「はやぶさ」カプセル回収完了

耐熱外殻の写真を公開=はやぶさカプセル−宇宙機構 [時事]

宇宙航空研究開発機構は15日、帰還した小惑星探査機「はやぶさ」から分離し、地上で回収されたカプセルの耐熱外殻の写真を公開した。
カプセルは13日夜、オーストラリア南部ウーメラ近くの砂漠に落下。2枚ある耐熱外殻はカプセル付近で見つかった。

本日、カプセルから分離された熱シールドの回収も完了したようです。お疲れさまでした!

この中にイトカワの砂? はやぶさカプセルの写真 [共同]

カプセル内部の試料容器が写っています。おおお…

「はやぶさ」快挙の陰に真庭の中和神社 [山陽新聞]

神にも祈りたい気持ちのチームが全国を調べたところ、読みこそ違うものの中和神社が見つかった。川口淳一郎宇宙機構教授がポケットマネーで参拝し、お札を持ち帰った。イオンエンジン内の「中和器」は作動し続け、はやぶさは地球帰還軌道に乗った。

偶然にも、道中安全の神としても信仰されている中和神社。入沢喜一宮司(44)は「はやぶさの帰還は関係者の努力のたまものだが、当神社の加護がいささかでも世界的な快挙に貢献できたのであれば、大変な光栄だ」と話した。

道中安全ww 効果テキメンでしたねw

はやぶさの旅「世界最長」 2592日、ギネスに申請 [朝日]

ギネスへの申請は(1)月以外の天体に着陸し帰還した初の探査機(2)帰還した探査機としての航行日数も2592日と世界最長、の2点。はやぶさは彗星(すい・せい)のちりを持ち帰った米探査機「スターダスト」の2534日を更新した。1カ月半で記録の対象になるか回答があり、数カ月間審査される。

JAXAのギネスといえばVABの世界最大一枚扉が有名ですね。これも期待。

はやぶさ:回収カプセル、日本へ まず未開封でCT撮影 [毎日]

カプセルはチャーター機で17日、オーストラリアをたち、日本に運ばれる。未開封のままCT(コンピューター断層撮影)で内部の真空状態が保たれているかなどを確認。続いてカプセルの開封に取り掛かる。試料用容器が入った部分のふたを開くまで約1週間、その中の容器内を見るまでさらに約1週間かかる。

慎重に調べるため、イトカワ(全長約540メートル)で採取したとみられる物質の有無が確認できるまで半年程度かかる可能性もある。

開封作業だけでもかなり慎重に日数を掛けて行なわれるようです。内部に物質があるかどうかはその量によりますが、それが「イトカワ」由来かどうかを分析するのには特に微量だった場合は数ヶ月かかる可能性もあるそうです。


祝帰還!「はやぶさ」7年50億kmのミッション完全解説【その4】 [ASCII]

第4弾が来ています。

僕、すごくよく覚えてるんですけど、「WCT」の表示が現れて、周りが「わーっ」と盛り上がって握手したり抱き合ったりしていたとき、一番奥の管制卓にいた僕はそうなってないんですよ。なぜかというと、「WCT」は弾を撃てというコマンドを発したという印に過ぎなくて、弾を撃ったという証拠じゃないんです。

コマンド発行と、コマンド実行との間には、凄く大きなギャップがありますよね。コマンドを発行して、着火されればさすがに弾は飛び出しますから、僕はずっとそれを待っていたんです。

矢野 弾丸を射出する部分は、点火球に電気を走らせて火薬を爆発させ、弾を加速させるわけですが、点火球がちゃんと導通したかどうかを「はやぶさ」は記録していたはずなのです。しかしそのデータは一時メモリに入っていたので、探査機と通信断絶後、復旧しても再生できませんでした。

また最後の部分は人間が判断をくだすわけでなく、ロボットが条件に沿って自律的に判断するのですが、そのときに実際は不用な弾丸発射中止のコマンドが残っていた可能性があります。

