ISAS相模原キャンパス特別公開に行ってきた 2013.07.27

今年も2日目のみ参加。今回自分は市立博物館で行われているイトカワ微粒子サンプル公開を狙っているため、始発の新幹線に乗り込みいざ相模原へ。

08:40 淵野辺

以前より出迎える看板が増えておりますw


09:10 相模原キャンパス着


開始は10時からなのですが既に続々と集まりつつあります。イベントの整理券配布の行列も。この日は曇りだったので比較的涼しい感じです。いや暑いですけど。




無事に整理券をゲット! 予約組以外の当日整理券組は13時からグループに分けて順次巡回するようです。ちなみに他の講演などと被りたくない方は申し出れば時間をずらしてくれるという話でした。自分は13時〜14時のイプシロンの講演を予定しているのでこれならギリギリ大丈夫…かな?


市立博物館の企画展

こちらは既に開場しているとのことなので早速見学。


ビオン! ビオン! これはロシアの生命実験宇宙船で、これは9号の実機のようです。最近も打ち上げていましたね。




おお、これはUSERSの再突入カプセルの耐熱材の一部! はやぶさヒートシールドは撮影禁止でしたし、これは貴重ですよ。表面はかなり熱で歪められていますね。



こちらはインフレータブルカプセルの試作機ですね。風洞実験で使ったであろう小さいのもいっぱい。



はやぶさ再突入カプセルの風洞実験用模型。かなり年期入ってる感ありますね。




こちらはスペースシャトルエンデバーにより回収されたSFUの搭載機器! 実際に宇宙空間で展開した進展マストなんてなかなかお目にかかれませんねー。ありがたやありがたや。



さて、その隣ではちょっとスペースを区切ってイトカワサンプルの公開が行われていますよ。モニターにはライブでサンプルが映し出されています。CCDで映すとこれが限界とのことでちょっとぼやけて表示されていますが、肉眼で見ると非常に綺麗に見えるそうですよ。順番が回ってくるまで期待!
ちなみにこのサンプルはラマン分光というガラス越しに可能な分析のみなされたかんらん石で、わりと最近採取されたものだそうです。0.05mmではありますが超頑張れば肉眼でも見えるのではないかとのこと。これをサンプル公募で配布できないことはないが、わざわざこれを選ぶことも無いと思うので全国巡回などに回るのではないかとおっしゃってました。



その横で解説員の方から色々お話を聞けました。「1500個」と報じられているのはあくまでトントンで落ちてきた数字で、トントンの拍子にサンプルコンテナの破片など(主にアルミ)も混じっているそうです。その正確な数字はメモし忘れましたが、確か2割くらいだったかと。この3年間で400個ほど拾い上げたので、全部拾い上げるのは更にかかるだろうとのこと。
ちなみにパネルにも掲載されているようによく出回っている微粒子の画像は電子顕微鏡で見たものなので透けていないが、光学で観察すると今モニタに表示されているように透けて宝石のようにキラキラして見えるのだそうです。なるほど。
こちらのモニタで流しているのはサンプルを配布用に仕分けているところで、マス目の真ん中にチョンと置くそうです。同時に送れるのは5個。
はやぶさ」で回収された微粒子からは太陽風による宇宙風化の痕跡が確認できるが、その年代は数百万年以下とかなりフレッシュなのでイトカワ表面からはどんどん物質が放出されて行っているのではないかとのこと。地球に落ちてくる隕石では焼けて失われている部分なので、それを直接得たのは初めて。スラスタから放出されるガスによる影響についてはほぼ無い、というかまだ1つも見つかっていないのだそうです。
小惑星表面を撮影するカメラについては、「はやぶさ2」では1mmまで分解能を高めるとのこと。



