今すぐ「あかつき2」の製造開始を [日経BP]

 しかし、あかつきとはやぶさでは状況が異なる。はやぶさでは、粘って運用を続ければ、小惑星からの地球帰還という世界初の偉業達成が待っていた。しかし、あかつきは粘っても、宇宙放射線による観測用機器の劣化が進む一方である。6年後にうまく金星周回軌道に投入できたとしても、成果はこの12月に金星周回軌道に投入できていた場合に比べて少なくなる。

 6年間も空白ができると、研究者は確実に論文の書ける別テーマに移動し、ここまで組み上げてきたあかつき観測に向けたコミュニティーは崩壊する。あかつき観測結果で、博士論文を書こうとしていた学生もまた、次のテーマへと散っていく。結果、次世代の太陽系探査を担う人材育成が途切れてしまう。

 太陽系探査にとって、一番重要なのは人だ。人材なくして継続的太陽系探査の実施はできない。予算を惜しんで人材を枯渇させるようなことがあってはならない。

 しかし、宇宙科学は民間の経済活動に馴染まない。どうしても国が実施すべき事業である。この世界的状況の中で、日本の宇宙科学を国の政策の中でどう扱うかを考えれば、他の宇宙科学計画を削ってあかつき2の予算を捻出するというありがちな方策が、愚策であることが分かる。

かくあるべし。それに研究者を6年待たせて軌道投入ならず、となった場合を想像するとかなり悲惨です。そして次の機会は2025年以降とかそんな話になりかねません。水星探査機BepiColomboはやぶさ2等を除くと次の惑星探査は再び火星の番でしょう。MELOSという火星大気サンプルリターン構想がありますが、かなり大掛かりです。2020年までに飛ぶでしょうか? 「あかつき」の軌道投入失敗のままスパンを空けて臨むには不安が残ります。生のノウハウが残っていれば安価に再開発する事は可能ですし、今なら特定した原因を早期にフィードバックできます(今を逃すとまた十何年後だろうか)。技術実証機を打ち上げるのと規模は変わらないかも知れません。もし「あかつき」再投入の望みがあれば、6年間の運用費は観測運用で使用するはずだった分から確保出来ていますので「さきがけ」「すいせい」のようにバックアップ体制で運用する手もあります。サイエンスの面で相互補完の効果もあるかも知れません。
SELENE-2すらなかなか動き出す気配のない現状からすると、かなり壁は高そうですが…。