HTV「こうのとり」4号機ミッション完了後記者会見 起こし

例によってNVSさんの中継から勝手に起こさせて頂きました。

(以下敬称略)
田中:本日3時11分に最後の軌道離脱マヌーバを行いHTV-4は無事に再突入。36日間にわたるミッションはパーフェクトと言っていいほどに完了した。今回の4号機の運用管制した前田さんをはじめとしたJAXAのミッションコントロールチーム、関係企業のメンバー、NASAスタッフ、ステーションクルーが一体となって成功に導けたと思っている。その成果非常に誇りに思っている。本日LADEEという探査機が打ち上がったが、民間の宇宙船シグナスも9月18日にISSに向かって打ち上げられる。その際HTVと同じ近傍通信システムを使用するので、JAXAは「きぼう」の近傍通信システムによる運用をNASAからの委託を受けて支援する。今日までHTV-4を運用していたチームの一部が引き続いて支援を行うので非常に忙しいがきちんと役割を発揮していきたい。今回の再突入までの完全な成功を続けてこられたことで国際的信頼をいっそう高められたと思っている。これからも継続していくことで日本の技術力、底力を示していければと思う。計画されているHTV5・6・7号も着実に進めていきたい。ご支援をお願いします。


前田:リードフライトディレクターをさせていただいた前田です。先ほどの話にあった通り無事完了しミッションを終えられ正直ほっとしている。36日間と実はこれまでのミッションで一番短いものだったが、大きな事故もなく一丸となって成功に導けたことは本当に誇りに思う。往路も非常に順調で、ISS滞在26日間の間に荷物を運び出し暴露ペイロードを運び出し、今回初の試みとしてISS船外実験装置を回収するミッションも無事終えた。9月4日に離脱し先ほど再突入したが、今回離脱から再突入まで少し長めの時間をとった。1つの目的として、ISSの下に再突入点をもっていきISSのカメラで再突入の様子を撮影できないかとNASAからの提案も受け今回チャレンジした。我々もつい先ほど ISSの外部カメラを駆使し非常にきれいな再突入の様子を取得できた。同じくHTVにはデータを取得するi-Ballを搭載している。現在受信作業中だがそちらと合わせて再突入の様子を解明する手掛かりになればと思っている。HTVはミッションを完了したがこれからシグナス支援を我々フライトコントロールチームが引き続き行う。メンバーは休みもなく大変な時期が続くが、自分たちの宇宙船だけでなく海外の宇宙船のサポートも100%、120%完了できるように準備してシグナスの打ち上げを迎えたい。


質疑

―読売:今回初めてISSから再突入の様子を撮影したとのことだが、管制室で声が上がっていたようだがその時の感想を。
前田:HTVとしては初めての試みだったので正直どんな映像が見られるだろうと、NASA含め我々自身手探りの中の試みだった。こんなに見えるのかと。画像が見えたのは通信が切れてテレメトリが見られなくなった後だった。通常は通信が切れるとそこでミッション終了でお疲れ様となるが、もうちょっと待って見ようというところで見えたので単純な言葉だが嬉しかった。


―朝日:その時見ておられたのはここに写っている画像か。
前田:これは切り取りだが、実際は宇宙ステーションからのビデオカメラの映像だった。最初は点が動いていて、あれだろうなと追いかけていると急にパッと明るくなり尾を引く映像が見えた。
―機体は太平洋の南でほぼ燃え尽きたか。i-Ballは。
田中:南太平洋の安全な落下域に落とすという運用。ほぼ燃え尽きるがチタンのタンクなど一部燃え残る。問題を起こさないように公海の限られた域に落とす。ノータムという形で交通機関に報告する。今回ISSから素晴らしい映像が撮れたが、i-Ballの映像と付き合わせて分析しあり破壊のメカニズムなど予測との妥当性など研究し今後の回収やより安全な再突入に役立てたい。i-Ballは現在受信中。完了次第ご報告したい。


