電気ロケット技術 Game Changing Technology [ISAS/JAXA]

國中先生の寄稿。

 熱電子放出を利用する型式の従前のイオンエンジンは、地球の大気に曝露されると酸素や湿気によって途端に性能劣化する。ところがマイクロ波放電式イオンエンジンは、そのような短所を持ち合わせていない。事実、打上げの2年も前に「はやぶさ」に取り付けられ保管されていたけれど、それは宇宙で十分に機能した。先日、このイオンエンジンの利用拡大を目指すために、機材を米国に持ち込んで運転公開を行った。環境保持や密封などの特殊な手当てをすることもなく3月初めに輸出し、月末に現地で受け取るや開梱を始め、真空タンクに設置、イオンエンジン加速成功までをたった1日で達成した。マイクロ波放電式イオンエンジンは、このような強健性および操作容易性をも備えている。

管理上の利点もあるんですね。

 イオンエンジンの開発手法で最も手間がかかるのは、耐久性証明である。これまでは実時間による地上耐久試験を行っており、1回当たり2年もの時間を要した。新しい手法として、数万時間級耐久試験でなく、数千時間級耐久試験と数値解析を組み合わせた寿命認定を志向している。イオン加速グリッドの3次元数値解析JIEDI(JAXA Ion Engine Development Initiative)ツールが準備を整えている。

ロケット開発でもこの手のシミュレーションでかなり効率的に設計できるようになってきましたね。