金星探査機「あかつき」軌道制御エンジン(OME)の軌道上噴射テストにかかる説明会

本日夕方に会見が開かれ説明が行われました。すでに詳細なレポが上がっていますがw、帰ってからタイムシフトで見たのでメモ代わりに起こしておきます。

要点

  • 9月7日 午前11時50分から2秒の噴射試験(1.3m/s) 外乱を定量的に把握
  • 9月14日 午前11時50分から20秒の噴射試験(13m/s) 姿勢制御の検証
  • これらは軌道面の変更も兼ねており、軌道面に垂直の90度方向に噴射を行う
  • オペレーションの結果は当日夕方に発表 解析結果は10月頭までに発表
  • この結果を踏まえて11月に近日点での軌道制御 400秒相当の噴射(260m/s)

概要の説明

11月に軌道制御

9月にOMEの状態を把握する試験噴射
11月の軌道制御の方針を決定

燃焼機破損の想定 してるかしてないかを含め、軌道制御に使える可能性を
横推力、外乱が起こる可能性。これらを制御できるか検証
RCSでは確実に行えると思われるが推力が小さいので最初の目標軌道に入れるのは難しい
できればOMEを使って軌道投入したい
早く再会合するために周期調整を行う
定量的評価を行い可否に見通しを付ける

9月に2回 1回目は9月7日 短秒時(2秒)
外乱を定量的に把握し制御ロジックを組み立て20秒の試験

11月上旬 近日点軌道制御
遠日点で効率よく会合させる事ができる
9月20日軌道面方向の変更 面外方向へ垂直に 近日点から90度が効率的
試験噴射も兼ねる

質疑応答

―重要性 意気込み
なるべく早く金星に会合し観測を実施出来る軌道へ投入したいということで関係者一同全力で万全な態勢で臨みたい
エンジンに関しては地上試験のみで検討してきた 有効にデータを活かしながら


―試験噴射でどのような事が起こる可能性が高いか
打ち上げ直後も試験噴射を行っている 今後に向けて外乱量の変化をきちんと測る 姿勢のゆらぎが起こるだろう 短いので大きな事は起こらない 来週の20秒で姿勢を維持出来るか確立

―時間が短いだけでその他は同じ?
同じ。軌道面に垂直に効率が良い方向に

―どれくらい乱れるか把握したうえで対策を?
フィードバックのゲイン 外乱量で制御パラメーターが決まる。

―OME以外にも外乱を抑えるものを?
RCSスラスタで姿勢を保持

―どのくらいの確立で可能と踏んでいるか
去年12月の加速度などのデータ その通りであれば十分可能だと思っている


―姿勢制御用スラスタ(OME)での軌道投入 重量低減のための酸化剤投棄 駆動時間が減るなどは? 一番影響が出そうな観測は
RCSで軌道制御をしようという決心はOMEを使わずに軌道制御をしようという決心とイコール 酸化剤は2液エンジンのみ(RCS)に使う それをあきらめた瞬間に酸化剤を使う用途はなくなるので少しでも軽くするために捨てる
大気は4日で金星を一周する 気象衛星ひまわりのように同じ角速度で一つの雲の動きを精密に観測(20数時間) 周期がどうしてもそれより長くなる 離れたところから見ることになる 観測データを組み合わせる事で大気の力学をかなり解明できると思っているがもともとひまわりのように正ついして観測する部分はずれてしまう(スーパーローテーション

―金星版ひまわりのような観測が出来なくなった場合 補足的なデータは
同期していない 色々な場所を撮影する事になる スーパーローテーションのメカニズムは共通する部分があると思われるので


―11月の軌道周期修正をしない場合
必ず必要 まさに交点で点で交わらないといけない 周期調整が必要 早いほど効率的 3次元的に合わないといけない


―2秒の噴射 そもそも噴射できない可能性 噴射でさらに破損して駄目になってしまった場合 そこからRCSに切り替えられるかの3点
2液エンジンのバルブを開けるというコマンド 必ず開く*1 燃焼が正常に行われない可能性というのはある 推力が確実に確保できるかどうかは結果を待って評価しないと分からない 2点目、14日の20秒はおそらく実施できないが軌道面変更は何カ所かでできるので更に別の位相で実施するので軌道変更には影響ないようにできる 3点目、10秒くらいで事件が起こった場合にはRCSによる軌道制御に切り替える時間は確保されている そこで判断する 健全に燃焼するかというのを測定するのも大きな目的の一つ


