「あかつき」の金星周回軌道投入失敗に係る原因究明と対策について(その3) [JAXA]

今日開催の宇宙開発委員会で提出された超詳しい資料がアップされています。こりゃすごい。
要点を書き出してみると…

  • 酸化剤蒸気が想定したリーク以外に逆止弁のシールを透過して燃料側まで逆流、弁周辺に塩が生成され動作不良を引き起こす(再現済み)
  • 火星探査機「のぞみ」でも同様の現象が起きていた可能性(ただし事故に直接の関係は無し)
  • OME(メインスラスタ)の異常燃焼を検証、熱流束過大においてノズル破損を再現(個体差により再現しないケースもあり)
  • 今年9月に「あかつき」OMEの燃焼テスト、その結果を踏まえて11月に軌道変更を実施
  • OMEの現在の推力は300N(2010年の金星投入マヌーバ時と地上試験の結果が一致)
  • 着火時に全損するケースもあるため着火衝撃の緩和を検討
  • 2015年11月の軌道投入を目指す
  • RCS(姿勢制御スラスタ)のみによる軌道投入も可能(酸化剤を投棄し軽量化)、ただし従来の観測軌道は難しい


試験したサンプルなどの写真も色々掲載されていてえらいボリュームです。しかし塩の析出ですか…逆止弁がこれほどダイナミックに透過するというのは、今後の設計にも影響を与えそうですね。また記者会見でも質疑応答で出た話としては


  • 11月の軌道変更に向けてはプログラムの登録など10月中旬までには準備を 日にちまでは具体的に決まってはいない
  • 放っておけば2016年に数百万kmまで再接近 そのままでは到達できない 今年11月に調整すると2015年に挑戦できる
  • 海外に事例はなかったのか、防げた可能性は→何種類かある推進剤 開発段階まで範囲を広げて調査(P50) 不具合の例 地上試験 防げたかも知れないという反省点 そういう態度でやらなければならない
  • 軌道制御エンジンを使う場合でもヘリウムは使わない?タンク圧のみ?→そのとおり、それでできる
  • 横推力(P58) これ以上破壊が進まなければRCSで姿勢を保てる
  • 塩分析出による閉塞は変わっている可能性 11月の噴射で分かるだろう 4年間でリカバリ


といった情報がありました。
いやそれにしてもスカートがごっそり落ちて300Nも確保出来るとは。もしノズル部分まで取れてたら更にガタ落ちでしたね。弁の閉塞状態が変わっている可能性もあるようですが、その部分より後ろのタンク圧のみでやるそうなので完全に閉塞しない限りはいけそうです。地味に金星投入時期が6年後が5年後に変わっていますが、再接近距離を調整するとこんな感じになったそうです。遠日点のみを下げて太陽周回速度が速まったことによるもので、近日点運用には影響無しだそうです。
破断したOMEから発生する横推力ですが、去年の金星投入マヌーバ時は「あかつき」自身が姿勢異常と判断しセーフホールドモードに移行しましたが、その時の横推力の数値と再現試験での数値が一致し、このレベルならRCSで保てるということで姿勢制御を実行しつつ噴射を継続するよう書き換えると話していました。ともかく9月の噴射テストに注目ですね。


しかしまあこの半年でここまで検証しちゃうとは…