太陽風はどう作られるのか?〜金星探査機「あかつき」が明らかにした太陽風加速〜 [JAXA]

おお、外合観測の成果が。

 研究チームを率いる今村氏は次のように解説しています。「2011年6月に「あかつき」が地球から見て太陽のほぼ反対側を通過する機会があることに気がつきました。これは一度きりのチャンスなので、太陽風加速の手がかりを得ることを目指して、2011年6月6日から7月8日にかけて断続的に16回の観測を行いました。」

 太陽風の中にはプラズマの細かな濃淡があり、これが太陽風に流されて電波の経路を横切ると、地上で受信する電波の強度が星のまたたきのように揺らぎます。この揺らぎのパターン(スペクトル)を分析すると太陽風の速度がわかるのです。また、受信電波の周波数も同時に揺らいでいて、これを分析するとプラズマの濃淡の空間構造がわかり、音波などプラズマ中を伝搬する圧縮性の波動を検出することができます。

 観測結果を合わせると、(1)太陽表面で作られたアルベーン波(注1)が太陽から遠く離れたところで不安定となる、(2)その結果生じた音波が衝撃波を生成、(3)生成した衝撃波がプラズマを加熱し、太陽風を加速、というシナリオが導かれます。このシナリオは近年の数値シミュレーションに基づく予想とも良く合っています。つまり、「あかつき」がとらえた音波は、まさにコロナ加熱の現場を映すものと考えられます。



2010年に周回軌道投入に失敗したのは痛恨でしたが、ケガの功名どころかあまりにも一線級の成果が上がってきました。当時の様子はこちらこちらなどに残っています。この観測によりコロナ加熱のメカニズムの一端が明らかにされました。金星フライバイからわずか半年後、ちょうど太陽との外合になる機会を捉えて取得した観測データです。地球からの観測で同様のデータを得るのは厳しいとのことですから、いやほんと一体世の中何がどう転ぶか分かりませんねw 

金星探査機「あかつき」の観測成果に関する記者説明会 [ただいま村]

本日の会見を今村さんがレポって下さっています。登壇されているのも同じ名字の今村さんなので注意。ここで来年末(2015年11月)に計画していた金星周回軌道再投入は再検討が行われるとの説明があったようです。となると一旦スイングバイを入れて2016年6月あたり投入でしょうか?

金星探査機「あかつき」、15年8月に軌道再投入へ [日経]

 宇宙航空研究開発機構JAXA)は18日、2010年12月に軌道投入に失敗した金星探査機「あかつき」について、来年8月に再挑戦する方針を明らかにした。15年度内の金星到達を目指す。

 あかつきは金星の気象などを調べるために10年5月に打ち上げたが、エンジンの故障などで軌道投入ができなかった。11年に金星に向けて軌道修正し、再挑戦の準備を進めていた。軌道に投入できれば、金星の雲や雷などの観測はほぼ予定通り実施できるという。

あと、このような記事があったのですが、現在の「あかつき」は先ほど書いた通り最短で2015年11月に再会合する軌道です。その3ヶ月前は近日点通過前後というタイミングなので、まずここで金星周回軌道投入は有り得ないでしょう。もしあるとすれば軌道投入に向けての軌道修正でしょうか。どちらにしても現状で15年11月以外となると15年度内は無いでしょうし、ちょっと正確な記事ではありませんね。いずれにしても検討中の段階としては公式発表を待つべきですね。