2009.10.17 筑波宇宙センター特別公開に行ってきた

ひとまず全部書いた。

06:20 では

5時起きです。それでは行って参ります。

10:30 筑波宇宙センター着

相変わらずでっかいH-II。

「きずな」による深海探査船「ピカソ」との中継


船上と中継が繋がっています。午後にもやるみたいなのでとりあえず以前回れなかったISSの方から見ていくことに。
ヒューストンからの野口さんと山崎さんの中継はちょうど終わってしまってました… ああああーorz



宇宙飛行士?大人気。そこらへんを歩いて回るだけで子供の行列が発生します。

水ロケット教室


子供達が元気です。

10:50「きぼう」運用管制室

撮影は禁止。自分が行った時には丁度空いていてすぐ見られました。ISSではそろそろ就寝の時間なので目立った作業はしていませんでしたが、幾人ものスタッフがモニターしていました。ぺんぺん草の成長記録写真のスペースに愛犬の写真を入れる教授お茶目ww にしても、実験装置がどんどん増えて本格稼働中って感じです。

■職員講演会

以下は要約です。(注釈はiwamototukaによるツッコミみたいなもの)

日本最大・最強のロケット「H-IIB」について(有田誠 H-IIBプロジェクトチームファンクションマネージャ)

4年間という非常に短い開発期間はNASAだとかからすると気違いじみているとまで言われた時期もあった。これには部品の製作などに関してはH-IIAの実績というものがあり、本来なら順番に進める開発試験と試験機の製造をラップさせて進められたことがこれを可能にした。フェアリングの開発が実は最後の最後まで一番苦労した。去年5月の強度試験で根本がバキッと壊れてしまった。それを修正して行なった半年後の試験ではまた別の箇所が壊れてしまった*1。2回失敗するという情けない事をしてしまったが、まだまだ分からないことがあるという大きな反省を踏まえて対処を行ないその半年後の試験で今度は上手く安全係数1.25を達成した。
またH-IIBは、H-IIAで信頼性向上のために取り組んでいた改良点を集約したロケットでもある。また天候に恵まれたのもあり、一切の延期もなくドンピシャで打ち上げたのは日本の大型ロケットとしては実は初めてだった。
打ち上げの時には高速船の欠航というトラブルがあったにもかかわらず数千人もの観客が島を訪れた事には私達も大変喜んでいた。

質問

−延期した場合次の打ち上げは?
燃料を充填した後だと3日後になる。1日当たり打ち上げ時刻は約24分ずつ早まっていく。


−次回の打ち上げは昼間に行なわれる?
そうだったらいいなと思うが、宇宙ステーションは時々軌道変更を行なっているので今の時点では正確には分からない。


クラスタ化に関して一番苦労した点は? 推力が非対称になった場合は?
難しいと思っていたが、実のところあまり苦労はしなかった。考えられることは最初から織り込んでなるべくエンジン同士が干渉し合わないように工夫して設計をしていたため。プルーム加熱が起こることを気にしていたので解析をたくさん行なったのが多少苦労した所だが上手く克服した*2。推力のバランスに関しても誤差を吸収できる設計になっているので問題はない。


−水素体積の割に推力が低い 将来的に固体のみにしたりする可能性は
確かにそれはあるが、他にない大きな特徴として単位重量あたりの燃料で出せる推力はズバ抜けて大きくこれに替わるエンジンは無いので完全に取って代わることはないと思われるが(特に2段目は必須)、第1段に関しては固体・炭化水素系と色んな選択肢がある。そのあたりの研究は進めていく。

ぶら下がり

なんか見てると講演後に質問しに行ってる人がいたので自分もそれぞれ突撃しました。これらは自分の質問ですが、スッキリ回答が得られました。個人的に気になってたことばかり聞いたんですがw、いやーこれがこういうイベントの醍醐味ですね。皆さん丁寧に答えて下さり本当に有り難うございました。


−例えばクラスタエンジンの1基が計画値より10秒・20秒早く停止してしまった場合、残る1基の燃焼時間を延ばしてカバーすることは出来るか?
出来るようになっている。(どのくらいの時間ならカバー出来るかについて)さっきの秒数がいい線行っている。それ以上になってしまうとちょっと(機体が)もたない*3


