HTV「こうのとり」3号機結合後記者会見 起こし

いやもう1か月以上前のものですが実はまだタイムシフト見ていなかったので、視聴ついでに起こさせて頂きました。なんとか離脱前に間に合いましたw ソースはいつも配信して下さっているNVSさんから。以下敬称略。

内山フライトディレクター:7月21日に打ち上げられたこうのとり3号機だが、6日間の飛行を終えて日本時間7月27日午後9時23分にキャプチャー、機体の結合が翌午前0時22分。電源などの接続が午前2時30分。今のところ非常に順調なのでこのまま計画通りに進むものだと思っている。
小鑓プロジェクトマネージャー:昨日の夜から朝早くまで付き合っていただき有り難うございます。HTVには4つ関門があると思っているがその2つ目を越した。最後の大気圏再突入まで気を緩めずやっていきたい。

質疑

―お二人へ。ドッキングまでの率直な感想、初めて日本人滞在中にHTVを待ち受けて日本語で星出さんからの労いの言葉もあったがどのように感じたか。
小鑓:3号機になり少しは楽になるかと思ったが回を増すごとに緊張感も増した。新しく積んだ国産機器での打ち上げ直後の通信・姿勢の確立、まずほっとした。1号機でのスラスタ温度上昇、今回の国産スラスタはどうなるか気を揉んだが非常にスムーズで安心し嬉しく思う。ラッキーにも星出さんがいる時にHTVが飛んで来て、画像が見えなかったが星出飛行士とアカバ飛行士が協力してキャプチャして非常にいいミッションだった。


内山:荷物を届けるのが仕事なので、一番の難関であるキャプチャ・結合を終え非常にホッとしている。今回新しい国産機器を載せて本当に動くのか運用チームは常にトラブルシューティングを考え訓練しているが、余計にそういう準備をしていて夜中に目が覚めては「ここはこう考えないといけないな」と悪くいうとうなされたりしていた。本当にホッとしている。星出飛行士はHTVが飛んでる間も管制室に合わせて3回電話をくれ、キャプチャを迎える日の朝も「疲れてませんか」「是非今日キャプチャ頑張りましょう」という会話を交わした。見事キャプチャ成功して「素晴らしい機体」と。ISSの共通言語は英語だが、日本語でのやりとりをちょくちょくできるのはやりやすかった。「非常にこうのとりが綺麗で見とれすぎて作業の手が止まってしまう、気が散らないように作業するのが大変だった」というようなメールもくれた。


―メールとは星出さんから内山さんに?
内山:私と皆宛に飛行中何度か、写真を添付したり。


―今後の予定 17:05にハッチオープン・入室? 誰から入るか?
内山:入室は準備があるのでハッチオープンからプラス10分くらい。こちらから誰が先というのはなく、通常みんな入る。


―荷物をハッチを通じて運び出すのはハッチオープンすぐ?
内山:中にダストがないかなど安全性確認をまず行う。その後すみやかに開梱作業が始められる。


―健康管理担当がいらっしゃるだろうが、交信や映像をご覧になって星出さんの様子は元気そうだったか?
内山:電話やメールのやりとり、管制での画像のやりとり、元気いっぱい、ワクワクしてる部分もあったろうが元気だったと思う。
小鑓:非常に楽しんでやっているなと。表情も非常に笑顔。これで大丈夫かなという気がした。


―今日作業が終わったのは何時頃だったか。超勤を続けた理由は。
内山:まだ結合作業をしている。計画通り。もともとキャプチャする日は長めにスケジュールを引かれている。一旦休んで翌日ハッチオープン作業を続ける。


―最初に取り出す荷物は何か決まっているか。
小鑓:詳しくは把握していないがNASAの方で作業は管理されている。2号機の時は食料。チョコレートなどを出しているのが写っていた。


―入室準備に向けた作業は終わったか? 一旦休んでからまた作業があるか?
内山:ハッチオープン前に照明を付けたりファンを回したりという作業は残っておりほとんど開けるだけ。接続作業はほぼ終わっている。


―小鑓さんへ。こうのとりのあり方。2号機まではシャトル引退後の存在意義が高まったが、民間輸送ができるようになり、今後どうあるべきかという考えは。
小鑓:荷物を運んでなんぼなので、与えられた任務をこなしお客さんの荷物を運ぶのが一番大事。NASAバックアップがあったといえ一民間企業が輸送を行ったのは素晴らしい。HTVでしか運べないものがありその特徴は色褪せるものではない。大きな与圧物資、暴露物資。ドラゴンも少し運べるが我々は暴露パレットを持っており色々なものを運べる。優位性は維持されていると思っている。


