第1回 「はやぶさ2」は目下急ピッチで開発中 [NATIONAL GEOGRAPHIC]

 岡田さんが担当しているのは、観測機器だ。リモートセンシングでデータを取るのは宇宙機による天体探査の基本で、必要不可欠の部分である。探査機に搭載できる重量に厳しい制限があるため多くの種類のものを積んでいくわけにはいかないので、どんな観測機器を載せるべきかという部分から、慎重に検討しなければならない。「はやぶさ」ではX線分光計(後で詳しく述べる)が選ばれた。これは、表面の組成を調べるのに適している。しかし、「はやぶさ2」では、中間赤外線カメラだ。

 この変更には、一度サンプルリターンに成功しているが故の自信を感じさせるものでもある。

「C型小惑星が、地球に落ちてきた炭素質隕石のような化学組成なのはだいたい分かっています。それに、サンプルを持ち帰れば、すごい精度で組成は分かります。一方で、もっと大きなレベルでの性質、物性を調べるとなると持ち帰ったサンプルで調べるのは難しくて、やっぱりメートルオーダーで見る必要があるんです。それは現地でしかできないので、じゃあ、今度は物性を調べる装置を考えようと。それが赤外線カメラなんですね。比較的簡便に、空隙率(くうげきりつ)、熱慣性など、物性をあらわすパラメーターを調べられるんです」

なるほど、サンプルリターン前提ならではの選定なんですね。これがリモートセンシングオンリーの計画だと、何を最大化するかと言う話はまた異なってくるんですね。