ISAS/JAXA相模原キャンパス特別公開に行ってきた 2011.07.30
資金がかなりギリギリだったんですがなんとか捻出できたため満を持して出発。今回は3時間以上寝たのでわりと元気です。ちょっと電車に乗り遅れたため淵野辺駅に着いたのが開場時刻の10時。雨は降っておらず日照りもなく素晴らしい曇り空! あまり暑くならずに済みそうです。今回も送迎バスを待たずして徒歩で向かいます。
市立博物館
今回こちらでもIKAROS関係の展示があります。
サー!せっかくなのでブラック様になりきらせて頂きましたサー! 写真撮ってくれたスタッフの方々も自分がグラサン装着した時点で「ブラック様wwww」と鋭く反応しておられました。
展示室はこちら。去年は「はやぶさ」カプセルを展示していたスペースです。
ファンの皆さんからプロジェクトチームに贈られたプレゼントが飾られています。
IKAROSエンジニアリングモデル。相変わらずでっかい! このスケールは是非一度実際に見てもらいたいと思います。今回は巻きつけ機構も展示されています。
そろそろ中村プロマネの講演会整理券配布が始まってる頃かなと思い10時50分頃に隣の近代美術館に立ち寄ってみたんですが…なんと既に配布終了! 完全に油断してました。以前聞いた講演がかなり面白かったから楽しみにしてたのに(´・ω・`)
第1会場
今年も「はやぶさ」ブースが長蛇の列。経験則で言うと昼過ぎには余裕ができるので、先に奥のブースから回ることに。
M-Vの前では皆さん記念撮影。
中庭ではローバの実演とともに宇宙服さんがポーズ決めてました。これって暑くないんでしょうか。冷却系ついてるんでしょうか?w
第5会場
固体ロケットブースでは相変わらず最も濃い空気が流れております。初号機は2013年夏打ち上げ目標らしい。
あとこちらで、いつもTwitterでお世話になってる方とご挨拶。宇宙クラスタの皆さんの中には前日入りして2日とも回っている方も多いそうです。確かにじっくり見てると1日じゃとても間に合いませんし、自分も余裕があればそうしようかなとも思ってましたがちょっと無理でした。
再使用ロケット
RVTのターボポンプ供給式エンジン。従来はガス押し式で、こちらは燃焼試験で使い倒した実物。2年後頃から飛行試験をやろうかという話だそうです。飛行中の姿勢制御はRVT先端から窒素ガスを噴出して行っている。将来大型化した際にはエンジン4基クラスタ化してジンバルも付け、液酸液水姿勢制御スラスタも搭載。やるとしたら鹿児島だろうけど場所は新しく作らないといけないそうですが、せっかくだから今すったもんだの馬毛島とかどうでしょうかw
太陽発電衛星
このブースにはデブリ衝突実験も展示されていました。
これは秒速6kmでぶつけたアルミ板ですが、貫通していないのに反対側も衝撃で吹っ飛んでいます。凄まじいですね。
斜めからぶつけたもの。反射して奧の銅板に飛び散った破片の衝突跡がほぼ一直線に広がっています。下の2枚目はあまり破損していません。やはり複数の層に分けた方がエネルギーを分散しやすいそうです。
これがその試験設備。
中庭
電気推進ブースは長蛇の列。仕方ないので後回しに。しかし最終的には回る時間を確保できず。
撮影会
秋の「」さんをなんと市が公式にお招きになっており、すっかり撮影会になっていましたw 女性客からは「きれいー」との声多数、男性客からは「みんな撮ってるから恥ずかしがらずに撮れるね」との声ちらほらw まったくもって同感であり自分も思い切って参加。上手に撮れなくて申し訳ありません!
第1会場
「はやぶさ」「はやぶさ2」ブース
12時半頃、だいぶ見やすくなってきたので突入。ちびっ子たちに熱弁をふるっていたIES兄さんと握手!
- ―1周年講演では面白い話をありがとうございました!
- 兄:いやいや、何も喋ってはいませんよ!
- ―握手させて頂いても!?
- 兄:(ガッシ)
- 兄:今「はやぶさ2」のイオンエンジン開発をやってるんですよ。
- ―あっちのブースも凄い列でしたw
- 兄:去年は申し訳ないくらい混んでましたからね。3万人とかw
- ―さっき「冒険日誌」買おうと思ったんですが売り切れちゃってましたw
- 兄:マジですか!?(はやぶさ模型反対側に立っている)あの赤い腹巻きの女性が描いた方なんですよ。「売り切れたそうですよー!」
- ―あの方が竹内裕子さんの役のモデルだとすると、藤原竜也さんの演じる役は兄さんがモデル?
- 兄:ファンの方に殺されます!