こちらは色々あって回収に成功したEXPRESSカプセルの模型。




キャンパスに向かうと森田先生のイプシロン講演整理券が配布されていたのでわりとギリギリゲット成功。



場内はかなりの人手です。


第1会場


例によってはやぶさブースはこの状況w





IES兄さんが熱い解説。
はやぶさ2」で重量増に寄与しているのはイオンエンジンの推力アップとH-IIAによる打ち上げどちらが大きく寄与しているか?との質問には「イオンエンジン」で、H-IIAによる打ち上げでは初期軌道投入時に有利に働いているとのこと。やはりそこから小惑星に至るまではイオンエンジンによる軌道変換が重要になるんですね。




はやぶさ2大漁旗きたああああああー!! 吉川先生ニッコニコ! これはもう採取成功したらこの旗を羽織ってウイニングランするしかないですねww
ちなみにこの旗は有志のファンの方が作られたようです。




その吉川先生から少しお話を聞けました。
―観測センサを赤外線メインにしたのはサンプル採取前提ということから?
それもあるが、タッチダウン前になるべく水の多く含まれる場所を狙って降りるためにこれらのセンサで観測する。
―先に降ろしたミネルバで衝突体による地震の観測を行うということは?
面白そうなので検討はしたが難しそうなので今回は行われない。



1/500イトカワ模型。かなりの大きさです。



寄せ書きがあったので一筆寄せさせていただきました。




はやぶさ2」模型最新版。




とりあえず今回もピカピカさせておきました。




色紙などが増えていました。




イトカワ(手前パネル)と1999JU3の比較。一回り以上大きいですね。




運用室前の廊下の張り紙。




月探査関連のブースではSELENE-2着陸地点候補の第2回総選挙が行われていました。




候補者ポスターが面白すぎww 個人的に「月を中心から考えます」がツボでした。



自分は前回と同じくこちら支持で。



今回の選挙結果つについてはこちらで公開されますよ



SELENE-2について色々聞いてみました。
―プロジェクト化への動きは?
毎年やっているがなかなか厳しい。
―越夜はローバーも?
ローバーに断熱テントを搭載する。収納して何度も展開できる。
―展示されているローバーのクローラーが毎年変わっているが
登坂能力などを色々試している。25度が目標だが、現在は20度までクリアできたシステムはある。細かいレゴリスで沈むのが難しい。今展示している丸形は今ひとつ。
―双眼カメラはステレオ視できる?
そのとおり。LMCUS。


第2回場

IKAROSブースが大混雑だったので先にこちらへ。

ASTRO-Hブース。ASTRO-E2「すざく」の後継機として2015年打ち上げ予定。こちらの冷凍機は機械式と液体ヘリウムのハイブリッドですが、「すざく」では液体ヘリウムが早期に蒸発してしまい一部の観測が行えませんでした。ASTRO-Hでも構成は同じですが、性能アップした機械式だけで5kまで追い込めるようになったので仮にヘリウムによる冷却が機能しなくても冷却→観測→冷却→観測とサイクルで観測可能。逆に言えば定常運用でヘリウムを使い切った後も観測ミッションを継続可能ということで、かなり長く使えそうです。




赤外線ブース。こちら2022年打ち上げ目標のSPICA。
―打ち上げ次期が当初よりずれ込んでいるのは
予算的なこともあるが技術的にクリアすべき部分がある。今は本体の熱を放出する部分(シールドの反対側)の黒い塗料を試験している。ESAなどとの共同ミッションでNASAも検討してはいるが(ジェームス・ウェッブなどで)予算がカツカツのため厳しい。
―観測センサの視野はかなり広い?
5分×5分ある。「あかり」では10分だった。
―主境はNIKON
欧州で作る。この大きさになるとあちらの方が軍事関係などで試験設備が整っているため。日本で設備を作ろうとすると数十億かかる。




質問をしたので今回もあかりちゃん3巻ゲット! 読んだところどうやら次の4巻で完結のようです。来年も来なければ。ちなみに1巻から2巻までは現在こちらで配信中




SPICAの本体内部はちょうどこの大きさのようです。でけえー!




「あかり」搭載の分光装置。これ削り出しなんでしょうかね。


中庭


腹が減ってきたため昼食を求めてさまよう。



あちらではFMさがみが出張放送中。




はやぶさ2焼きそば。あ、なるほどノリと卵で!