−打ち上げ中継の映像に入っていたキーン音の正体は?
消音装置の水が切れてガスが鳴った音*4

日本初の宇宙船「HTV」について(佐々木宏 HTVプロジェクトチーム ファンクションマネージャ)


HTVの係留期間、当初は今日(10/17)ぐらいに分離の予定だったがISSにゴミが随分溜まってたので要望もあり2週間延ばした。
我々が想定している宇宙船の要件:自分で飛行できる、人が乗り込めるの2点。HTVはこれに該当するので宇宙船の仲間と呼ばれている。せっかく開発しているので、将来どうなるかわからないが人を運んだりするのも目的の一つ。
秒速1センチメートル以下の制御。ISSは有人施設なので何か一つ壊れて衝突というのは絶対避けなければいけない、厳重な設計。
最近外国からも注目を受けている。大型の荷物や曝露を運べるという点と、自動ランデブー・ドッキング方式。現在のISSに向かう宇宙船のドッキングシステムはロシア製。シャトルは数十年前にNASA旧ソ連が行なった共同ミッションで作った共通のドッキングシステムを使っているが、それはロシアが作っている。HTVはロシア製以外の技術でドッキングを行なう、特にアメリカ関係者から注目。米国のベンチャーが現在開発しているISS輸送機もHTVと同じようなドッキング方式を採るが、HTVを参考にしているので場合によってはHTVのある機器を売ってくれないか…という話も。
HTVは平成9年から、その間内外で様々な事故があり厳しい時期もあったが私は12年関わってようやく日の目を見た、青春が報われたという感じ(会場笑)
HTV分離後に電波を発するが、5分くらいかかると思っていたら1分くらいで来たので管制員もびっくりして思わず乗り出した。キャプチャーの時もFDが喜びのあまり立ち上がっちゃったけどほんとはまだ仕事があるので(会場笑) 宇宙ステーションのクルーもドッキング後にガスなどをチェックしてからでないと本当は入っちゃいけないがすぐに入って行っちゃった。我々は事前に知らなかったが中に日の丸を付けてくれた。アメリカ・カナダ・ヨーロッパのクルーが協力してHTVをサポートしてくれたというのはまさにインターナショナル。(このへんでスライドショーを流してるノートPCがバッテリー不足で休止状態にw コード差して再起動) 将来ISSが終わってもHTVを発展させていきたいというのがプロジェクトチームの希望。

質問

−HTVをこの方式にした理由・メリットは
ロシアから装置を買う(買えなくなる)というリスク、技術の開示もなかなかしてもらえないといった点。メリットはポートのサイズなど。


−大気圏再突入時には全て燃え尽きるか 日本からも見えるか
高温に耐える部品などは燃え残る。南太平洋に安全に落とす予定なので見ることは難しいが、再突入直前に明け方沖縄付近上空を通過するのでエンジンを吹かしているHTVを見られる可能性はある。


−人を運ぶ技術に近付いたと思うがその為の技術課題は
生命維持はそんなに大変ではないと思うが、安全に人を地球に帰すカプセルの開発、H-IIBの有人対応(脱出機構)などが開発課題。

ぶら下がり

−ド○ゴンやシグ○スといったあたりに技術供与する可能性は
公式にはちょっと言えないが、いずれ何か発表する事はあるかも知れない。


−寿司を運んだのか(NASA.TV等を見て)
女性のクルーがジョークで寿司を催促するような話をした、若田さんもテレビでそんな事を言っていた。

国際宇宙ステーションのヒミツ(足立昌孝 有人宇宙環境利用ミッション本部 事業推進部 主任)

水のリサイクルを開始。エアコンで除湿した水分をフィルターにかけて飲料水にするという事は以前から行なっていたが去年からは尿のリサイクル装置を稼働したので地上からの飲料水の輸送量が減った。遠心力で蒸留したものを濾過・殺菌するというのが大まかな仕組み。合格したものが飲料水供給装置に回される。若田さん達が初めて飲んだ。無味無臭で変な味はしない。トイレは重要。これが駄目になるとクルーがISSから帰還しないといけなくなってしまうくらい重要。固形物(大便)はタンクを補給船に積み込んで大気圏再突入で燃やす。現在はこれをリサイクルすることは出来ない。

