北朝鮮、人工衛星「光明星3号」の打ち上げに成功 [sorae.jp]

!? え、今日!?

にある西海衛星発射場から離昇した。北朝鮮が事前に予告した通り、ロケットは第1段を黄海に、第2段をフィリピン海に投棄しつつ飛翔、その後北朝鮮のメディアは「打ち上げに成功した」と報道した。

 それを裏付けるように、軌道上にある物体を管理しているアメリカ合衆国宇宙監視ネットワークは新たに軌道に乗った3つの物体を検知、北米防空司令部(NORAD)も「軌道に到達した」と発表した。その物体にはそれぞれ2012-072A、2012-072B、2012-072Cという名前が暫定的に与えられおり、このどれか一つ、恐らく2012-072Aが「光明星3号」で、残り二つは銀河3号のロケットの第3段と、その第3段と衛星とを結合していた部品であると思われる。

 今回打ち上げられた光明星3号2号機は、今年4月に打ち上げられるも失敗に終わった光明星3号と同じく地球観測衛星であるとされ、また寸法も1号機と同じであるとすれば約1.0 x 0.5 x 0.5mの直方体の形をしており、質量は約100kgであると思われる。この規模の小型衛星であっても、国土の状況の把握には使うには十分な性能の観測装置を搭載する事は不可能ではない。

 投入された軌道は近地点高度が約492km、遠地点高度が約585km、軌道傾斜角は97.4度で、これは太陽同期軌道と呼ばれる、地球を観測するのに適した軌道に近い。また北朝鮮自身が事前に公表していた目標の軌道ともほぼ一致している。

ついに成功しましたか。既に米軍のTLE情報にも上がっているようです。いやあしかし延期とか解体とか一体何だったんでしょうか、完全に出し抜かれましたね。アラートは正確に機能したようで何よりですが。

専門家“北朝鮮の技術レベル非常に高い” [NHK]

北朝鮮の事実上のミサイル発射について、ロケット工学が専門でJAXA宇宙航空研究開発機構的川泰宣名誉教授は「落下物の情報や何らかの物体が軌道に達したという情報が正しければ、1段目と2段目、3段目まで正常に燃焼し、軌道速度まで達したところまではすべてうまくいったとみられる」と指摘しています。そのうえで、北朝鮮の技術レベルについて、「3段目までうまくいったことを考えると、非常に高いレベルまで達したと言える」と分析しています。

北朝鮮の「人工衛星」の飛翔経路予測 [Garbage Collection]

第1段、第2段が予定通りの海域に落下したにもかかわらず軌道傾斜角が97.4度になっているということは、第3段点火後に西にむけて軌道を修正した可能性が高いと思われます(詳しい説明は下記エントリを参照してください)。これが正しければ、北朝鮮の衛星はほぼ理想の軌道に投入されたということを意味します。若干遠地点高度が高いですが、衛星にスラスタがついていれば修正はさほど難しくありません。

しかもどうやら3段目でドッグレッグターンをキメて太陽同期軌道(に極めて近い軌道)に投入したようです。太陽同期軌道とは年間通じて太陽に対する角度が一定である軌道で、例えば常に同じ地方時に直下を観測したい地球観測衛星や、太陽光の入射角を同じ条件にしたい天文衛星などがよく用います。軌道傾斜角を90度以上にすることで、地球の微妙な重力場の歪みによる摂動と相まって地球の公転に同期する事が可能です。


これはH-IIA21号機による「しずく」打ち上げ飛翔コースと投入軌道です。いわゆるドッグレッグターンといって、種子島からまず南東方向に進み大きく右に進路を変えて南南西方向に向かっているのがよく分かるかと思います。これは南方向の有人地帯を回避するための機動ですが、これほど大きなものではないにしても今回どうやらこれを3段目で行ったようです。想像してみるに2段目燃焼終了→2段目切り離し→3段目姿勢変更→3段目噴射開始という感じでしょうか? ただひたすらまっすぐに飛翔させるのではなく正確な姿勢変更・誘導技術が必要で、これを用いて初の打ち上げ成功を成し遂げたのはちょっと驚きです。これまでの失敗からフィードバックしただけではなく着実な技術的進歩が見て取れますね。国際情勢もありますので今回の行為が問題視されるのは必至ですし、対応に追われた方々の苦労を尻目に言うのもちょっと申し訳ない気がしますが、「やるじゃん」というのが正直な感想です。いつの日か国際協調の元で堂々と宇宙開発に勤しんでもらいたいものです。
しかし韓国はちょっとバツが悪いですよねえ…

朝鲜中央电视台播出火箭发射现场画面

こちらに打ち上げ映像が上がっていますが、なんとオンボードカメラまで。

北朝鮮ミサイル発射 FNNのカメラが上昇する光とらえる [FNN]

フジテレビのカメラが中国領土からの撮影に成功したようです。

北朝鮮ミサイル:「衛星」軌道に到達…米韓両政府が発表 [毎日]

 森本敏防衛相は12日午後の記者会見で軌道上を周回しているかの確認は「専門的な分析が必要で、少し時間がかかる」とし、「人工衛星であれば発射される電波の有無について総務省が検討、確認している」と語った。

まあ、世の中には電波も何も出す機能の無い立派な衛星も存在しますので…。ともかくラジオ電波くらい出ていれば世界各地で観察できることでしょう。

「撤去」何だったのか? 米、韓国に不信感 情報を遮断 [産経]

 「近日中(の発射)はなさそうだとの報道が流れていた。警戒レベルを下げなかったのはさまざまなインテリジェンス(機密情報)によるものだ」

 玄葉光一郎外相は12日の記者会見で、情報を遮断された韓国とは異なり、日本政府には米側から時々刻々と発射施設の動きが伝わっていたことを示唆した。

 ミサイルの探知・迎撃にあたる自衛隊幹部も「12日の発射はあり得ると身構えていた」と振り返る。

 森本敏防衛相は同日の記者会見で「据え置かれていたもの(ミサイル)が取り外されたことは確認している」と説明。日本政府は、北朝鮮が不具合の見つかったミサイルを発射台から撤去し、間を置かず予備のミサイルと入れ替えた可能性が高いとみている。

 こうした準備状況を把握するには米国の衛星情報が不可欠。だが、複数の政府高官によると、米政府はいったん撤去して以降の新たな情報は日本側に伝えるだけで韓国ルートは遮断したとされる。ある高官は「分別なく韓国から情報が漏れることに業を煮やし制裁を科した」と指摘する。

え、韓国に情報渡してなかったんですか。しかし何ともスピード感のある情報戦ですね。

北朝鮮“人工衛星の打ち上げに成功” [NHK]

北朝鮮は、12日午前、北西部・トンチャンリから「人工衛星の打ち上げ」として事実上の長距離弾道ミサイルを発射したことを発表し、韓国国防省も、発射を確認しました。

しかしまあ、政府見解に倣った表現でしょうが、この「事実上の〜」という言い方、いい加減回りくどいですよね。国連決議はミサイルに関連する技術が対象なんですからどちらにしろNGなんですし、まして人工衛星の打ち上げはもはや事実なんですから。そこにミサイル技術開発が含まれていても、ソ連初の衛星を打ち上げたR-7やアメリカ初の衛星を打ち上げたレッドストーン弾道ミサイルそのまんまですし、前者なんてソユーズロケットとして現役バリバリです。サイロから打ち上げられるドニエプルやロコットなんてものもありますよね。用途によって呼称は変えていいんですよ。どうしても枕詞を付けたいのなら「弾道ミサイルを流用したロケット」くらいの表現でいいんじゃないでしょうか。


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