「はやぶさ」高精度の落下、富士通が電波で推定 パナエナジー 7年性能保つ 日本の宇宙現場 光る企業群(1) [日経]

 「富士通の技術はすごい」――。はやぶさのカプセルが回収された6月14日、宇宙航空研究開発機構JAXA)の橋本樹明教授は感嘆した。

 はやぶさの本体は13日に大気圏に突入した際に燃え尽き、耐熱材に覆われたカプセルのみがオーストラリア大陸のウーメラ砂漠に落下した。発見に数日かかると覚悟していたが、富士通の通信技術によって落下場所を高精度で予測でき素早い発見・回収が実現した。

 カプセルには、はやぶさが着陸した小惑星イトカワ」の微粒子が入っている可能性があり、回収は至上命題だった。

 富士通の技術は地上からはやぶさへ向けて電波を出し、戻ってくる電波の経路や状態を計算式を使って推定することにより、はやぶさの位置や速度を求める。地球からイトカワまでの距離に相当する約3億キロメートル離れたところでも誤差はわずか数キロメートルで、精度が高い。

落下位置予測とほとんど誤差無くカプセルを回収出来たというアレですね。

 はやぶさは2003年5月に打ち上げられた。リチウム電池は今年6月に地球に戻るまで7年間に及ぶ宇宙の旅の間、放電して性能を失うこともなかった。カプセルの着地後、「求められていた程度のビーコンの強度が得られた」と同社の清水敏之・商品技術グループチームリーダーは満足顔だ。

 同社のリチウム電池はもともと長寿命という特徴を持ち、ガスメーターの安全機構の作動電源などに使われていたが、厳しい宇宙空間に耐えられるか分からなかった。セ氏60度で70日間放置するとガスメーターで10年使ったと見なせる劣化実験の経験則をもとに、宇宙空間を想定した実験に取り組み、「大丈夫だろう」と判断した。

Panasonicリチウム電池。同社はカプセルから回収したこのバッテリを欲しがってるそうですが、1か月間通信途絶で低温に晒されたり設計寿命を超えたりしても全く想定通りに機能したこともあってかなり価値のあるサンプルですよね。

 はやぶさは飛行中、イトカワの近くで実施した表面の詳細観測でも高い成果を上げた。明星電気の「エックス線分光装置」と呼ばれる分析機器が活躍した。

 同装置は太陽から出たエックス線が小惑星の表面に当たり、跳ね返って出てくる「蛍光エックス線」をとらえる。表面の岩石の構成元素など成分を調べることができる。

 わずかな成分の違いも検出できるように、センサーの心臓部品であるCCD(電荷結合素子)を工夫した。素子から送られる電気信号を伝える回路の設計も何度も変更してノイズ(雑音)を可能な限り抑え、従来品より1ケタ高い分解能を実現したという。

はやぶさのセンサも明星電機製だったんですね。

宇宙ヨット「イカロス」 極薄の帆広げた国産技術 カネカや日本飛行機 日本の宇宙現場 光る企業群(2) [日経]

 「大人が引っ張っても破れませんよ」――。カネカ電材事業部の赤堀廉一・技術統括部長はそう言って、A4サイズの黄色いフィルムを手渡した。両端を持ち、目いっぱい引っ張ってもびくともしない。これがイカロスの帆に採用された「ポリイミドフィルム」だ。

いっぺんでいいから引っ張ってみたい…

 カネカのポリイミドフィルムは電子機器のプリント基板などに使われる。柔軟性を持ち耐熱性に優れ、放射線にも強いという利点から白羽の矢が立った。しかし、当時、最薄のものは12.5マイクロメートル。イカロスに搭載するにはさらに4割も薄くし、かつ引っ張りに対する強度を落とさないことが求められた。

 カネカは樹脂を溶液状態にしてロールに垂らす製造工程で、均一な厚みになるよう改良を加えた。「最初はすぐに裂けるなど苦労した」(赤堀技術統括部長)が1〜2年の研究期間をかけ、求められる性能を持つフィルムの量産に成功した。

特に2次展開の時に負荷が高そうですね。

 イカロスは打ち上げ時、どら焼きのような形をしていて宇宙空間で内部に収納していた帆を遠心力を使って広げた。この仕組みは最初の難関だった。ここには川崎重工業子会社の日本飛行機(横浜市)が協力した。

 展開の仕組みはJAXAがある程度設計を終えていたが、起動に必要な電子部品をどう配置するのか日本飛行機宇宙設計グループの武内由成参事は悩んだ。セ氏マイナス100度になると電子部品は動かなくなる。そのため、ヒーターを内蔵するが、設置数も最小限にしないといけない。温度の監視もすべての場所をカバーできない。そんな状況下、すべての電子部品が起動するよう何度も計算を重ね、最適な設計を完了させた。

 帆は宇宙空間では展開するが、打ち上げ時の衝撃で開いては困る。帆が途中で開かないように押さえておく技術の開発で活躍したのは、宇宙開発ベンチャーのウェルリサーチ(東京・中央)だ。

こうして見るとホント重要な要素を担った関連企業が多いですね。