氷の結晶成長実験。地上の擾乱を排除して実施。味を落とさない冷凍食品、臓器移植の冷凍保存技術などへの応用を期待。
マランゴニ対流は温度差によって変化する表面張力で発生する対流。暖かい方が伸び、冷たい方が縮み流れが発生。熱対流を排除することで見えてくる。重力のある地上では難しい。

ライフサイエンス。宇宙で生活していると身体の負担が減るので筋力が弱くなったり、骨密度が低下する。心肺機能も低下する。若田宇宙飛行士はそれを防ぐ薬を週に一回一錠飲んで、カルシウムの減少は殆ど見られず逆に骨密度が上がったりした。一例ではあるがこういったことが分かったので寝たきりの治療や骨粗鬆症への治療やリハビリに応用が考えられる。

質問(時間がないためこの一問だけ)

−フレッシュトマトはいつでも食べられるのか?
定期的な補給物資に入っているが長期保存はあまりできない。冷蔵庫も設置されたがキャパはそんなに無い。

ぶら下がり

−「きぼう」の子アームはエアロックから出すのか。いつ頃取り付けられるか。
「きぼう」のエアロックから出す。野口宇宙飛行士が作業するのではないか。来年3月頃。




実際に「きぼう」で氷の成長実験に使われていた装置のようです。思ってたよりコンパクト。

「きぼう」「HTV」エンジニアリングモデル


HTVに搭載される詰め合わせバッグ。宇宙ラーメン的なものとかがありましたがこれ本物でしょうか。腹減ってきた。



1/3ハッチ。可動品でしょうか? 動いている所を見てみたい。



HTVの模型。ボタンを押すと曝露パレットが出てきます。



HTVエンジニアリングモデル。今回はより一層注目の的になってました。スタッフの人と話してみる。

  • ランデブーの時のスラスタ加熱は安全数値上結構ギリギリだった。
  • HTV-2、3に向けてスラスタも国産化
  • サーマルブランケットも白い奴にしたいが。耐久性が上がる。金色のだとスラスタとかを浴びるとすぐ駄目になってしまう。酸素原子による劣化も。
  • 正直個人的には寸胴でダサイと思っていたが(笑)、打ち上がってみると格好良くなった。
  • 太陽電池もパドル化も
  • 曝露部の荷物はまだそんなに埋まってない。再突入カプセルやりたい。
  • ORIONどうなるやら。ARES-IポシャったらDELTA-IV Heavyか。



これは前回もあったパネルですが、

この部分まで見えてなかったので撮り直し。



写真。



LED。HTV搭載用の試作品。結構眩しいです。既にHTV2号機の機体に実機が取り付けられているらしい。



H-II焼き(カスタード)ウマー。



深海探査船中継2回目。残念ながら魚現れず。

展示室


「かぐや」試験モデルで記念撮影。



相変わらずでかい「だいち」



船内保管室。想像よりはるかにでけええええ。



SPACE@NAVI-Kiboへようこそ!(違)



「いぶき」。この機体、比較的小型ながら随分堅牢そうな印象なんですよね。実際そうなんですが。
この後4時半のシャトルバス最終便に駆け込み帰路に。



スタンプラリーは何とか片手間にコンプしましたw



帰りはだいぶ疲れたのでグリーン席でぐったりする。

10:00 帰ってきたぞー

往復8時間オーバーはこのモヤシボディにはやっぱ堪えますねえ。今回は前回見られなかった講演(三連チャン)やISS運用管制室とかを重点的に回ったので結構時間を食ってしまいましたね。てかもっと早く、始発から乗らなきゃそもそも開場に間に合わないというかw

*1:参照→「2件の不適合」http://d.hatena.ne.jp/iwamototuka/20090819#p2

*2:当然、エンジンがとろけるのどうのという話ではない。

*3:エンジンが耐えられないという事なのか或いは機体構造の事なのかまでは後ろがつかえていたので確認せず

*4:もちろん水蒸気爆発がどうのこうのという話でもない