―時事:前田さんに。ずっとこのミッションのためにやってきていよいよ最後と言う時、見ていた気持ち。立ち上がって伸びをした時の気持ち。シグナスの件、どういう支援を? オンラインで? 向こうへ出かけていって?
前田:画像が撮れたのは非常に嬉しかったが、ISSから離れていった時、あと3日で自らの手で再突入させないといけないということで少し寂しい気持ちだった。伸びというかヘッドセットを外して上に上げた。みんなに終わったなという気持ちで。シグナスについては「きぼう」モジュールにPROX(近傍通信システム)があり、その通信相手がシグナスに搭載されている。我々は「きぼう」モジュールのPROXを筑波から運用管制する。ヒューストンのISSチーム、シグナス運用を行うワシントンのダレスにあるオービタル社のMCCDと呼んでいる管制チーム、3つのチームが1つの通信システムを使った2つの宇宙船、シグナスとISSを運用する形。


フリーランス大塚:どうでもいいことだが、私は伸びではなくガッツポーズだと思っていたがどちらか(会場笑い)
前田:どっちかというと半分ガッツポーズ(笑)
大塚:田中さんへ。ほぼ完璧だったとのことだが何か小さいトラブルなどはなかったか。
田中:小さいトラブルは山ほど。運用や冗長系でカバーして成功に導くというエキサイティングな業務。非常に小さなものだが、バルブ開閉のステータスが正しい値を時々示していないなど色々あった。それを運用や冗長系でちゃんとカバーできたのがパーフェクトだった。
前田:ISSから離れるのが20分ほど遅れた。その理由はロボットアームの向きが少し違ったこと。運用は生ものなので遅れは常に発生する。遅れたら遅れたできちんとリリースさせて離脱できる。ヒューストンのチームと上手く連携できた。
大塚:3号機の離脱の時に変な力がかかって、ということがあったがその対処はうまくできたか
前田:完璧だった。これまでの中で最も予想通りの綺麗な離脱軌道を描いてくれた。過去3機で学んだことが4機目にして実ったという気分。


NVS:表面電位センサは予定通り期待されたデータが取得できたか。
田中:ちゃんと動作し、ISSと接続した時の電位変化など取得できた。いろんな姿勢で飛び回るが、姿勢によって周囲のプラズマとの関係でも電位が変化するので様々な条件でのデータが取れた。これから解析すると色々なことが分かってくる。
ISSのカメラから映像を取得していたが、どのような状態のカメラでどのように撮影したものか。
前田:詳細な仕様までは今すぐには分かりかねるが、HTVが接近する時に映像を取得しているカメラと同じものを使用している。
―マニュアルで追いかけていた?
前田:最初は予測の軌道を元にしてパンとチルトとズームを割り出し固定していた。点で見えた時には固定していたがある程度明るくなりトラックできるようになるとNASAの管制から一部のカメラをマニュアルで追いかけていた。


―共同:i-Ballは着水直後から衛星中継で筑波に?
田中:正確に言うとイリジウムでデータを送る。大樹町だとよく受信できるのでそちらで受信している。特に大きいデータは。イリジウムの電子メールシステムから。既存の電話システムを活用しデータを取得している。
i-Ballが沈むのは何日くらい?
田中:電池があるうちにデータ送信を行い、気密構造ではないので数日で沈んでいく。


フリーランス大塚:HTVは7機予定していて4号機はちょうど真ん中、これから後半戦になる。7号機の次についてどうしたいかという個人的な思いなど。
田中:7機はISSに2016年まで日本が参画する負担分の代替。これから国では2020年まで参加することが決まっているが、その際にどのような役割分担をするかは議論中。その後何機必要とされるかはまだ決まっていないしその内容が国際調整されている状況。我々は大きな荷物を運べる。曝露部の大きな荷物も運べる唯一の宇宙船。NASAには2016年以降もバッテリを運ぶために是非使いたいと言われている。是非ISS運用に継続的に役立てていければと。
前田:個人的には国際貢献の場で信頼を得た宇宙船を飛ばし続けられるのは光栄だしそうしていきたいという気持ちもあるが、その一方でHTVは片道切符なのが残念だと思っている。それは今回離脱の時に感じたものでもあり、少しでも何かを持って帰られるような付加価値を付けられればと思っている。


NVS:先日6号機にテザーを付ける実験を行うと発表があったが、5号機では何か行うか?
田中:4号機から少し発展させた表面電位センサーを搭載する検討を行っている。各号機で色々な技術データの取得が出来ないかは積極的に進めていきたい。
―3号機までは管制室にこうのとりのぬいぐるみがあったと思うが今回お見かけしなかった。今回マスコットは無し?
前田:今回は隠れている(笑)