その横でエッグドロップコンテストが開始されました。屋上から降下! 結構成功率高めです。


第3会場


今年は「はやぶさ2」向けイオンエンジンの追い込みのためチェンバーは展示せず、DESTINYのブースになっています。そしてここでもIES兄さんが熱く語っておられます。





このDESTINYのポスターと動画と模型、なんと外部の有志の方が作成されたそうです。いやめちゃくちゃ格好いいんですけど! 西山先生も大変お気に入りのようです。そして西山先生にちょっと色々お話を。


―ハロー軌道到達後に更に深宇宙へも?
イプシロンによる打ち上げ後にイオンエンジンだけで加速するので時間はかかるが可能。




―μ20の連続運転実績は
2万5千時間はいける。DESTINYの場合搭載するキセノンの量的に1万時間分動けば十分。μ20は中和機を2基搭載し冗長化。DESTINYでは1基でも十分だろう。ちなみにここに展示しているカーボンのグリッドは右から10万・100万・150万×3重ね。それぞれ800〜3000個の穴が開けられている。1枚作るのに数個のドリルを使い切る。


―DESTINYでは薄膜太陽電池するが、この模型では曲面状になっている。これは?
こうすると打ち上げ時の振動に構造的に強くなる。耐久性アップ。


SPRINT-Aにも薄膜太陽電池の実証機器(NESSIE)が搭載されると聞いたが
ポスターにある薄膜2接合を実証し、3接合も実験する。それを踏まえてDESTINYに搭載する。いきなり本番になるので。

―小型科学衛星バスを探査機向けに軽量化するという記事があったがこれはDESTINYを念頭に?
私にも分からない。記事では小型科学衛星の4号機とあったがDESTINYは3号機を目指しているので。DESTINYの事なら嬉しい。軽量化できれば当然イオンエンジンによる加速が有利になるので。


第5会場


ここは最も大きい会場。人出が凄いです。



イプシロンロケットブース。相変わらずっていうか前にも増して濃い空気ww





RVT用炭素複合材タンク。



無冷却で使用可能な複合材ノズルの実験サンプル。耐久試験に用いたようです。





ついにリリースされたイカCD+DVDゲット!


イプシロン講演


さて13時からは森田プロマネの講演会です。満員御礼。




モバイル管制・イプシロン方式。パソコン1台でも可能だが壊れたら怖いのでこっそり2台置いている(笑)これはオリンピック。今回はイプシロンが最初だが、次からは世界が真似してくるだろう。




イプシロン第1段を整備棟に運び入れている様子。



EducationのE。


来月打ち上げるE-XからE-1'という2号機まで若干間が空くのは、E-1でのコストダウンを段階的に進めて早めに実証する新たな開発があるため。機体として結構違う。



高性能低コスト版イプシロンとはいくつかのバリエーションがある。ケース1とケース2があるがまだ検討中。ケース2は色々野心的だが、はやぶさクラスの探査機を30億円以下でポンポン打てる夢のような時代が来る。一つ応援していただければ。



Eの由来、一番下は打ち上げ後会見で。


イトカワ微粒子公開

さてイプシロン講演が終わったら速攻で市立博物館へ急行。

スタッフの方の解説を聞いてから数十人のグループで入っていきました。集合から全員が見終わるまで30分強だったでしょうか? 微粒子は透き通っていて想像以上にまばゆかったです。横には小瓶に入った微粒子ダミーが置いてあって、ちょうどこのくらいだとの説明でした。超細かい砂という感じ。


第1会場2階


太陽観測ブース。



これは偏光フィルムを用いたちょっとした手品なのですが、この写真だけで仕掛けが分かるでしょうか?



