小型ソーラー電力セイル実証機(IKAROS)の定常運用終了報告 [IKAROS]

おっ来ましたね! 正式にフルサクセス達成。後期ミッションを来年3月末までに設定して膜面挙動や機器の劣化、セイルのたわみと光学加速のパラメータ構築、誘導制御技術の向上などを狙うそうです。もちろんガンマ線バーストやダスト観測も継続。後期ミッション終了後は更に運用可能かどうかを検討するらしい。

うおっ、さりげなく金星も写ってる!! やっぱり狙ってたんですね!

回線めちゃくちゃ細い状況なのによくやった!

2月:姿勢・軌道決定(⇒新規3,4,継続3)
 展張状態・薄膜太陽電池発電確認(⇒継続1,2)
 GAP,ALDN観測データの再生
5,6月:姿勢・軌道決定(⇒新規3,4,継続3)
 展張状態・薄膜太陽電池発電確認(⇒継続1,2)
 GAP,ALDN観測データの再生,VLBIによる工学実験
 スピンレート・太陽角の広範囲変更後,姿勢・軌道決定(⇒新規1,2)
7月以降の運用については,6月までの運用結果を踏まえて判断する.
 <現状案>スピンレート・太陽角の広範囲変更により,
 ・通信状況を改善できる場合⇒ 燃料を節約しながら,長期の運用を継続する.
 ・通信状況を改善できない場合⇒ 燃料を消費しながら,中利得アンテナのリンク姿勢を維持する.

今後のスケジュールはこんな感じらしい。大幅な姿勢変更は夏以降のようです。

■会見の模様

Ustの中継をされていたので、プレスリリースに載っている部分の説明から補足部分などをメモ。

  • 2月・5月・6月に通信状態が比較的改善するのでここで集中的にミッションを組む
  • 面積の大きいALDNで統計的に有利なダスト計測。
  • この領域を観測したヘリオスガリレオではグラフの箱に点が1つ打てる精度。IKAROSでは時間・空間分解能がとても高い。
  • VLBI、非常に微弱な電波星も補正に使えるようにしている。はやぶさ2などにも資するように運用を続けていく。

質疑応答

−率直な感想を
世界最先端の難しい技術であると同時にこれを達成しないと次に進めないという難しいもの。次の計画に移れるということでホッとしている。


−金星フライバイで一区切りとの事だがこのリリースタイミングは
IKAROSに限らず「はやぶさ」のように燃えてしまったわけでもなく、IKAROSの運用は継続されているので蓄積した成果や新規テーマを提案し実現性を確認したうえでお知らせ出来る状況になったということで。18日に理事会に報告している。


−「想定する姿勢制御角の90%以上の制御性能を達成」とあるが
理論値の94%くらい


−運用期間は半年とあったが
実現性、燃料も1つだが、機器の健全性なども。


−運用で難しかった部分
帆の展開が一番の山場だろうと思っていたが、運用の話になると光を受けながらの姿勢制御、試行錯誤。思った方向に向けられない事も少しあったがフィードバックしながら最終的に克服出来た。


−金星の写真について、撮影目的
フライバイ、再接近のタイミング。(ソーラーセイルによる)世界初のフライバイということでwインパクトを世界に向けて発信する目的(会場笑い)


−来年3月末をミッションを終えると機体はデブリに?
デブリの定義によるが、運用終了し電源がOFFになるとただの物として宇宙空間を漂う。通常「デブリ」というと地球周回軌道を回るものであり軌道を占有してしまうのが問題で、とても広い太陽周回軌道ではいわゆる「デブリ」というものではないだろう。物としては機能しなくなるのは確か。


木星探査
ソーラーセイルはホントにできるのか、SFの世界。実際にできると示した。成果を踏まえて本格的に次の木星ミッションに。元々IKAROSではなく木星の計画を考えていたがリスクが高いということで先に実証を組む事になった。ステップを踏む。次こそいよいよやりたい。


−大型膜構造 木星探査ではどのくらいの大きさ
面積10倍 IKAROS200平米 次は2000平米 差し渡し3.3倍 一辺45mくらい?


IKAROSの成功を受けて技術的見通し、手応え
木星計画においてIKAROSが達成したのはほんの一部の項目。一番難しい膜の展開は押さえた。技術課題はまだある。冷えた環境での推進系、軌道決定、構築する課題がある。


−航続距離を何億kmと言い表せるか
5億kmくらいか


宇宙塵観測 通算25日間?
これは比較した期間。不連続な期間はあるが。現在データが下ろせないが検出は5000個くらいでは


NASAのNanoSailD 米国宇宙協会のLightSail IKAROSとの違いは
膜の大きさの違い。IKAROSは展開後の加速や航法技術。地球周回だと光圧より空気抵抗などが支配的になる。惑星軌道が有効になる。


−次は?
10年以内。2020年より前がターゲット。世界の探査機(日米欧)が木星を共同探査する計画がある。


木星に行くには何年でどれくらいの加速が必要か
100m/sというのは軌道修正のレベル。1000m/sとなると惑星周回軌道投入、「あかつき」が瞬発的に出すレベル。これを節約するのが画期的。H-IIAだとスイングバイを組み合わせ飛行期間が長い分ソーラーセイルに向いている。km/sオーダーが得られる。「はやぶさ」は1.4AUくらい、木星だと5AU、太陽光1/25、太陽電池は25倍必要。これは電力セイルでないと出来ない。


−5年後、地球に戻ってくるか
地球に戻す願望は理想としてはある。


−金星写真が撮れた時のチームの反響
一瞬でパッと出てくればいいが何日もかけてゆっくりゆっくりデータが降りてくるので感情が爆発するタイミングがない(会場笑い)


−ネットからの質問 中利得アンテナ(MGA)を使う予定は
通常LGA、ノミナル運用(金星まで)では必要ないがそれ以降は無理になるので事実上運用終了になるので通信距離を伸ばす。地球が正面にないといけないので燃料を使って姿勢制御が必要、ここぞという時に使いたい。


−スピンコントロール 推進剤(代替フロン)が切れると
非常に怖い質問(会場笑い) 液晶デバイスがあるがスピンの速さは変えられない。早く尽きてしまうものではないがいずれ切れる。スピンレートが0に近くなるとどうなるか予測出来ない。チャレンジングなミッションとしてはスピンレートの幅を広げて多少シワが増えて予測を超えるリスクがあってもどう変わるかを見たい。そういうことに燃料を使いたい。