―今後の有人に向けての取り組みについての思いは
小鑓:こうのとりは輸送・衛星・有人の技術を集大成したものなので、その先に有人を是非やっていただきたい。回収機の研究開発を行っているが、政策としてGOがかかればすぐできる準備をしているつもりなので是非決定して頂きたい。


―まず一段落おめでとうございます。今号機のトラブル等はあったか
小鑓:全てパーフェクトというわけではなく1つ気になった事があった。推進系の点検をしている時にA/B冗長系のうち片系のバルブが駆動出来ない不具合があり原因調査を行った。バルブの駆動装置に問題があるという事以外に確定的な事はまだ言えない。B系が使えない状況なので片系で接近運用を行った。NASAと了解のもとで行ったので安全上の問題は無い。


―予備系が使えなかったという理解でいいか
小鑓:そうだ。


―4号機以降改善していこうという点はあるか。
小鑓:国産化含めて3号機で一段落のつもりだったが今言ったとおり原因究明していかなければならない。手順の面でも改善点がいくつかある。


―今回サプライズの貨物は何か積んでいたか
小鑓:積もうとしたが時間が間に合わず。


―小鑓さんへ。4つの関門のうち2つ完了とあったが、3つ目と4つ目は。トラブルは3号機特有の部分か、HTV共通の部分か。
小鑓:3つ目は8月5日から暴露ペイロード移設作業。ステーションのアームと「きぼう」のアームの協調作業なので結構大変。多目的暴露パレットというユーザーフレンドリーなものを使っているのでこれがちゃんと動いてくれるか、これが3号機の特徴的な関門。パレットを取り出し「きぼう」船外実験プラットフォームに取り付け、NASAのスキャンテストベッドはトラスに付ける。これが結構大変。4つ目は安全なリエントリ。国産エンジンを長秒時燃焼しないといけない。


―小鑓さんへ。B系バルブの話だが、RCSの方の配管に関するもの?
RCS・メインエンジン両方にA/B系があるが、B系推進剤を送るラインのラッチバルブがONできない不具合。


国産化したスラスタとは無関係?
小鑓:全く無関係。いわゆる配管系。バルブを駆動する電子装置と見ている。


―4番目の関門の安全なリエントリ、国産のエンジンはどういうことか
小鑓:最後の軌道離脱のバーンは長い時間燃やす。


―把持は未明の囲みではインド洋上空とのことだったが大体の位置は出たか
内山:時刻は出ているので計算すれば出てくるが…
小鑓:たぶん内山は忙しくて他の細かいデータを見ていたが我々は大きなモニタで見ていた。三宅がインド洋だと言った。たぶん間違いない。


―2つ目の関門、星出さんに荷物を届けた事の感想を改めてうかがいたい
小鑓:国産化部品がありある意味初号機と同じくらい緊張していたが、彼に掴んでもらいこれから作業してもらうこと、日本語で通信できることが非常に嬉しく思っている。昨日一昨日で男女のサッカーが勝ってくれて今日これから開会式があると思うが日本のプレゼンスを示せたのではないかと。
内山:飛行3日目や4日目にISSの下をHTVが通るタイミングがあるが、どの方角に見えるかなどしきりに聞いてきて、実際は見られなかったそうだが、キャプチャ前日にも明日になれば見られるのにまだ「見たい」と言っていて、こんなにもこうのとりを待っていてくれる宇宙飛行士は今までいなかったのではないかというくらいだった。そんな星出飛行士に無事届けられて非常に安心している。
小鑓:星出飛行士についてひとつエピソード。与圧区画の中に黙って入って「HTVで有人はできるんだ!」というところを身をもって示したい、と昔言っていた。そういう意味でも彼が掴んでくれて非常に嬉しい。


―星出さんのキャプチャの作業ぶりはどうだったか
内山:先ほど管制に作業中のハイクオリティな画像をDLしていて、非常に安定していて地上とのコンタクトを密に取って着実に進めているいる印象を持った。待ちに待ったこうのとりをこれからキャプチャするんだという楽しそうな表情をしていた。


―先ほどお話しがあったが、星出さんはサッカーが勝ったことをご存じだったか。
内山:直接オリンピックに関する話はしていないが当然情報は簡単に得られるので知っていると思う。


―たびたび電話していたという話だったが、無線通信?
内山:普通の電話。我々の管制の番号を教えてあるのでそこに宇宙ステーションからかけてくる。NASAは通さず直接。


