「はやぶさ2」ミッション概要説明 起こし(速報版)

本日の「はやぶさ2」機体公開に合わせ記者説明会が開かれました。今回もNVSさんの中継から起こさせて頂きました。ありがとうございます。ライブから書き起こしたので、詳細や誤字脱字など、後ほど改めて清書できればと思います。
以下敬称略。

はやぶさ2プロジェクトの概要

國中:ようやく完成。目的は3つ。1つ目は科学。生命の原材料を地球に囲んだという仮設のある領域。そこからのサンプルを持ち帰る。2つは技術。宇宙をより多面的に活動する技術を提供。初代で実証した往復航行技術を発展継承するもの。探査。新しい概念。人類の活動領域。国際探査を推し進める。技術的根拠をもたらす。
打ち上げを本年冬を予定している。1年後に地球スイングバイを行い、1999JU3への遷移軌道に乗る。イオンエンジンで加速し2018年に到着。観測を行った後、ローバを投下。タッチダウンを行い数回のサンプル採取。新たに衝突装置を持っていく。クレーターを穿ち内部サンプルを取得する。その後復路に付き2020年に帰還。
はやぶさ2」の形骸。はやぶさから改良したイオンエンジン。光学カメラであるOMC。DLRから提供されるロボット、日本のミネルバ。特徴的なのが平面アンテナ。KaバンドとXバンド。通信は地上局。
はやぶさ2の技術。数々の技術チャレンジが全て成立しないと成就しない。初号機では様々な困難に遭遇。初号機の更なる技術的洗練化。


1. イオンエンジン
大変燃費の良い推進機関。欧米では直流放電式。日本はマイクロ波放電式。大きなアンドバンテージ。放電電力を一切使用していないため長寿命。ただしいくつかの不具合、中和器。磁場を最適化し長寿命化。18000時間規模の耐久実験で実証済み。イオン源も8mN→10mNの推力向上を達成。化学推進の10倍の燃費効率。惑星間孤高以外にも静止衛星などにも。日本のみならず世界にも。JAXAはこれを応援する立場である。ドバイ衛星への中和器搭載も。


2. 自動・自律技術
距離により40分程度の通信遅延が発生する。アナログ電話機レート。8kbps。大変遅い。このような中で遠隔操作を行うためには探査機が自ら着陸を行う高度な運用が必須。従来はフライバイ・ランデブー・着陸・サンプルリターンという4つのフェーズでだんだん高度化。はやぶさでは最初からサンプルリターンを目差した大変高度なもの。これは自動・自律化技術かで成り立っていた。ロボット技術の一端。
2号機の特徴。GCP-NAV。判断の閾値、など不確定な要素。パラメータを上書きするシステム、GSP。着陸時の弾丸発射失敗はソフトウェア検証を充実。初号機では「降りられる所に降りる」、2では「降りたい所に降りる」を目指す。月・火星着陸に資する技術。まさに日本が得意とする技術になる。国際宇宙探査への重要な試金石。


3. 初号機からの発展・改良
衝突装置。表面は宇宙風化を起こしている。小惑星そのものの状態を保存していない。内部、周辺に飛び散った新鮮な物資を採取。5kgの火薬でインパクタを加速し小惑星表面に衝突させる。
通信技術。Kaバンド通信。32GHz帯。32kbps、4倍の通信速度。フロンティアに進出するための技術。より高い周波数、地上ではなかなか利用されないが、宇宙で利用するために開発。
信頼性の向上。RWを3台から4台、恒星センサも1台から2台へ。化学推進系も冗長系を独立。

はやぶさ2」の科学

小惑星は太陽系の原始の状態を留めている。サンプルを回収し太陽系の進化の歴史を解明する。隕石は地球の環境下で汚染されている可能性がある。汚染のないサンプルを持ち帰りより精密に太陽系科学を。惑星を作り出した根源物質。これに肉薄するデータを提供。進化の道筋を解明するデータを提供。国際協力。初号機同様、NASAから協力。DSN(深宇宙局)。地球の裏側でも通信可能に。探査機の位置を特定する。軌道決定支援も。着陸(帰還)に際しオーストラリアを利用。交渉始めている。概ね許可をいただいている。欧州からも新たな協力。ドイツのMASCOTランダ。はやぶさが通信拠点となり地球への電送。