最大の原因は、第一回と第二回の間に1週間しか時間がなかったため、地上側でじゅうぶんなシミュレーションができずに臨まざるを得なかったこと。

すべてのエラーをつぶしてからできればよかったとは言えると思いますが、あのときのメンバーは日本で最も探査機の運用が上手い人たちで、それでもミスがあったとすれば、誰でもミスするレベルだったと思います。

僕にとっては、とにかく「事実を知りたい」ですね。WCTの表示が出て、コマンドが発行されたその結果を一時メモリから再生する前に、「はやぶさ」は姿勢を失って、リカバリしたときには結果は失われていた。

一方で、温度に関係するデータを集めてみました。降下する際、探査機は小惑星からの照り返しを受けて、おおよそ決まったレートで温かくなっていくのですが、火薬が爆発するとその周囲の温度が急に上がるはず。温度のデータは取得できたので、調べてみました。

ごくわずか、数ディジットのレベルですけど、上がっているようには見えるんです。それが弾を撃ったことによるのか、熱慣性の問題なのかわかりませんが、弾を撃ったから温度が上がったと考えても矛盾のないデータではあります。とにかくあのときは「探査機を壊さないように」というのが最優先で割と淡々としてはいたのですが、事実を知りたいという気持ちはずっとあります。

弾丸発射の成否について。発射を示唆する熱データも得られているという話は当時松浦さんのレポから知っていましたが、具体的にはこういう話のようです。さて、それを確かめるためのたった1つの手がかりはついに地球へと還ってきました。

齋藤 9〜12月の間、私はプロジェクト側の広報担当でした。JAXA側の広報担当は寺薗君(元カメラ科学観測及び広報担当 寺薗淳也氏)。当時、ISAS対外協力室のボスが的川さん。こうした人たちがチームになって広報活動を担いました。

最初は、毎日「今日の一枚」を出していました。そうしたら、ホームページにアップした画像を使って、外部の科学者がどんどんサイエンスの議論を始めちゃうんですよ。

これには困ってしまいまして。そこで対応を検討して、サイトに「この画像はすでにJAXA側で一次処理をしてあります。こちらをベースにした議論には、JAXA側は一切責任を持ちません」という但し書きを付けることでやっと収まりました。

そういう意味では、画像ってちょっと怖いですね。そんなこともあったので、タッチダウンのときに撮影したクローズアップの画像は、早く公開してほしいという要望もかなりあったのですが、相当時間を置いてから公開しています。

これは悩み所です。情報公開という点ではなるべく早く出したい(出して欲しい)、しかし当のプロジェクトチームがデータを分析する前に外部に成果を持って行かれかねない。当時から言われていたことですが、マンパワーの限界がこういう所に現れてしまうんですよね。

國中 AとBのクロス運転という機能があるので、それに挑戦したのが11月頭のこと。それがうまく動くめどを得たのが11月12日かな。13日くらいから連続運転を始めています。

11月頭のころはまだ電力が足りず、難しいオペレーションをせざるを得なかったんです。普通の人工衛星ならバッテリがあるので、短時間なら太陽電池からの電力が途切れてもバッテリから自動的に電力供給されるので、完全に機能停止してしまうことはありません。しかし「はやぶさ」の場合、バッテリーはもう使えないので、現在発生している電力を使うしかない。

一瞬たりとも電力不足が生じると、コンピュータが止まっちゃうんです。コンセント引き抜かれたような状態になっちゃう。だからイオンエンジンを二台運転すると消費電力が上昇して、そのときに発生した電力を踏み抜くと、制御コンピュータが停止してしまう可能性があるんです。

具体的には、トランスポンダ(送信機)を切ります。そうすると100Wくらい電力が余っるので、余った分の電力をイオンエンジンにまわしました。ただその場合、送信機を切ると「はやぶさ」からの情報が受信できないので、いわゆるブラックアウトするわけです。

