宇宙ステーション補給機「こうのとり」2号機の大気圏への再突入完了について [JAXA]

ついにミッション完了!

 宇宙ステーション補給機こうのとり」2号機は、3月30日(水)午前11時44分(日本時間)に第3回軌道離脱マヌーバを実施し、大気圏に再突入しました。
 「こうのとり」2号機は、所期の目的である国際宇宙ステーションへの物資輸送を完遂し、本日の再突入をもって、約67日間にわたる全ミッションを終えました。
 なお、再突入推定時刻及び着水推定時刻は下記のとおりです(日本時間)。

再突入※推定時刻 平成23年 3月30日(水) 午後0時09分頃
着水推定時刻 平成23年 3月30日(水) 午後0時21分頃〜0時41分頃
※:高度約120km

約60日間という通常想定している倍の期間係留し、完璧に任務をこなしました。分離直前に震災に見舞われるという事態も起きましたが、連係プレーで見事乗り切り本日ついにその役目を終えました。「こうのとり」2号機、そして運用チームの皆さん本当にお疲れ様でした!


■HTV2 こうのとり2号 再突入実況放送(JAXAミラー), HTV2 こうのとり2号 再突入実況放送(JAXAミラー) [nvs-live on USTREAM]





12:14ミッションコンプリート! 管制室が拍手に包まれます。達成感が湧いてきますね。あのキンキラ機体がもういないと思うとちょっと寂しくもありますが。



茨城県の被災者の方々の写真。





みんなで記念写真。JAXAカラーの青いだるまww







ゲストがHTV-Rプロジェクト室長の鈴木さんということでモデル紹介。見たところカプセルに暴露パーツ回収用らしき開口部も見えますね。ただの断面図かも知れませんがそこに言及は無かったので分かりません。


■ ミッション完了後の記者会見


NVSの方が中継されていたので録画をメモってみました。重複の質問などは多少端折ってる箇所あります。関連して別の記者が質問するシーンもあるので無記名の部分は別の人の場合もあります。

11日に地震が発生し一次全員退避 管制システムほぼ停止 ヒューストンと切れた回線を復旧したり
22日から復旧
27日にハッチを閉じて28日深夜(日本時間)に離脱

上側にどんと載せ替え2月18日
シャトルがこんなに近く 管制でもおーきたきたと見ていた
ATVなども続々集まってきた
シャトルISSを離れてフライアラウンドで撮った写真、シャトルじゃないとなかなか撮れない貴重な写真
他のは銀色とかだがHTVがご覧の通りキンキラでかなりの存在感だったと思う ATVやソユーズも見える非常に歴史的な一枚ではないか


10日にふたたび下側に移設した翌11日に地震が来た 管制のあるオフィスもかなりの揺れ 管制自体はそんなに被害が無かったが4階の計算機の集まっている部屋の状況が酷くて停電などもあり、衝撃でサーバにダメージがあるかも?という状況 ヒューストンとの直接回線主計従系ともにやられた しばらく管制出来ず かろうじてマーシャルとの回線を通じて音声のやりとり、テレメトリを見たりインターネットを通じて一時的にテレメトリをモニタするツールをNASAから(セキュリティを確保した上で)借りてしのいだ
幸い運用棟のHTV運用システムは機能的にも大丈夫 漏電も無し 電気的な懸念も無し 停電テストもして18日から徐々に復帰 連休を挟んで 電車もほぼ止まっているので自宅待機だったが少数のFD、ネットワーク担当など必要最小限の人数でこの期間は対応してたが22日からは徐々に集まって運用再開 短期間の復旧が無ければ今日この日は迎えられなかった。
廃棄カーゴ見ての通りぎっしり この状態で29日分離 計画通りの時刻 今日30日大気圏再突入 最初から最後まで色々不運な出来事もあったが、ステーション計画の上ではすべて計画通り進めることが出来た。
被災された方々を何か元気づける、宇宙に携わるものとして何か出来ることはないか 折り鶴 管制のコンソールの上 色んな所から協力出来ることはないかとヒューストン、ESAコロンバスモジュール管制も輪が広がった ISSクルーからも 折る手順書を作ってインターネットから送って軌道上にアップリンクして作ってもらった 写真はハッチを閉じる直前 クルーは3人になってた これは去年の筑波特別公開で撮って作ったモザイクポスター 非常に有り難いと思う
これは今日のISSとHTVの位置関係 特に東日本、青森上空を通る条件 地上から見てほしいと


