「あかり」宇宙からの謎の遠赤外線放射を検出! [ISAS/JAXA]

おっ!? なんぞ?

 宇宙背景放射の測定は、観測された空の明るさから太陽系や銀河系内のダストの放射を差し引き、残る銀河系外の信号を調べることにより行ないます。また、宇宙初期の放射だけを測定するには、個々に検出できる比較的近い銀河は、できるだけ取り除いておく必要があります。「あかり」は、過去に宇宙背景放射の観測を行なったCOBE衛星(注1)の100倍近く高い解像度をもち、桁違いに暗い銀河までも取り除くことができました。図2には、以上のようにして得られた宇宙背景放射の明るさを、3つの観測波長について示しています。驚くべきことに、観測値は、最新の銀河進化モデルから推定された宇宙の全銀河による宇宙背景放射よりも、約2倍も明るいのです。観測されたスペクトルや空間的な一様性などを分析すると、確かに宇宙背景放射のかなりの部分は赤外線銀河からなるようですが、それだけでは説明のつかない放射成分が存在するのです。たかが2倍とはいえ、宇宙の全エネルギーに関わることなので、この差は深刻です。

 謎の遠赤外線放射を出す天体はどのようなものでしょうか。ある程度は予測されていた原始の赤外線銀河でないとすれば、さらに昔の天体かも知れません。図2からわかるように、謎の遠赤外線放射は、原始の赤外線銀河を主とする全銀河の放射(図中の銀河進化モデル)よりも短い波長にピークをもっています。このような「高温」スペクトルをもつものとして、宇宙初期のブラックホールからの放射の可能性があります。これと関連して面白いことに、最近の研究では、宇宙で最初に生まれた星ぼしは、短い寿命ののちに超新星爆発をおこしてブラックホールを遺すと考えられています。ただし、以上の解釈に直接証拠があるわけではなく、今後も解明への努力が必要です。科学的解釈はまだはっきりしませんが、今回の観測結果は、現在の銀河進化の描像に転換を迫るものであり、また、宇宙初期の天体形成の研究に重要な手がかりを与える可能性があります。将来の大型赤外線天文衛星SPICA(注2)や宇宙背景放射観測ミッションEXZIT(注3)などにより、「あかり」が遺した課題の解明が期待されます。

これは面白いものが見えてきましたね。「「あかり」が遺した課題」、そのバトンは是非SPiCAに!