『「はやぶさ 遥かなる帰還」オフィシャルJAXAツアー』に行ってきてもらった!(←?)

はい、実は当選していたのですが都合により行けなくなってしまいました。非常に残念だったのですが、ここからまさかの展開が。

という冗談のやりとりが展開されてからものの数時間でこれが実現してしまうこととあいなりました。ちなみに東映JAXAのご担当の方々からしっかりOKを頂いております。いやはや正直かなりしょげていたのですが、この超展開で逆に何だかワクテカしてきた!


以下からが今回代理で出向いて頂いたすばるさん提供のレポートであります。読み応えありますよ!(引用符部分は岩本塚のコメント)



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2012/01/14(土)、東映はやぶさ 遥かなる帰還」JAXAツアーに行ってきました。
※本来当選されていた岩本塚さんがおいでになれなくなったため、代理取材としてすばるが伺っています



今回のツアーでは普段は見学できない部分にも入るため、一般見学と異なる入館バッチを着用。


一部の自販機はJAXA仕様。残念(当然)ながら販売されているのは一般的なドリンクですw






寒空の相模原キャンパス。1Fの展示ホールでは「はやぶさ」運用にまつわるお札や著名人の色紙、ファンの応援創作の一部などが展示中。



「千のあかつき」のごく一部も展示されています。「あかつき」、めげるなよ。

どこかに自分の送り込んだあかつきくん一個小隊も混じっているはずです。

ツアー説明


ツアー参加者への事前説明は2Fの会議室。過去に数々の映像・写真で目にした場所に実際に入れてwktkしていたら

東映広報氏と宇宙研の阪本教授登場。

うわ、この部屋って会見などでよく目にするあの部屋ですよね! なんとうらやましい!

そして細田氏。シレっと参加者席に紛れ込んでいるのがIES兄クォリティ。

IES兄さん何でさりげなくそんなところにw っていうか兄さんも阪本先生と一緒にエスコートを!? なんという贅沢空間…

はやぶさ 遥かなる帰還」の15分間ダイジェスト版も上映されました。
照明などは映画として映える絵作りになっていますね。渡辺謙氏、山崎努氏をはじめとするキャストの渋さもあり「重厚さ、骨太さ」を覚える作風かと思います。
映画は映画として面白くあるのがまず大事なので、事実と比較するのはヤボってもんですw

「ところで皆さん、お帰りの時間が決まっている人っていますか?一応15時に終わる予定なんですが、多分30分くらいは長引くと……」と、ツアー開始前に堂々の延長宣言をする阪本教授。
ご自身が30分と見込んでいるなら実際は1時間くらい延長ですかね。私は嬉しいですが、東映のスタッフさんたちがいっせいに身を固くしてましたぜ。

やはり東映版は非常にドラマチックな仕上がりになっているようです。期待ですね。しかし開始前から延長宣言とは…いや、常日頃から延期で訓練されている我々としてはよくあることの1つに過ぎない!

展示室

まずは日本の宇宙科学の歴史から。


  • 1945年、敗戦によって航空技術研究が封じられた。
  • 1955年にお許しが出るようになりロケットの研究開始。主要な人物は当時東大生産技術研究所に所属していた糸川英夫。後年はバレエをするなど変わった人。
  • 実は宇宙研は日本で最初に発射されたロケットを所持していない。宇宙研らしいw
  • ここにあるペンシルは当時クズ鉄屋さんが拾っていたもので、現在は展示用にお借りしている。
  • そこらに大量にあった丸棒をくりぬいて作ったものなので太さが決まるが、ジャンク品なので大量に実験できる。重心や尾翼を変えながらデータを収集。
  • 宇宙研には昔から変なところ……ユニークなところがある。
  • お金がなくてもまずジャンクなどで作ってしまう。やがて人が集まってお金が集まるという感じ。


