金星探査機「あかつき」は推進系の異常か - 原因が徐々に明らかに [MYCOM]

JAXAは今回、これまでに得られた探査機のデータから、「故障の木解析」(FTA)と呼ばれる手法により、原因の絞り込みを行った。その結果、可能性として排除できないものが5つ残ったという。
いずれのケースも推進系の異常であり、その中でも「燃焼ガスの噴射方向に異常が発生した」ことに原因が絞られている。推進系以外では、例えば姿勢軌道制御系の異常や大きなメテオロイドの衝突などについても検討されたが、これらが発生する可能性は極めて小さく、原因にはなり得ないと判断された。

先日の記者会見の内容を非常に分かりやすくまとめておられます。

あかつき・記事の補足 [大塚実の取材日記]

捕捉としてブログの方でも詳しく掘り下げておられます。てかこっちの方も凄い分量。

ちなみに、もし本当にセラミックスラスタが壊れていて、OMEの再使用が不可能であった場合には、RCSで代用はできるのだろうか。OMEの推力は500N。RCSの推力はそれよりも1桁小さいが、OMEと同じ面に23Nが4台付いており、合計の推力としては5分の1近い。より長時間噴射することで対応できないか…と思うのだが、実際にはOMEよりも効率が悪いために、燃料が足りなくなる恐れが強いようだ。一般的に、2液式に比べると、1液式のスラスタは効率が数割ほど悪い。早い時期に噴射が中断されたとは言え、燃料はすでに2割ほど消費されており、残量にそれほどの余裕はない。

そのときに使える手として、金星の大気を利用して減速するエアロブレーキングも理論的には考えられるが、エアロブレーキングは軌道制御に使った例はあっても、惑星の周回軌道投入に使った例はまだない。中村プロマネによれば「エアロブレーキングが難しいのは、大気の状態(膨張具合など)が日によって変わるので予測が難しいから。検討はもちろんするが、そこで金星に突っ込んで落ちてしまう危険性をとるかどうか」と慎重な構え。

もしスラスタが完全に使用不能となっていて、周回軌道投入があまりに高リスクと判断される場合にはフライバイ観測も候補になるようです。