ひので先生関連記事のスクラップ。




水星探査機BepiColomboは2015年打ち上げ予定で開発中。




金星探査機「あかつき」コーナーではペーパークラフト教室が開催中。



その反対側では高圧実験実施中。



これは再投入を目指す「あかつき」のプランの1つ。


ここでちょっと質問。


―予定より近い軌道を周回していることで熱がこもりがちだと聞いたが
こもると言うよりゲタをはかせた状態。放熱との収支。MLI(断熱材)が変色して美味しそうな色になっていく(笑) すると断熱性能が徐々に劣化。
―金星周回軌道に投入したとして、最も探査機の寿命に影響するのはバッテリー?
バッテリーもそうだが、一番ダイレクトに影響するのは推進剤。遠金点をなるべく近くしようと推進剤を多く使うと、姿勢制御用リアクションホイールのアンローディングに多く割けなくなり運用が短くなる。逆に遠金点を遠めにして推進剤を多く確保しても観測精度に影響する。どちらを取るかトレードオフ

IKAROSブース

さて、一番最後に時間を確保して回ってきましたよ。

これらはIKAROSの軌道上運用実績。


IKAROSのセイル上に搭載された薄膜太陽電池。本当にフィルム程度の厚さしかありません。



液晶デバイスのデモ。



奥の方では学生さんとおぼしきスタッフがハイテンションで解説中です。その内容は以下について。



木星トロヤ群探査ではサンプルリターンも検討されており、その場合のサンプル採取方法としてはコンベックステープを垂らして採取する方法が有力だそうです。


IKAROSを50m級にするには単に大きくするだけではダメで、それを実証するためにダミーのデバイスを貼り付けてセイルを試作。今回の新型試作セイルは長辺が18m。




右がIKAROSの試作セイルで、左の大きいのが新型の試作セイル。折り幅は人間の腕の大きさ的に45cmと決めたそうです。


右奥の方で森先生がエンドレストーク中だったので自分も割り込んでちょっと質問を。


―次の冬眠まではあとどれくらいの期間運用可能?
あと2か月。6〜9月の4か月間。IKAROSは10か月で太陽を1周し、そのうち半分は太陽電池に光が当たらない。ほぼ横に近づいた時点で電力が不足してしまうので10か月の半分弱ということになる。
―通信レートは距離が一番影響する?
距離もそうだがもう一つ、LGAを使っているため。MGAを使えれば高速通信ができる。その点前回の発見時は惜しかった。最初の探索運用だったので再補足まで時間がかかった。見つけた時に一瞬だけMGAが繋がった。指向性が強く10度以下なのでうまくアンテナが地球を向いていないといけない。
―軌道面から離れる方向へのズレはほとんどない?
そこは難しい。
―見つかっている以上は大きくはズレていない?
そう思われる。


はやぶさの再補足も苦労したが、IKAROSと違って光圧で加速しない。IKAROSは放っておいても加速するので1回目は苦労した。それにお金が無いので探索運用も週1(笑)
ビーコン運用ではテレメトリも取れないんじゃと思われるがデータは得られる。補足できているということはセイルが無事ということ。軌道の変化から情報が得られる。
現在IKAROSプロジェクトは終了したが、私が元々いたソーラー電力セイルミッションの方に戻ってそちらで運用している。


いや森先生話し出すと本当に止まらない止まらないw いつまでも聞いていたかったのですが時間が押してきたので惜しくも離脱。聞くところによると17時頃まで話しておられたようです。

M-V

M-V展示の前でも解説が。

こちらM-Vで用いられたフェアリングハニカムを炭素素材で挟み込んでいます。こちらは東レ製。


終了


特別公開終了後は宇宙クラスタの皆さんで談笑しながら軽食。今回も本当にお疲れ様でした! やっぱできたら2日間とも参加したいですね。予算と体力が許せば次こそは。

相模原キャンパス特別公開2013、終了 [ISAS/JAXA]

毎年恒例の相模原キャンパスの特別公開が7月26日(金)、27日(土)の2日間にわたって開催されました。来場者数は、初日が5844名、2日目が7699名、合計で13845名でした。

写真がアップされています。来場者数はほぼ去年と同じだったようです。