NASAのイオンエンジンが世界記録を達成 [レスポンス]

ステロイドベルト(小惑星帯)の調査ミッションを与えられたドーン探査機は小惑星ベスタとケレスを訪れているが、現在NASAは次世代探査機に搭載するためのイオン推進機を開発中である。

NASAはこのイオンエンジンの開発プロジェクトを「革新的キセノン推進機(NASA Evolutionary Xenon Thruster:NEXT)」と名付け、未来において必要とされる7kWのイオン推進エンジンを試作した。

このイオン推進機は、化学推進エンジンに比べて少量のレベルの推進を生み出すが、より高い比推力・排気速度で動作する。そしてそれはイオン推進機が、化学推進エンジンの10から12倍の燃料効率を持つことを意味する。ロケットの比推力・燃料効率が高いほど、宇宙船は与えられた量の燃料でより遠くまで旅することができる。

NEXTイオン推進機は4万3000時間以上に渡って稼働し、それはロケット科学者にとって、この推進機が770キログラム以上のキセノン推進薬を処理して、3000万Nニュートン秒の累計衝撃を宇宙船に提供することを意味する。この実証パフォーマンスは、科学宇宙船を複数の小惑星、彗星、外惑星とその衛星の域外探査を可能にするものだ。

現在NASA小惑星探査機DAWNが運転しているのはNSTARで、このNEXTというのは平たくいうとそれを3倍の規模にしたもので推力が最大236mN(比推力は最大4190秒)。はやぶさ2に搭載するμ-10改良型が10mN(同3400秒)なので滅茶苦茶パワフルですが、その分電力消費が最大6.9kWとハンパ無いので太陽電池パドルが相当大型になります(なのでDAWNに3台搭載されているNSTARは冗長系で、同時運転せず)。例を挙げると、「だいち」のパドルが約22mで発生電力が1AUで最大約7kW。「はやぶさ」の発生電力は同2.6kWでしたがμ-10は最大1kWの4段階可変となっており、探査機全体としてコンパクトなシステムとなります。また比推力を10000秒まで高めたμ-10HIspや、大型化して推力を30mNに向上したμ-20も開発中。