JAXA宇宙飛行士活動レポート 2012年4月 [ISS/JAXA]

今回から3人の新宇宙飛行士が自ら活動報告を執筆するようです。

6月のNEEMOに向けて、準備訓練が行われました。今回のミッションでは、将来の小惑星探査を模擬した、さまざまな作業が計画されています。そのため、小惑星探査の重要性を学んだり、小惑星での船外活動で使用するツールの使用法について訓練を行ったりしました。小惑星探査の講義中に感じたのは、日本は小惑星探査の分野において、世界一の先進国として認められているということです。講義の中でも、「はやぶさ」の成果が数多く使用されていました。これらの成果が無ければ、有人小惑星探査の準備を開始することすら困難であったと思います。

大西さんに次いで油井さんがNEEMOに参加しますが、その中では有人小惑星探査の模擬訓練もあるんですよね。やはりこれら小惑星探査の成果は将来の有人深宇宙探査に欠かせないようです。

それぞれのエンジンに1つずつ付いている発電機のうち、右側の発電機が作動していないことを示す警告灯が点灯しています。整備員の指示に従って、Scottがトラブルシュートを試みますが、残念ながら復旧しません。このままの状態では出発できないので、仕方がありませんがエンジンを止めます。

実際には発電機が1つ使えなくても、残りの1つから電力を全てのシステムに供給することは可能です。さらには、両方の発電機が壊れても、最後の砦として飛行機には大きな電池が搭載されているので、その電池から飛行に最低限必要な計器や機器に電力が供給されるようになっています(ただし20分ももちません)。

要するに、重要なシステムには何重ものバックアップがあるわけで、だからこそ飛行機は安全な乗り物なのです。

飛行中の安全を確保するための冗長系なので、飛べるから飛ぶというわけにはいかないんですよね。原因によっては他の部分に波及する可能性もありますし。

今月は、宇宙ステーションが、さまざまな機械をいっぺんに動かすことでオーバーヒートしないように冷却をする「外部冷却システム」の試験と、毎日の生活を管理するための「デイリーオペレーション」というシステムの試験を受けて、見事に合格することができました!

とくに、デーリーオペレーションの訓練では、食料が余ったり、逆に足りなくなったりしないように、どうやって管理したら良いのか、ゴミはどうやって捨てたら良いのか、メモ用紙や鉛筆、毎日着るTシャツ、タオルやトイレットペーパーなど、生活にはなくてはならない品物が、一体どうやって宇宙ステーションに運ばれ、保管されているのかという勉強をしました。

なんだかひどく生活感を感じる訓練科目で、映画に出てくるような宇宙飛行士の格好良さは感じませんが、「宇宙で生活をする」ということを現実感を持って、あらためて考えさせられる内容でした。

宇宙ステーションの「家事」みたいなものでしょうか? ちょっと買い出しに…というわけにもいきませんし、非常にシビアですよね。