―6月末の報告で逆止弁閉塞 するっと部分の破損が高い 以後分かった事はあるか
それ以降の報告は増えていない

―2つのケース 11月という事で確定?
11月に実施 ただし来年6月にもチャンス 11月に中断した場合は100%完了した事にならないので次の近日点で実施

―今回もブローダウンで?
時間が短いので 高圧側ラッチ弁を開けずにガス側が閉塞しているという前提で試験計画を立てる


―試験噴射の結果はいつ頃発表
バルブがきちんと開いたか・シーケンスが予定通り実施されたかすぐは分かるが推進力・外乱がどの程度だったかデータを詳細にみないと分からないので、オペレーションの結果はなるべく夕方までには報告したいが定量的に銅だったのか、14日や11月をどうするかは時間をかけてじっくり解析した結果を報告したい

―短時間噴射で問題なければ短時間を連続噴射で運用というのも検討しているか
2秒を何度もというわけにもいかないので 20秒・もう一桁上の100秒のオーダー 元々は去年の金星投入では1000秒くらいを考えていたが 100秒オーダーが必要


―9月7日・14日 それぞれ何時頃に噴射を行うか うまくいった場合2015年何月頃になるか RCSの場合はいつ投入になるか
再投入制御は解析する事が多いのでいつ頃となるかは今の時点では答えられない 朝8時運用開始 7日・14日ともに11時50分に噴射開始 アンテナが地球を向いてないのでリアルタイムではデータが得られない 夕方にデータ再生


―14日に生じる速度を軌道傾斜角の変更に利用? 角度は何度変わるか
11月の近日点制御は金星との周期調整 年内のXY方向の接近点を Z方向にもずれているので金星と合うような制御が必要 軌道面制御という それは近日点ではなく9月に行うのが効率的 試験噴射も兼ねる 真下に噴く 傾斜角は0.1度以下? もっと小さい 正確にはあとで (軌道面の端で)縦方向に5000kmくらい変わる 角度にすると1/2000度くらい


―試験噴射では結果がどうであって選択肢の1か2の判明はいつ頃か
今月末か10月はじめ

―試験当日は何が分かるか
予定範囲内で試験が実施されたかどうか


―予想外の方向に軌道変更された場合のリカバリ
軌道面から90度方向に行う キャンセル方向に実施する必要があるが年内であれば近日点制御で吸収できる 年外では今後の軌道制御で実施できる

―熱環境対策 現時点に至るまで不安な点は無いか
今年4月で1回目の近日点があったが状態をモニタして熱的に厳しくない姿勢を工夫したので今回の近日点ではそれが役に立つ そこは心配ということは無い ただし3年4年での断熱材の劣化はデータを持ってないので心配な要素 1・2年内で起こる事ではない


―去年OME噴射で問題が起きた時横推力の大きさはどのくらいRCSに対して
去年の結果でいうとどかんと横推力が発生してそれがどんどん戻っていく傾向 その時RCSの能力は外乱を上回っていた どかんときたのは予測していなかったので制御ロジックが追い付かず大きな姿勢角 外乱になりその結果中断 中断直前の状態ではRCSで外乱を押さえ込んでいた 充分制御出来る量

―今回もどかんときた場合
そこは2秒と20秒の噴射で判断したい 何百秒と噴くわけではないので衛星へのダメージはほとんど無い、問題ない程度と思っている それも含め試験で確認


―仮に破壊があったとして それが軽微であった場合 スラスタで打ち消しながら2液で持って行く事は
それはできると思い確認


―(遅刻してきたので繰り返しだったらすみません)11月に400秒とあるが 1回で400秒ではなく小刻みにやるやり方もあると聞いたが
11月に400秒相当 260m/s相当 小刻みでやる方がよければ小刻みで そこはまだ決まっていない

というわけでいよいよ明後日! もしOMEにこれ以上の問題が起きてもRCSで対応できるだろうという頼もしい言葉も聞けましたが、なんとか目標の軌道に持って行きたいですね。
あと大塚さんのレポに配付資料も載っています。

*1:2液は混合した時点で燃焼反応が起きる