MASCOTの説明

MASCOTという小さな着陸機。2kg。到着後に探査機から切り離される。開発のメインはドイツ、日本からは通信を。4つの機器の1つはカメラ。2つ目は熱放射計。3つ目は磁力計。4つ目はマイクロオメガ。近赤外分光計。

質疑応答

NHK:ようやく完成だが
宇宙機器は身の回りにあるものとは違い1つしか作れない。たった1つの機械をたった1度の打ち上げ機会に合わせ作り上げるのは難しいことだった。1年8ヶ月前に構造モデルを公開してからフライトモデルをご覧戴けるまでになったのは計画の総力が備わっていることの証明。一同大変喜んでいる。
―初号機でのトラブルが色々あって逆に社会現象になったが、2では
もちろんスムーズなのがいいが、けして宇宙の現場も厳しいものである。新たな航海を目指す。


―:小惑星までの距離は。出発スケジュールは
6年、飛行距離は52億km。打ち上げ時期はまだ紹介できない。関係各所と調整が必要。今年度冬を目指している。


―日本放送:川口先生から何かアドバイスなどは
要所要所に。アドバイザとして参加。各先生にご協力頂いている。なかなか厳しい指摘もあった。「あかつき」のトラブル関係もありご指導頂いた。1つの例として、推進系を完全に2系統に分け独立したシステムを作った。


―:1999JU3を目指す理由
C型という分類の小惑星。炭素質。有機物や水を含むと考えられる。イトカワはS型。石。比較的沢山ある。行きやすいものはほとんどS型。C型を「狙って」行く。地球近傍のC型は非常に少ない。10年以内に行けるものとしては大きさなども考えると2・3しかない。打ち上げ機会は非常に少ない。数少ない打ち上げウインドウに間に合わせなければいけない。


NVS:今回MASCOTに搭載される観測機器、フィラエと共通するものは? ロゼッタで彗星探査が行われるが、はやぶさ2小惑星で観測を行う、2つの探査はどう考えるか
両方とも惑星を作る元となった物質。太陽系の進化。


―朝日:はやぶさ2は最終調整中とのことだが、打ち上げまではどのような
相模原の作業はほぼ完了。今後種子島へ。電気系チェックを行い、キセノンの搭載、充電池の搭載など。


フリーランス秋山:NASAのARM
直径10mの小惑星を地球近傍へ持ち帰る計画。もう1つはイトカワの岩。既に分かっている。1つの案として再度イトカワへ行き岩を回収するもの。接近・捕獲する作業。非協力ターゲットという。HTVはお互い確認しながら接近。天体にはそのようなものがない。はやぶさで行ったもの。成功例としてデータが揃っており、データを提供してくれないかという打診がある。いくつか協力の枠組みを作れないかという検討を行っている。


―産経:MASCOT どのような期待を
JAXA、CNES・DLRとの新たな協力。


―時事:色んな探査機が計画されているが
今回はC型。生命の根源 有機物がある。進化の過程 地球まで持ち帰り詳細な分析ができる。大きなインパクト。NASAでもOSIRIS-REx。広い意味でのC型。非常に期待している。


―共同:MINERVAについて
MINERVAは3機。うち1機は大学コンソーシアム。表面の近接画像を取得、表面温度の計測。


―:はやぶさ2以降は
まだまだ我々は太陽系を調べたい。お金がかかるので効率良くできればと思っているが、皆と相談しながら日本の惑星科学を進めていきたい。Mk2は検討外。


―:小惑星命名
命名については国際ルールがある。1999JU3は民間機関が機械的に発見したもの。JAXAから命名したいとは伝えている。どう決めるか悩ましい。はやぶさ1では非常にいい名前を付けてしまったので(会場笑い)


以上