質疑

Q 朝日: 虎野さんに 初号機より緊張したと言っていたが、後ろに座って余裕のようにも見えたが 全体としてチームの様子 トラブル対応出来た要因はどのように考えるか

ふてぶてしいとしたら申し訳ないが(笑い) チームとしての信頼 訓練・高度なシミュレータを使って何度も何度も 2千通りの練習 応用編もあり 全面的な信頼 ロケーション・飛行短縮では練習の成果が出たと思っている ハードウェア 初号機で軽微なトラブルがあったが対処した結果すべて完璧だった 
リロケーションすると太陽がよく当たるので温度関係的には良くない シミュレーションで解析してリロケーションに行った

Q 2千通りの中に地震で回線2つとも切れるというのはあったか

そこまではなかったがw,どうしたものかと思ったがヒューストン側と互いに信頼関係が出来ていたので先ほどの話も1つ、あのシステムがここで使えると思っていなかったところもあったのでそれも信頼関係の証だと思っている 日々コミュニケーションを取りながらやったので上手く意思疎通出来ていたと思う 地上が停止している状態にもかかわらず機体が非常に安定していた それが一番大きかった もし何か軌道上で問題が起こっていたらそれこそ大変なことになる

Q 離脱 説明ではたまたま移設の後に地震 たとえば離脱のタイミングで起こっていたら対応出来ないコマンドがあったので大変だったという話があった 今後どうするという話はあるか

対応しないといけない 想定を遙かに超えるという者もあった 国際回線の信頼性をいかに確保するか

Q NVS: 先日のブリーフィングにあったテレメトリ装置でデータは取れたか 再突入の実況で温度が200度超えているという情報もあったがその他には

写真の黄色のもの 先ほどデータが取れたと連絡あった 中身はまだよく聞いていないが 太陽電池パネルの温度情報もモニタ出来た 大気の抵抗でぐらっとしても姿勢をがんばる状況も見えた 最終的にはやはり通信が途絶えた 宝の山 これから温度以外にもチームで評価して次号機あるいはHTV-Rに向けて踏み込んでいきたい。

Q 産経: ISI相馬の被害 企業の被害 3号機以降の製造の影響

IHI-Aなど操業規制 確認したが3号機までは問題ない ただし熱真空試験・音響試験装置 筑波の試験棟が被害 今すぐ出来そうにない 具体的には8mのスペースチャンバ いつ使えるようになるかということ、試験を省略してもいいかという話と平行して進めている 修理出来ないのであれば解析で補えないかと
HTV 荷物 カーゴで被害 試験装置あるいは本体に若干被害 スケジュールに影響があるかも知れないと聞いている 正確には把握していないが

Q 年度内不可の可能性?

HTVについては年度内可能 現時点では

Q ロケットの方は

先日の審査会ではH-IIB3号機の報告は特に無かったので 申し訳ないがロケットは輸送本部の方へ

Q ライター: 想定の外だったということだったが田辺さんはどういう状況でどう対応したか詳しく

早朝からコンソール 直前に次のFDに引き継いだ 3階オフィスで被災 かなり揺れた すぐ下の管制室に行った 1階は軽微 テレメトリデータ ヒューストン経由で直後は繋がっていたのでヒューストンに退避を伝えた 軌道上にも伝わった こうのとりはしばらく放っておいても大丈夫だという話をした 週末に懸けては立ち入り禁止な状況だったのでメールなどで連絡して監視してもらっていた 国際回線も通じなくなったのでネットワーク担当が急遽突貫で別回線を用意 

Q 人数は

10名弱くらい

Q一時退避しなければならなかった?

手順に従って避難 TKSCの職員すべて
直後はなんとかなると思っていたが国際回線が切れたので大変なことになると 建て屋全体として復旧出来るかなと
なんとか計画通りに離脱再突入まで持ってこられたというのは(人的被害が無かったというのも大きかったが)HTVに不具合が無かった、システムが健全だったというのが大きかったと

Q 虎野さんに トラブルの無視は出し切れたという手応えは?

少なくとも最低限の虫出しは終わったのかなと 3号機からは国産化が増えるのでそこが新たな注目点

Q NVS: ドッキング期間60日と約倍 もっといけそうか?

技術的に言うと太陽電池重粒子線などで持つか 一次バッテリーがどこまで消費していくか 数十日は持ちそうだった 他の評価はまたしないといけない クルーの忍耐力がどこまで持つか そろそろ限界 90日になると精神的に参ってくるかなと(笑い)

Q スラスタ トランスポンダ 照明など以外に国産化する部位はあるか?

(うーん、なにかあったかな?)ランデブセンサ ドイツと共同開発したもの コストを下げた純国産にしたいが予算が(笑い) 今のところは検討中

Qこうのとりぬいぐるみは今後もISSでマスコットに?