  • 最初のターニングポイントは1970年の「おおすみ」打上げ成功。本体に見える黒い部分はモーターですw

おおすみさんは帽子が本体。



  • 次のターニングポイントが「さきがけ」「すいせい」によるハレー観測。
  • 日本としては「地球周回軌道を脱出できるロケット」「(地球周回ではない)探査機」「深宇宙アンテナ」「軌道制御システム」という4つの大きな新規開発が必要だった。
  • この時は各国が「ハレー艦隊」を組んだ。当時冷戦中だった米ソでさえ情報を共有するという国際連携。それを称え、時のローマ教皇が各国ハレー艦隊関係者をお召しに。
  • 宇宙研はこんなんばっかり。「本当にやるのぉ!?」と言われるようなことをする伝統。
  • 1989年の「あけぼの」はまだ現役。ご自宅の電化製品が23年ももちます?「あけぼの」はバン・アレン帯をくぐりながら「人類の宇宙開発史」の約半分の年数を生き延びてます。
  • 大きなロケットだけではなく、気球や小型観測ロケットも使っています。気球は以前は大船渡で上げていましたが今は北海道の大樹で上げています。北海道では明け方にUFOの目撃が増えたらしいですが、気球のせいですね。UFOはJAXAの手によるのです!

JAXA謹製のUFO。


  • ハイリスクな実験や学生のトレーニングという観点からも気球や小型衛星のミッションは便利。小型衛星は「フルオーダーからセミオーダーへ」。バスを共通化して「安くて早くてうまい(信頼性の高い)」ものにします。

イプシロンもいよいよ来年。


ついで「はやぶさ」熱構造モデルによる説明。

  • 金色のはポリイミドフィルムにアルミを蒸着したもの。ポテチの袋みたいなもの。それを11枚重ねにして「隙間に真空がある」(=魔法瓶の原理)状態にする。それによって +110℃ 0 -150℃という極端な温度環境をマイルドにする。
  • はやぶさ」はパドルの端から端まで 5.7m。燃料込み510kg。「かぐや」が3tでしたから「はやぶさ」は非常に小さくて軽い。

なるほど、ポテチの袋ですか。こんなわかりやすい説明の仕方があったとはw



  • 細田「手を前に出してふーっと息をふきかけて下さい。イオンエンジンの出力はそれくらいです」
  • 打上げは瞬発力が必要なのでロケット、打上げた後は効率的なイオンエンジンを用いた。姿勢制御系に問題が起きた時にはキセノンを生のままぴゅーと……
  • 細田「ぴゅーなんて音しませんってw 超燃費のいいエンジンで超燃費の悪いことをしたんです。暖をとるのに札束を燃やすようなものですよ」

キセノンスラスタには國中先生大悶絶だったそうですよね。あの小さな中和器から噴射してよく姿勢を回復できたなあと思います。


途中、子供さんのスイッチ操作により「奇跡のエンジン4基稼働」キター!
細田氏曰く「プラズマ点火だけなら4基同時できましたよ。グリッド用電源が3つだから『4基同時加速』はできなかったけど」
阪本教授「はやぶさ2の予算は要求73億に対し30億。間に合わないかも……」
細田「(間髪入れず、真剣な目で)現場は全然諦めてないです!

うむ。


東映広報氏「東映も1,200万円という大金をかけて実物大模型を作りました。02/01から02/10の間、テレビ朝日のアトリウムに展示されます」

めちゃくちゃ気合入ってますね…どこまで作り込んだんだろう。


阪本「ここに宇宙科学とは全く関係ない『お札』があります。税金は使ってませんよw「はやぶさ」は色々ありましたので、スーパーエンジニア川口が二礼二拍手一礼の世界に……。」

ありがたやありがたや…

M-3SII&M-V

M-3SIIは「さきがけ」「すいせい」を上げたロケット。両方とも固体燃料ロケットです。
固体ロケットというのは(出力調整できないので)アクセルをベタ踏みしたまま突っ走って、車庫入れ終了と同時にガス欠になるようなものです。


