ロケットがまっすぐ降りてくる!? スペースXの実験成功 ファルコン9、第1段着水試験にみる“したたかさ” [日経ビジネス]

 ファルコン9v1.1の公称打ち上げ能力は、静止トランスファー軌道に4.85トンだが、SES-9/10は共に5.3トンもある大型衛星だったのである。これに対してスペースX社は、ファルコン9v1.1には、同社が実験のために使う余剰打ち上げ能力があり、SES-9/10も打ち上げ可能であると説明した。つまり、ファルコン9v1.1は、最初から再回収実験のための着陸脚などを装備する前提で開発されており、そのために打ち上げ能力は低い値を公表していたのだった。

 先に触れたとおり、商業打ち上げ市場では、実験ペイロードと衛星の相乗りは強く忌避される。相乗りは打ち上げの成功確率を低下されるものだと認識されているからだ。余剰打ち上げ能力を生かした超小型衛星の同時打ち上げも、安全面で厳しい審査を行い、やっと実施しているという状態だ。

 ところがスペースXは、実験を実施するのが、心理的抵抗感が少ない分離後の第1段であるということを利用して、着陸実験のためのペイロードと商業衛星打ち上げの相乗りを実現した。打ち上げコストは、顧客からの打ち上げ料金で賄われるので、スペースXとしては、事実上ただで実際の打ち上げによる技術開発を進めることが可能になった。

なるほど、公称スペックをかなり控えめに発表していたとは。「現在の能力をこれだけ実験に振り分けます」より心証的に余裕を感じるのは確かです。この実験のためだけに打ち上げるというのも予算的に大変ですし、実フライトと平行して開発を進めるとしたらこれしかないですよね。もっとも、標準の打ち上げ費用と比較してどの程度上乗せされているかは不明ですが、今回に関してはまとめて受注したドラゴン宇宙船打ち上げですからある程度融通できるのかも?
そういえばTelstar12Vの打ち上げを受注したH-IIAも第2段高度化初フライトという試験込みですね。おそらく第2段の試験分はJAXA負担ということで幾分かディスカウントされているのではないかと言われています。今後H-IIAでは試験衛星の類の打ち上げが少なく、官需向けの実用衛星が多めでリスクを許容してくれそうな打ち上げがなかなかありませんから、そんな中で高度化による性能向上を前提とした打ち上げを受注してきたのはある意味ここで言われる「したたかさ」を感じます。