はやぶさ2 振動試験前の探査機報道公開にともなう記者説明会 起こし 2012.12.26

今回もNVSさんの中継から勝手に起こさせて頂きました。以下敬称略。

國中:JAXAで開発に着手した「はやぶさ2」ようやく形骸が整ってきた機会ということで公開。新たにプロジェクトサイエンティストの大役を引き受けて下さった名古屋大の渡辺先生。
はやぶさ2」が目指すもの 探査の意義・科学の意義・技術の意義の3項。探査、JSPEC(月・惑星探査プログラムグループ)が標榜する宇宙の新しい世界。未踏峰への人類の挑戦。人類の作ったものを太陽系のいたる所に送り出し、新しい知見を得る。第2の意義・人類はどこから来たのか。太陽系の起源と進化、人類・生命の源のカギを持ち帰り科学を進歩。第3、技術で世界をリード。宇宙空間を自由に航行する技術を獲得、目的天体との往復航行でサンプルリターン技法を世界に先駆けて確立したはやぶさ。それを更に洗練させる。
ミッションシナリオ。打ち上げは2014年を目指している。2018年に到着、はやぶさ1と同様にリモセン観測、着陸によりサンプル採取。新しい技法として衝突体で新しいクレーターを穿ち内部からの物質を露出させその近傍に着陸し採取。小惑星内部からの物質採取を目指す。2020年に地球帰還・サンプル分析というシナリオで開発中。


はやぶさ1とはやぶさ2の差5つ。1つ目は通信アンテナ。1号ではパラボラでX帯共有周波数の通信波を用いていたが。これを平面アンテナとしX帯に加えKa帯の周波数帯を用いた高速通信を目指す。2つ目はイオンエンジン、更に推力増強したものを投入。3つ目は分離ロボット、ミネルバ級3機。さらにドイツからMASCOTランダの合計4機。4つ目は姿勢制御装置。リアクションホイール。「はやぶさ」では3台中2台で故障が発生。「はやぶさ2」では4台、より堅牢なシステム。5つ目は先ほどの衝突装置。6番は目指す小惑星。C型小惑星リモートセンシングに特化した観測装置。近赤外分光器・中間赤外カメラ。「あかつき」化学推進系で発生した不具合に対し改良を加えた推進系をデザイン。


はやぶさ2で狙うC型小惑星はやぶさではS型、ストーン型。Cは炭素質。また技術的観点でいうと、現在の技術範囲ではあまり遠くには到達できない。イトカワと似た軌道、地球近傍小惑星小惑星があまり大きいと重力が大きく着陸時に燃料消費が多くなるため大きさにも上限がある。高速で自転していると着陸が難しい。そのような条件から目的地はかなり絞られる。結果として1999JU3イトカワの細長い500mから比べやや大きい約900mの球状。いわゆるメインベルト帯にはC型は沢山あるがかなり遠いため今の技術では往復できない。今回のものは大変珍しいことに地球近傍に存在する。どうしても科学的目標を達成するため。是非とも2014年打ち上げを死守したい。10年後しか同じチャンスは巡ってこない。2003年「はやぶさ」打ち上げから10年以上後というタイミングになっている。また欧米もサンプルリターンを目指している。小惑星探査が科学的に大変面白いと世に知らしめた結果。アメリカも2016年打ち上げでOSIRIS-RExでサンプルリターン。うかうかしていると越されてしまう。
はやぶさ2についても国際協力。NASA・オーストラリア・ドイツDLR・フランスCNES。



質疑応答
―毎日:新たなミッション追加、衝突体でクレーターを発生させサンプル採取というところを詳しく。
渡辺:小惑星に銅で作った弾丸をぶつけて表面を露出し中から新鮮なサンプルを持ち帰りたいという目的(表面は宇宙線や太陽からの熱で焼かれている)。この小惑星は衝突を繰り返しおそらく20kmくらいのものが壊れて形成された、破壊過程が重要。人工的なものをぶつけてどのくらいのクレーターができどのくらいの物質が飛び散るかなどの過程は科学的に非常に価値がある、地上ではなかなか実験できず未解明なところが大きい。同時にカメラでも撮影を計画。
國中:数kgの銅板を火薬で加速し秒速数kmでぶつける。現在製造中。複数回の着陸を想定しており、まずはやぶさと同様な着陸を2回、さらに衝突体をぶつけたのちにその近傍に着陸。その意味で複数回。
渡辺:小惑星から離れたところから衝突体を切り離し、爆発前に小惑星裏側に隠れる。分離から40分程度後。大量の破片が舞い上がる。それが収まったのちに戻り再度観測し安全であれば着地しサンプル採取という計画。
國中:「はやぶさ」では3か月しか滞在できなかった。2では1年滞在。必要十分なデータを基に着地点を分析し、またクレーターも分析、十分な時間をかけて現地での科学観測に努める。