JEMの窓の横に置いている モザイクポスターだが、2号機と一緒に燃える予定だったがクルーからの申し出でシャトルで持ち帰れないかという話に 今のクルーのサインが入っている

Q 毎日: 着水地点の緯度経度

解析待ち わずかに西10km程度 かなり高精度

Q エンジンノズルくらいしか燃え残らないという話だったが実際には確認したか

難しい。先ほどの話のデータ送信装置は耐熱処理がしてあるので今もNASA側が受信していると確認している フローター付きで浮いている 回収はせず 衛星経由でNASAが受信している 電池が切れたらそのまま もともとNASAの研究用だが乗せる代わりにトレードでデータをもらっている

Q NHK: プレスリリースで運用再開が22日16時だったが 通信開始時刻?

もう少し前だったが態勢が復帰したということで

Q 筑波とHTVとの(直接)回線は

すべてNASA経由 ネットワークが生きているところを模索して

Q 地震を想定していたとすればどの程度を想定したか? 主計冗長系どっちか壊れるのはどういう状況を想定?

海底ケーブル場所を話してどちらかが生き残るというのを想定していたが両方やられたのが想定外
次号機からは想定してバックアップを考える 緊急処置だけしてすべてあきらめるという方法もあるが 経験でしかなく、停電したらバックアップバッテリー 自家発電装置 それらとは全く違う2系統の通信が両方ダウンというのは想定外だった HTVが3重冗長とよく言っているが 2重にしかしてなかったのでそれはどうするかというのはある

Q 産経 マーシャルの回線は何故生きていたか そもそも回線が切れた原因は分かっているのか

詳しくは分からないがマーシャルとの回線は場所が違う装置の作りも違うので
ヒューストンは米国内の中継装置がおかしかったと聞いている 米国の問題 海底ケーブルはそれはそれでおかしくなっている 原因は分からないが交換作業 中継装置はたまたま地震とタイミングが一致したと聞いている 冗長系はNASA側が責任を持っている部分なのでこちらから冗長系云々とは言及出来ない JAXA内・国内では我々としてやっている。

Q 主計冗長系ともにアメリカ側の中継装置がおかしくなった?

冗長系がそこだけシングルになっていておかしくなったと聞いている

Q 通信が切れたのは津波の影響と認識していたが、地震に関してはHTVは影響を受けてないということに?

私が聞いている範囲だが、こちらと繋がらない・マーシャル云々は中継装置のトラブルだろう 海底ケーブルに関しては津波の影響があっただろう 地震後にそれぞれ別に報告を聞いている 回線は商業回線

全体的に地震の話、特に回線の件に質問が集中しまくってましたw ただここで分かったのは、地震と関係なく米国側のシングルになっている中継装置の故障で通信が出来なくなったのと海底ケーブルのダメージなど同時多発的に起こったという部分。再突入時の実験では「こうのとり」が最後まで姿勢を保とうとしている様子が把握出来たそうです。最後まで本当にお疲れ様でした。
あとISSクルーがとても気を利かせてくれているのが嬉しい話でしたね。あのモザイクポスター、サイン入りで帰ってくるそうですよ。

Japan's HTV cargo freighter proves useful to the end [Spaceflight Now]

上の会見でも触れられていた送信装置「REBR」について言及しています。

The Re-entry Breakup Recorder, or REBR, was attached to the spacecraft for the ride back to Earth. While the HTV was designed to disintegrate once it hit the atmosphere, the REBR was protected by a heat shield to keep the device intact amid the violent re-entry.

Designed and built by the Aerospace Corp., the REBR was programmed to autonomously measure, record and transmit temperature, acceleration, rotation rate and other variables during the HTV's return.

It will yield unprecedented insight into the dynamics of the destructive re-entry of a satellite. Only the shuttle Columbia accident in 2003 gave scientists any useful data on how a spacecraft breaks up in the atmosphere.

It was the second HTV mission launched to the space station by Japan. The next Japanese cargo craft is being prepared for liftoff in January 2012.

The second REBR unit launched aboard the HTV was moved to the European Automated Transfer Vehicle, which is slated to leave the station and dive back to Earth to a similar fate in June.

図解がありますが、まんま再突入カプセルですねこれ。分解していく状態をモニタするのはコロンビア号分解事故くらいしか前例の無いデータらしい。これは有益だわ。あとなんか次の「こうのとり」は2012年1月とかさらっとバラしてます。まあ現状予定通り行くかどうかはまだ分かりませんが。あと今回「こうのとり」でもう1台このREBRを運んでいて、現在係留中のATV-2に移設されたようです。ESAもこのデータに興味を持っているそうです。