、自動の形から着陸場所を自動で認識する、そこまでは全自動でした。言葉で簡単に言うと、半自動で降りたということだと思います。
どのあたりが半自動かというと、結局、打ち上げ前というのは、行ってみないとわからないのですが、行った結果、相手の形状が、もともと組んでいる画像処理装置で処理できる形状ではなかったということです。
それから、リアクションホイール等が故障し、途中でたくさん軌道制御などしなくてもいいはずなのに、アンバランスで出る加速度で流れるため途中で直していかなければいけないため、補う運用というのも交えていかなくてはいけなかったのです。
そのため、いろいろな工夫をしました。その中で、非常に大きく前進したのは、地形を基にして精度を確保する、要は場所がどこにいるかわかる方法です。最後は、10mぐらいの精度で場所が総体的にわかっていました。そのため、最後着陸する場所は、着陸の目的の場所から20m以内に降りていました。
その地形を基にして10mぐらいの精度で場所がわかるということができたということは、おそらく技術的には最大の成果で、これはどのようにやっているかというのは企業秘密で、学会や諸外国には出していません。そういうこともあって、大変大きな経験をしたと思います。

10m! あの状態で良くそこまで。この技術は当然トップシークレットだそうです。

<(1)HTVの有人化について(2)日本の月惑星探査について>
(中略)
司会(広報部長):(1)HTVを有人化しようかという話ですが、これは研究段階として、そういう考えはあり、研究をしているものもあります。しかし、まだすぐにそれを計画するという段階には達していません。
川口:(2)月探査ですが、中国は月探査を自前でできるのかもしれませんが、JAXAといいますか、日本としては、やはり国際共同で進むべきだという考えを持っています。世界14機関で構成する共同の場があり、そこで将来、有人の月探査とか有人の火星とかもありますが、そういう探査について検討しています。国際共同というのが、JAXAの基本的な考え方です。

確かにまだ1機目が上がったばかりですから、段階的にはこれからですよね。無限のリソースを前提には出来ませんし。

<(1)はやぶさ本体の回収について(2)カプセル回収後の分析について>
(中略)
川口:(1)打ち上げ当初の考え方は、今と基本的には変わらなく、要は、母船は化学エンジンが生きていれば逃げられます。もともとは逃がすつもりでした。さらに、もう一回別の場所に行ける計画も頭の中にはありました。しかし、今ではもう無理です。イオンエンジンは瞬発力がないため、カプセルを離してから残りの時間で大気への突入を避けることは不可能です。残念ながら、今回は大気の中に入ってしまいます。ただ、もともとは大気の中に入れるつもりはありませんでした。
だから、もう少し大きめの探査機をつくり、時間を1年半ぐらいかけると、例えば太陽と地球の間のラグランジュ点というところに置くとか、置いてもう一度回収するということができたはずですし、できるはずです。そういう計画も頭の中にはありましたが、今回はできません。
(2)分析の方法ですが、手順はいろいろ詰めています。回収したものは、密封したり、あるいはガスの中に入れて日本に運んできます。相模原にそのためのキュレーションセンターという専門の設備をつくってあり、もちろん外部との遮断とかもはかって、安全に分析というか、処置できるように体制は整えています。
司会(広報部長):ちなみに、採取したサンプルを一般の人に見せるということはないのですか。
川口:もちろんきちんと取れて回収できれば、そのように思っています。しかし、今回は、本来の方法ではサンプル採取ができなかったと思われます。というのは、弾丸を発射することができませんでした。そのため、取れていても、多分微粒子の形でしか取れていないと思います。アポロの月の石が全国を行脚し、皆さんが触ったというような状態というのは、今回はできないと思います。そこは残念ですが、もちろん成果は公にしていきたいと思っています。

ラグランジュ点にかける川口先生の情熱は無限。まあ今となっては「はやぶさ」も帰ってこられるだけ御の字な状態ですし。来年の一般公開では相模原キャンパスが「はやぶさ」帰還記念パーティー会場になっていれば嬉しいです。もちろん微粒子であっても重要な成果であることは間違いありません。

<(1)海外の小惑星探査の状況(2)はやぶさ2について>
(中略)
(2)「はやぶさ2」の計画では、どのような小惑星をねらっているのか、その点を教えていただきたいと思います。
川口:(1)アドバンテージを保てるか、外国の状況はどうかというと、外国は虎視眈々と「はやぶさ2」が立ち上がらなければ自分たちがやろうという構えです。我々がよく外国で聞かれるのは「はやぶさ2」の状況はどうですかと、そのことしか聞かれません。ヨーロッパに行っても、アメリカに行ってもです。
NASAは7月にニューフロンティアというプログラム計画の締め切りがきますが、その中には幾つもの提案が出ているのは知っています。同じ天体に向かう提案も出ています。ヨーロッパも同様です。それから、この夏から始まるNASAの提案プログラムの中にも、名乗りを挙げようとしているグループがあります。ですから、是非知識伝承ができるように、これを立ち上げていかないとと思っています。

海外勢は虎視眈々とポスト「はやぶさ」を狙っているそうです。日本がこのアドバンテージをみすみす逃す手はありませんね。NASAなんて今でさえgdgd気味ですが、隙あらば一気にリソースを注ぎ込んで追い抜きに掛かってきますよ。