映画の予告編が流れていました。原案が「冒険日誌」らしいんですが、作者の小野瀬さんにお話を聞くとあくまで自分は原案で映画のキャラクターはテラキンさんや色んな人達がまとまった役柄なんだとおっしゃっていました。しかし予告編の竹内結子さんを見た後で小野瀬さんを見ると、印象がかなりそっくりで本当に驚きましたw
300nm! キュレーションの様子を写した動画も流れていました。これまでの微粒子と比べてあまりに大きいので逆に持ち上げづらいとw
近くに立っておられた中の人にお話を聞いたんですがどなたなのか確認できず。理学から工学まで幅広く答えて下さいました。以下はかなり端折っています。
- ―C型小惑星とはどんなイメージ?
- 担:粘土。凍って岩石と混じり合ってる状態と思われる。反射率が低い。隕石として落ちてくると湯気が出ていたりする。
- ―M型は?
- 担:大きな鉱物の塊かもしれない。元の天体が砕け散ったものと思われる。
- ―地球より内側にある小惑星とは?
- 担:軌道がどんどん変わって太陽に落ちていくと思われる。
- ―惑星の重力の影響で?
- 担:それもあるが、放熱によって軌道速度を減速する方向に力がかかる現象で。
- ―OSIRIS-RExで調査する予定のあの現象(ヤルコフスキー効果)?
- 担:そう。「はやぶさ2」でも調べる予定。
- ―イトカワの画像を初めて見たときは本当に驚いた。くびれているような形状など
- 担:楕円を予想していた。そういう形状の場合、自転周期に合わせて明るくなったり暗くなったりする。
- ―楕円形だとどの軸で自転が安定しやすいか?
- 担:やはり(イトカワのように)横倒し。
- ―一度ドカンとバラバラになった母天体がゆっくり寄せ集まった?
- 担:そのようだ。イトカワはくびれているが、(くっついている部分を2箇所に分けると)それぞれ比較的丸い形におさまっている。
- ―今後の探査機は平面アンテナにしていく流れ?
- 担:そうなると思われる。
- ―指向方向に余裕が出たりする?
- 担:ほんの少し。
- ―Kaバンドアンテナを搭載すると従来のHGAよりかなり通信速度が向上する?
- 担:6倍くらいになる。ただし受信局を整備しないといけない。海外から借りるか。日本では湿気の影響で劣化する(Xバンドなら問題は無い)。
- ―仮に海外に新設するとしたらどこが理想的?
- チリ。現地政府の方針としても積極的。
実寸大の「ミューゼスの海」。こうして見るとまんま河原の砂利です。
カプセル回収時の防護服。逆光でうまく撮れませんでしたが、フラッシュ焚けば良かったんでしょうかね。
一昨年の特別公開時に書き込まれた寄せ書きへのアンサー。
有志の方々からの寄せ書き。これネットで募集かかってたんですけど応募するの間に合わなかったんですよね(´・ω・`)
「かぐや」ブース
くじ引きでポストカードをゲットしたことに気をよくして写真とるの忘れてた!
「かぐや3Dムーンナビ」が実演されており、ぐりぐり堪能。要はGoogleEarthみたいなもので、「かぐや」の観測データを色々表示できます。実はうちのPC、OpenGL非搭載なので見られないんですよ(´・ω・`) そのうちまた買い換えようかなあ。
ペネトレータブース
アメリカで実験に使用した実物! 貫入により激しく跡が残っています。でも触ってみると意外とサラサラ。引っこ抜いた時の土が付いており、まさに産地直送。先端が切り落とされたような形状になっているのは、尖らせすぎると逆にツルッと滑って刺さりにくいため摩擦係数を大きくする事で刺さりやすくなるらしい。納得。
実際にはこのようなCFRP製のボディを使用。これ1個で100万円くらいするとか。おそるおそる持たせて頂きました。
ペネトレータ開発史。某X風になっていますw
月震計。センサをトントンとするとグラフがピヨヨンと反応します。
IKAROSブース
ガンマ線バーストの観測例など。
低スピンレート運用についても。なんと一時0.055rpmまで落としていたらしい! 終了間際になってやっと森先生周辺の混雑が解消されてきたのでお話を聞いてみました。
- ―0.055rpmと書いてあって凄く驚きましたが、見た感じ少ししわが増えたくらいで膜面のたわみはほとんど無かったんですね。
- 先生:これが意外でした。想定以上に剛性を保っていたようです。ここまでスピンレートを下げたあたりで首振り(ニューテーション)が始まったのでスピンレートを上げました。今は思い切って姿勢を変える実験をしています。
- ―将来イオンエンジンを搭載する場合は?
- 先生:(くるくる回るペーパークラフトを取り出して)こんなふうに本体を軸に膜面のみを回転させます。慣性だけで回ればいいがどうしても摩擦は起きるので、その分は駆動させようかと。
- ―個人的にO先生の寝相が気になっているのですが!
- 先生:うーんどうなんでしょうねー(笑)
- ―椅子に腰掛けた状態で?
- 先生:そうですね。学生の頃に比べたら全然平気です(笑)
というか今日も1日ずーっとそこに立ってしゃべり通しのような気がしますが先生!