NHK:プロジェクトサイエンティストを引き受けられた経緯。小惑星探査をどのように考えられるか。
渡辺:10月ということで直前。プロジェクトを進めるにあたりより広範な研究者の参加のもとに進めていくことが確実な成功のために必要と考えられた。日本惑星科学会の会長も務めているが、コミュニティでサイエンスの意義を明らかにし支援の輪を広げていこうと。元々興味を持つ方は多かったが、初代の人が行うのだろう、自分たちは出る幕がないと思っていた方も多かったので、意識を変えて是非参加して欲しいと。一部はPIという装置を実際に開発。サイエンスを色々考える重要な役割もより新しい人に加わってもらおうという変化をここ1年行ってきた。私の専門は惑星系形成論という理論的立場。小惑星の科学をやるという意味もあるが、むしろ小惑星を探査することによって惑星科学全般の解明というのが重要ということで、お役に立てるのでは。


―朝日:予算確認。打ち上げまでに314億円変更無し?
國中:変更無し。正確には地球帰還までの運用費も含むが2020年までの費用。打ち上げ含む。

―読売:イオンエンジン推力増強、どのように変更したか。2014年度でなければという話があったが打ち上げウインドウについて詳しく。
國中:イオンエンジンは私が研究している分野。「はやぶさ」打ち上げ2003年以降も研究活動。色々工夫、なるべくはやぶさ1号で確立した知見を活用。十分長く宇宙で運用できたので、全く抜本的に変更してしまうとヘリテージ(資産)を使うことができないので、それ温存したままで推力増強に成功。推力8mμから10mμになったものを投入。2014年12月頃打ち上げを想定してシステム開発。これを逃すと半年後の2015年6月、さらに半年後の2015年12月。軌道上は存在する。到着時期は変わらないが、遅くなればなるほどイオンエンジンで不足分を補う。許される時間が短くなり運転ノルマが上がっていく。2014年打ち上げでは80%くらいの稼働率が2015年12月打ち上げだと96%という稼働率になる。1週間7時間しか休めない。通信の必要性もあるので5・6時間は停止が必要。限界一杯。敷居が上がる。技術陣としては是が非でも2014年12月打ち上げをと考えている。


―産経:今日見せて頂けるのは構造体と太陽電池パネル、今後振動・噛み合わせ、その先はどのような工程を経て?
國中:現在は相模原で機械環境試験。だいたいの形骸が出来上がった。順調に進んでおり、年明けには筑波で音響試験。1月中頃に相模原に戻ってくる。ダミー機器を搭載し重さや重心を合わせている。これをコンポーネントに換装して1月末〜5月まで電気噛み合わせ試験。4〜5月には搭載品含めたほぼ完成形になる。ここで再度分解しコンポ―ネント性能試験や単体での機械環境試験など。10月に最終コンフィギュレーション製造に取りかかる。10月から組み立て・総合試験・電気試験・振動・熱環境試験など。2014年夏頃に完成。公開タイミングとしてだんだん完成品に近付くのでクリーンルーム取り扱いになっていく。精密機械がまだ搭載しておらず、今日のように大勢で近くまで見に行っていただく好機ということで公開の機会を設けた

うむ、やはり2015年があるといってもそのしわ寄せは大変厳しいものになるようです。十分な余裕を持って運用するためにも2014年打ち上げは最重要ですね。あとミネルバ級3機! 「級」ということはそれぞれ若干設計に違いがあったりするんでしょうか? ばらまくぞー!

「はやぶさ2」振動試験前の記者会見&機体公開 [Togetter]

NVSさんが機体公開に潜入し写真をアップされています! おお、かなり形が見えてきましたね…。構体と太陽電池パドルとサンプラーホーンがフライトモデル! イオンエンジンやカプセル、アンテナなどは試験用のダミーを取り付けているそうです。また今村さんが詳しくレポっておられますので必読。

小惑星探査機「はやぶさ2」報道公開と記者説明会 [ただいま村]

今村さんが配付資料を交えてとても分かりやすくレポっておられますので、こちらも是非ご覧ください。

はやぶさ2 機体の一部公開 [NHK]

はやぶさ2」の國中均プロジェクトマネージャは、「試験で見つかるトラブルを確実に解決して、万全の状態で2年後の打ち上げを迎えたい」と話しています。

はやぶさ後継機公開 小惑星「1999JU3」探査 26年打ち上げ予定 [産経]

計画を率いる国中均教授は「粒子の回収は世界が驚いた素晴らしい探査方法。はやぶさ2で小惑星の内部からも回収し、世界に先駆けた技術をさらに洗練させたい」と話した。

製作中の「はやぶさ2」初公開=2年後打ち上げ目指す−宇宙機構 [時事]

2014年12月に鹿児島県・種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げる予定で、搭載機器の製作・試験日程と、予算の両面で余裕がない状態が続いている。

JAXA:製作中の小惑星探査機「はやぶさ2」を公開 [毎日]

 財務省内閣府宇宙政策委員会による必要性の判断を参考に予算査定し、来月公表する予定。