宇宙開発委員会 調査部会(平成23年)(第2回) 議事録 [宇宙開発委員会]

「あかつき」のOME噴射試験後の議事録。

JAXA(稲谷)】 (中略)この右側の状態、あるいはこれから破損が起きて、例えば、表面の熱制御材を破るのではないかという懸念を頭に描きながら、試験噴射の前後の、探査機の近いところの温度履歴をウオッチしながら試験を行いました。その結果は、幸いなことに、特に大きな熱制御材がなくなったとか、非常に特性が変わったということを示す温度履歴を示しているものはないと今は考えております。 したがいまして、おっしゃるとおり、リスクはあったのですが、我々としてOME噴射に踏み切ったのは、そのリスクを乗り越えてでもやるベネフィットがあるだろうと、先ほど申しましたようによい推進性能が得られれば、より金星探査の機会が得られるだろうということで、その考えに基づいて判断をして、試験噴射を行いました。
 繰り返しますが、右側の図の状態になったのは、2秒と5秒の2回だけだと考えており、長時間さらされたものではないとご理解いただければと思います。今後はRCSを使う運用でよいと認めていただければ、右側の図の状態で運転することはありませんので、我々としては、この状態をさらにつくるということはしないと考えています。
 後段の酸化剤投棄のコンタミですが、これについては...。

JAXA(中村)】 私から、お答えいたします。一番心配されるのは、光学系、光でものを見るところのレンズ系にコンタミネーションが起こるということですが、これは、各部の温度等を検討した結果、温度の制御を行い、ミッション系のカメラや、姿勢系のカメラの温度を上げておくことで、コンタミは避けられるであろうということを検討し、試験のときには、その温度を上げた状態で調べてみました。それから、カメラは、スイッチがオンされている状態で、星を見ますと、どの程度の光量が変わるかがわかりますので、まずは、最初の試験運用で60秒間、今日噴きましたが、その状態でどの程度のコンタミを避けていられたかということは、評価ができると考えております。基本的には大丈夫であろうと考えています。

OMEの試験噴射ならびに酸化剤投棄によるコンタミなどのリスクはクリアしているそうです。

JAXA(澤井)】 結論から申しますと、問題ないと考えております。上流のヘリウムタンクにそもそも載せているヘリウム搭載量ですが、燃料・酸化剤両方の推薬をすべて出し切るまで押し出せるという前提で、それに対して十分マージンを持った状態でヘリウムを搭載しております。
 さらに、酸化剤を投棄するときに、基本的には吹き抜けさせないということを前提としておりますので、酸化剤側は全量を使いました、燃料側も全量を使いますという状態になっても、規定の圧力で押し切れるようになっています。

【中谷特別委員】 燃料の使い方に関する質問です。遠金点をどうするか、あるいは傾斜角をどうするかは、燃料が減ってしまうと、RCSの本来の使い方として姿勢のアンローディング、つまり金星軌道に入ってからの姿勢運用に制約が出るので、それとトレードオフするということでしょうか。

JAXA(稲谷)】 はい。今おっしゃっているのは、幸いにして金星軌道に入った後で観測をするときに、姿勢運用のアンローディングのために、RCSの燃料を残しておく必要があるのではないかということで、おっしゃるとおりだと思います。
 そこも観測軌道にどれぐらい滞在をして、観測ができるものが何であるかということと、望ましい軌道に入るためにどれだけ燃料を使うかということのトレードオフになるのだろうと思っていますので、いろいろなトレードオフの項目は残っていると考えております。そこはさまざまな観点からサイエンスの成果を最大化するために、あらゆる自由度を使って我々はやりたいと考えております。

やはりアンローディングに使用する推進剤をどこまで残すかで観測期間とのトレードオフになるようです。