(ふと足元を見ると)
あった!伝説のカーリングストーン!
イオンエンジン搭載型ハイブリッドソーラーセイル。これは以前からある模型です。
次期大型セイル開発におけるポリイミド膜の作成とイオンエンジンμ10HIsp。膜面展開方式については他にも色々検討しているようです。森先生の話の通り、イオンエンジンを搭載する場合はコア機体とは独立させてセイルだけをスピンさせる必要があります。その場合、膜面の薄膜太陽電池で発電した電力を伝えるための耐久性も必要。
木星探査における観測計画。宇宙塵やガンマ線バーストに加えて宇宙赤外線背景放射も。
木星探査計画。これによると木星到達までは4.5年と意外に早いんですね。例を挙げると8月にアトラス5で打ち上げられるNASAの木星探査機JUNOは2016年に木星到着となっています。
第2会場
あかりちゃんブース
床と天井を見ると次期赤外線天文衛星SPICAの主鏡と副鏡の実物大イメージが。でっか! 「あかり」が約70cm、SPICAが3.2mなのでまさに桁違いのサイズですね。これが上がると日本最大級の光学天文衛星となります。人垣をかき分けて質問してきました。
- ―でかいですね!
- 担:でかいです!
- ―「あかり」の主鏡は炭化ケイ素ですが、SPiCAでも?
- 担:SPiCAの主鏡も炭化ケイ素。1枚を磨き上げます。
- ―JWST(ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡)がなにやら大変ですが
- 担:かなりの予算を食ってますからね。あちらが足止めを食らうとなるとますますSPiCAの実現が重要に!
- ―JWSTは複数の鏡を組み合わせていますが、SPiCAの有利な点は?
- 担:一枚鏡なのでノイズが混じりにくく綺麗な画像が得られる。また冷却温度がずっと低いのでとても高感度の観測ができる。
- ―どのラグランジュ点に?
- 担:L2、太陽から見て地球の後ろに隠れる位置関係で日陰になる。完全に太陽光を遮るというわけではなく、発電はちゃんとできる。
- ―「あかり」では全天観測を行ってましたが、SPiCAでは?
- 担:SPiCAではターゲットを絞った観測を実施します。
- 担:ご質問いただきましたのでこちらの冊子どうぞ!
あかりちゃんの薄い本ゲット! 打ち上げから観測開始までのすったもんだを描いた勢いのある擬人化漫画です。このスタートラッカなでなでしたい。
赤外線カメラのデモ。シリコンは赤外線を透過しやすいそうです。なんか線が入ってるのは割れたシリコンを貼り付けた部分です。割れやすいそうですw
「あかつき」ブース
こっちにも千のあかつきがあった! というか一箇所じゃ纏めきれなかったらしいw
なぜ金星はここまで気圧が高いのかと聞いてみたところ、単純に大気の量が多いからだそうです。なぜ地球などに比べて多いのかというと、地球の場合は二酸化炭素などが大量に固定されているから。なるほど。
「あかつき」打ち上げまでの道のりとこれからの道のり。
「あかつき」の赤外線カメラは冷却して使用されますが、IR2ではスターリング冷凍機で冷却。IR1は放熱で足りるレベルだそうです。
さて、実は出発前日に中村先生のサイン入りポストカードが届いておりました! おそらく千のあかつきキャンペーンのご返礼。今年も「あかつき」ブースに今村先生がおられたので、お礼をお伝えしたついでといっては何ですが(ホント何だw)サインを頂きました。ありがとうございました!
第3会場
磁気プラズマセイルブース
こっちはちょうど結構空いているタイミングだったので並んでみました。
10km単位の磁気セイルで太陽風を捕らえ推進力に。IKAROSはよく「太陽光」による推進を「太陽風」と間違えられていましたが、こちらはまさしく太陽風です。スケールでかい!
こちらは太陽風で加速を得る磁気プラズマセイルの実験。実はこのあたりでカメラのファイルを誤操作でざっくり削除してしまい頭真っ白で解説を全然聞いてませんでしたw ファイル自体は上に大量にあるとおり無事復元できましたが、とりあえず動画だけ。揺れている部分はここで合ってますよね? 手ブレはほぼ無いはずなので微妙に揺れているのがスローで見て取れる気がします。
そんなこんなであっという間に終了時間に。いやあ、1日じゃ全然時間が足りない。やっぱ2日くらいあった方がじっくり見て回れそうですw 今回も実に面白い話を聞かせて頂きました。本当にありがとうございました!
今年は比較的落ち着いて見られましたね。というか去年があまりに爆裂だったんですよねww 電力事情なども心配でしたが無事に2日間を終えられて何よりです。
兄さん、「どうせ2ちゃんにアップされるからどんどん撮ってくれていいですよー!」とか言ってましたしww
皆さんお疲れさまでした!
「はやぶさ2」もいよいよ本格始動ですね。
というか宇宙研テニス部の歴史もそろそろ気になるレベルです。