―キャプチャー作業のメインはアカバ飛行士で、星出飛行士はサポート役との事だったが具体的にはどのように
内山:キャプチャ作業は2人で行う。3人目にサポートがいるという体制なので2人がメイン。アカバ飛行士がロボットアームを操作し、横で星出飛行士がコマンドパネルをメインで操作。HTV退避や待機というコマンドを送れる。それに加えHTVの状況を逐次モニタしながらキャプチャできるポイントまで誘導していく作業を担当。


―実際にコマンドパネルで何か指示を出したということは
内山:幸いにも何もトラブルは起きなかったのでコマンドパネルを押したのはチェックアウトの時だけ。問題なくコマンドが通るかどうか通信確認。


―具体的に誘導とはどのような作業か
内山:基本的には地上からがメインだが、ISS下10mまで近付くと一旦無制御状態にし、その状態でロボットアームで掴む。掴んだ瞬間に姿勢を立て直そうとHTVが動いたら大変。無制御状態にするまでは地上がメイン、キャプチャーしてから結合する作業はクルーがメインで担当するという役割分担。
小鑓:補足だが、安全上NASAがキャプチャ時にオーバーレイという画像処理をしてHTVがどこにいるか常に監視している。安全な位置に来たらGO。そのオーバーレイの監視は星出飛行士が担当。
内山:ディスプレイの画像の上にオーバーレイという線が描いてあり、今の距離であればこのぐらいの大きさでこの位置に見えるというようなナビ。ISS下500mからHTVが上がってくる間、我々が地上で受け取るHTVの状態とISSから実際にそう見えるだろうという想定と違いが無いか常に確認しながら10m下まで持っていく。


―車の助手席でナビしているようなもの?
内山:助手席というか、2人でやるキャプチャ作業
小鑓:電車でいうと運転手と車掌どちらが偉いかみたいなもので、実際車掌さんのほうが権限を持っているので指示する方が偉いと考えればいいかと。


―キャプチャ後に歴代FDが集まって談笑されている姿が見受けられたがどのようなお話を
内山:歴代とおっしゃられたが皆さん現役。24時間3交代でカバーしているので他にもFDはいる。これまでの準備期間、この6日間の飛行色々苦労もあったのでとりあえずよかったねという話を。


―小鑓さんへ。
ロシア補給機に比べ打ち上げてからISSまで日数がかかっている印象だが、どのような要因か
小鑓:有人のソユーズは人を運ぶのでなるべく早く運ぶのが第一。ISS側の寝起きは世界標準時サイクル。ソユーズはステーション側が対応してなるべく短くするようにしている。日本で初めてこういうものを作るということもあり色んなチェックをしながら進む。標準は5日。今回は長かったが。もう一つは位相調整能力、例えばドラゴンは打ち上げ日が3日に1回で毎日は打てないが、そのようにすれば短い期間でステーションに辿り着ける。多分内山のほうが詳しい。
内山:補足すると、ロケット側への影響としてある打ち上げ日に対しISSがどの位置にいても7日目に到着するということで天候等で延期があっても1日延期で打ち上げられる。ドラゴンだと3日で到着するために3日に1回となる。打ち上げ日に対しISSがあまりに遠いとその期間では追いつけずある場所にいるタイミングでしか打ち上げられないという制約がある。HTVは何かあっても1日後に打ち上げられる、到着日は変更しないという日本人らしいインターフェイスを守っている。今のところ日数として5〜6日かかっているがこれは技術的なものではなく、3日で届けなければならないとなればロケット側とISS側にお願いして運ぶ事は可能。


―ロシアのプログレスがドッキングに失敗しやり直すという事があったが、これはこうのとりとは一切共通する要素は無いか
内山:HTVが到着するちょっと前にプログレスが新しい通信装置の試験を行った。一旦ISSから離れて2日後に再ドックする試験だったがロシアといえど上手くいかなかったという事があり、ロシアとしては早くリトライしたかったがHTV到着が迫っているので一旦待機しHTVを先に到達させた。システムは全くHTVとは異なるものなので直接干渉はない。

推進系バルブの不具合があったそうですが、どうやら従来品のものということで今回国産化したスラスタによるものではないとのことで胸をなで下ろしました。まあそこは関係なくしっかり対策が必要ですが。あとISS到着までの日数は打ち上げウインドウのサイクルに関係してくるものだったんですね。ISS到着までは地上側が運用するわけですので、ISS側の負担としてはこちらのほうが軽くなりますね。他方有人となると多少運用上の負担が増えてもクルーの負担軽減が求められるので、このように使い分けるようです。なるほど。