ここにあるM-Vはマイナーチェンジ前の姿。段間を覗くと燃えた跡が見えます。匂いもしますよ。

アクセルの例えはとても解りやすいですね。

桜の木

東映広報氏「この木は劇中に出てきます。夏川結衣さんが渡辺謙さんと一緒に歩くシーンです。撮影は夏場だったので、桜の花は美術さんの仕事です」
阪本「いやあ、あの暑い時期にどうやって桜を撮ったんだと思ったらw 確かに周りの木が青々としてますねw」

一連のはやぶさ映画は夏に撮影が行われましたから、つまりそういうことですよねw

特殊実験棟

宇宙農業サロンに新しい草刈り機が導入されました!
阪本「前にDASH村でも放映された実験(植物による除染実験)に使うんですよ」

なんでそんな秘密兵器がそのへんに転がって…いや、それこそがISASだった。


今回は例年の特別公開で見せてもらえる密閉式テストスタンド実験室ではなく、その隣の低密度風洞室を見学。ここで実験しているのは


μ20!

室内にいらっしゃった西山准教授に質問させて頂きました。
Q:現在の稼動時間は?
A:1万時間。シミュレーションなども併用するとグリッド部分は十分な時間もつ見込み。
  そのため、グリッドよりも寿命が短い中和器の試験に注力する方針。
Q:隣の部屋に比べてポンプが静かですね?
A:隣の部屋のはヘリウムで空気を凝結させて真空引きするタイプ。
  こっちは油拡散ポンプといって、ヘリウム式とは逆に油の高温蒸気を使う。
  蒸気の流れで空気も引き出されて真空になる。だから後ろ気をつけて下さいね、熱いですよ。
Q:μ20の磁石って電磁石?
A:永久磁石。μ10はサマリウム=コバルト磁石でμ20はネオジウム磁石。


Q:タンクの裏のこの「18回転」とか「25回転」って何ですか?
A:その回数だけ回せば密閉できるってことです。
西山准教授「μ20はDESTINYミッションで使用する予定です」
イオンエンジンでの黄道面脱出、期待してます!

うおおμ20! 美しい青。あと西山先生! なるほどこっちのチャンバは熱いんですね。うろ覚えですが、何年か前の特別公開でパルス型プラズマスラスタの展示やってたチャンバ…かな?自信なし。DESTINYは非常に野心的な工学試験プロジェクトであり大期待。

飛翔環境試験棟

ここは撮影禁止。

まずはベピ・コロンボMMOのフライトモデル。2009年特別公開で「あかつき」(当時は PLANET-C)FMが展示されていた部屋ですね。
一次噛み合わせ試験が終わって解体作業中でした。この後、各機器はメーカに戻って配線の固定などを行い、再び組み上げて総合試験になるそうです。
同じ部屋にあったのが SPRINT-Aのバス部。バス部だけなので本当に「箱」状態。
この部屋に入るには無塵衣着用とエアシャワー使用が必要とのこと。

次いで「あまり誇らしげにお見せできるものではないのですが」と阪本教授が前置いたのが、LUNAR-A の FM。え、まだ残っていたの!?てっきりもう全部解体済みだと思っていたのですが、フレーム部分とタンクとおぼしき部分は残っていました。

続いて振動試験などが行われる部屋にあったのが ASTRO-H の鏡筒部分。望遠鏡部分と分光検出器の間は 10m 近くあるものの、その間はトラス構造があるだけだそう。

うおっ、LUNAR-Aのフライトモデル!? すげえ… LUNAR-Aは残念ながら月へ向かうことが出来ませんでしたが、その血肉はIKAROSなり今も内惑星軌道を飛んでいます。

構造機能試験棟

ウハウハで写真を撮りまくる参加者一同。ここらへんから東映のスタッフさんたちが時間を気にし始める(苦笑)。


小型月着陸実験機(SLIM)実物大模型

SLIMはこんな形状ですが一応SPRINTシリーズ候補です。魔改造


大型展開アンテナ試験

これってASTRO-Gで使われていたものなのでしょうかね。


IKAROS振動試験用台座



エタノールロケットかな?