そこで、「何時何分に送信機を切って、何時何分にイオンエンジンを立ち上げて、10分程度運転して、イオンエンジンを停止させて、トランスポンダのスイッチを入れる」という予約コマンドを登録して、実行させる。当然、イオンエンジンが動いている間は、何が起きているかわかりません。

トランスポンダがオンになって、そこで初めて状況がわかる。そのときにレコーダのデータを再生して、見えていなかった10分間のデータを確認することで、イオンエンジンが動いていたかどうかを確かめると。そういう運用を行ないました。

一瞬の隙も許さない、かなり際どい運用を数ヶ月に渡って実施してきた事が伺えますね。

吉川 「はやぶさ」の場合は、特にイオンエンジンが大変でしたから、ぜひ次はイオンエンジンをはじめとして普段の運用をもっと自動化できる体制を考えていかないと、運用メンバーが疲れてしまいますね。今回は、世界初ということもあって皆がんばれた。でも、「もう一回、同じことをやれ」と言われたら……。かといって、人員を増やすのもなかなか難しいですけどね。

今回のプロジェクトでイオンエンジンの長期運転にかかる知見が一気に得られたと思いますし、このような緊急運用に求められる手法も今後マニュアル化出来ればかなり負担が減らせそうです。

ネットでは「はやぶさ」の危機を乗り越えるプロジェクトメンバーを称えて宇宙戦艦ヤマトの登場人物・真田技師長にたとえるが、ここまでのあらましを読めばわかるとおり、賞賛すべきはクロス運転のアイデアを組み込んだ技術者だけでなく、運用・バックアップする「中の人」全員の努力と機転で得た復旧だということがわかるだろう。

「真田さん」を体現するような特定の個人がいるわけではない。メンバー、そしてJAXAのバックアップ体制こそが、アニメ顔負けの逆転劇を現出してみせたのだ。

本来こういう苦労はしない方が良いんでしょうがw、「事実は小説よりも奇なり」をリアルに実演して見せた「はやぶさ」プロジェクトは最後の最後まで本当にドラマチックでした。そしてこれを過去の物語で終わらせないことが何よりも大事。

見たぞ、はやぶさの凱旋(確定版) [松浦晋也のL/D]

松浦さんの現地レポ。

 全天快晴、透明度最高の夜空。南十字星も大小マゼラン雲もはっきりみえる。野尻さんが「石炭袋がくっきりと見える」と喜んでいる。ああ、もうこれが見られただけで、今回はいいやという気分になる。いや、今度は星空のためだけにオーストラリアに来たい。私はいて座方向の銀河中心を見ているうちに、猛然と行きたくなった。そちらに行くのが正しいかどうかは別として、だが。
 宇宙開発の是非を議論するならば、まずはこのような夜空の下で一夜を過ごすべきなのだろう。見て、なお「不要」と言える人がいるとは私には思えない。

>> 高度60kmほどだが、あまりに速く、明るいので遠くに思えない。航空ショーなどで目の前をジェット機がフライパスしていく――その様と似ている。

 機体が四散していくのがはっきり分かる。大型太陽電池パドルが、ハイゲインアンテナが、イトカワを観測したセンサーらが、サンプラーホーンが、長期の航行に耐えたイオンエンジンが、飛散し、分解し、輝き、燃え尽きていく。

 先頭でオレンジ色に輝く再突入カプセルの飛行は安定している。揺らぎは見えない。カプセルの空力設計がうまくいった証拠だ。

 揺らぐことなくまっすぐ飛行する再突入カプセルが、輝きの尾を引いて飛散する機体を従え、南オーストラリアの星空を横切っていく。これは凱旋だ。今やはやぶさの本体(ここはウェットに“魂”というべきなのか?)は機体から再突入カプセルへと移り、分解する機体を従えて、堂々地球への凱旋を果たしたのだ。