M-Vフェアリング。コルクが使われているのは知っていましたが、阪本教授によるとコルクはアブレータとしての役目を果たしていたのだとか。すみません、知りませんでした。


開頭用フランジボルトもついてるよ!

エタノールロケットは初見ですね。コルク部材ってこういう構造だったのかー。




伸展ノズルイカス!

総合研究棟

次に向かったのは「はやぶさ」試料受け入れ設備が入っている、「キュレーション棟」とか「JAXA棟」と呼ばれる建物。

「窓の外からなら撮影いいですか」「いいですよ」とのことで

クリーンルームに入る方は、この部屋のロッカーに上着、貴重品、持込禁止物などを収納してください。 惑星物質試料受入設備責任者」
キュレーション設備って1階にあったのか!


で、

恐ろしいことに、

中に、

入れてしまった次第。さすがにキュレーション関係者限定エリアは入れるわけもない。(おそらく阪本教授のセキュリティカードでは入れないと思われます)

うおお、キュレーション棟(のロビー)にまで!

研究・管理棟

総合研究棟2Fから渡り廊下を抜けて研究・管理棟に。

JSPEC統括リーダ室。以前は川口教授が、現在は國中教授が執務している部屋ですね。
言うまでもないことですが國中教授は電気推進がご専門でして、この部屋のドアには

カブトエクステンダー(マイクロ波放電式イオンエンジンとソーラーセイル搭載)が「ECRイオンエンジン」の付箋付きでしっかり飾られておりました。
……なんでご存知なんですか國中教授。

僭越ながらたった今知りました。一体どこから仕入れてこられたんでしょうか…


年月を感じさせる「あけぼの」データ処理室。


「初ひので」はファーストライト記念かな?


すざく」と、右手に「あかつき」。

「あけぼの」も先ほど言われていたとおり23年目なんですよね。もうすぐ四半世紀…最長老ですなw


ここからは撮影禁止。

はやぶさ」運用室&管制室

※面積的に余裕がないことと巻き巻きムードになっていたことから「チラ見」です

管制室は廊下からガラス越しに拝見しました。
臼田のスペクトルアナライザは常に正面スクリーンに投影されるのではなく、必要に応じて投影するとのこと。
おなじみの「飛行安泰」ステッカーは健在でした。
また、イオンエンジン連続運転時間記念ステッカー(通称「撃墜マーク」)もガラスに全て残っていました。時間が遡るに従って褪色していました。打上げから数えて9年近くなりますもんね。

廊下には今も新聞や応援イラストや手紙が貼られています。「おつかいできた」もちゃんと残ってましたよ。

運用室。決して広くはない部屋に参加者が一気に入ったため、じっくり見ることは叶いませんでした。
(……ええ、入れたんです。岩本さん、その……本当にごめんなさい……)

  • はやぶさ運用終了につき機器の電源を落とすこと」という主旨の張り紙
  • 2010/06/13のまま残されている(「永久保存」とは阪本教授談)運用ホワイトボード
  • テーブルの上に置かれた寄せ書きつきの「はやぶさ」擬人化イラスト(ファンから送られたもの?)

埃っぽい空気と共に私が見ることができたのはそれだけです。

か、管制室と運用室にまで入れたとは…(゚Д゚)
なんという大サービスっぷり。これに当たりながら行けなかったって…うおおおおおあああああああああああ

終わりに

ツアーは以上で終了。東映さんからはお土産にプレスキットと前売特典の「タッチダウンペン」を頂きました。岩本さん、後日お送りしますね。
拙いレポートですが少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


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すばるさん、突然の交代にもかかわらず素晴らしいレポをご提供頂き本当にありがとうございました! 読んでいるだけで面白く、なんともうらやm…充実したイベントで、想像以上に内部まで見せて頂けたようで何よりです。(あとお土産楽しみにしていますw) なかなかこういう機会ありませんものね。今回は残念ながら参加できませんでしたが、このような場をご用意頂いたJAXA東映のご担当者様にもお礼申し上げます!
(文責については最終的に編集を行った岩本塚が負うものとします。)

追記

映画観てきたのでこちらもアップ↓