『スペースシャトルの落日~失われた24年間の真実~』を読んだ

 結局のところ、スペースシャトルは宇宙ステーションありきであり、アメリカはISS計画縮小という形でついにそれを見限ったという現実が「スペースシャトル」という事業の失敗を雄弁に物語っていると言えます。 勿論、スペースシャトルの持つ柔軟性によって様々な技術的恩恵がもたらされましたが、低コストのために設計された再利用型の機体はその高性能さのために打ち上げのたびに大規模なオーバーホールを余儀なくされ結局打ち上げ単価が高コストになってしまったという本末転倒さや、有人という条件だけなら有翼型にする必要性は無く、帰還における危険度を上げるだけであるという指摘が目から鱗
 スペースシャトルが運用停止している間は唯一ロシアがプログレスなどでISSへ補給や人員輸送を行なっていましたし、民間の宇宙旅行もロシアのソユーズで行なわれついにスペースシャトルで実現する事はありませんでした。 根本的な欠陥を抱えたシャトルに依存する事で悪循環が生じていたということです。
 また悪い事に、欧州や日本もシャトル型の輸送船の開発に手を出し、最終的に凍結という形で幕を閉じました。 そして日本は「今後10年程度独自の有人宇宙計画は持たないと断定」するに至ったわけですが、その一方で計画縮小されたISSを通じて今後の有人宇宙計画の「基礎研究開発を推進する」としています。 それを尻目にアメリカは月面開発や有人火星探査というスローガンを立て、スペースシャトルを基幹としたISSは2010年までに最小規模で完成・同時にシャトル運用終了・2016年にISS運用終了と、もはや斜陽に差し掛かっています。 はっきり言って、今から始めても遅いくらいです。
 もちろん有人宇宙船を打ち上げるためにはH-IIAなどの基幹ロケットの信頼性向上は大前提なので、平行して開発を推進していく必要があります。 完成を待たずして老朽化が始まり、10年後には運用終了とされているISSは決してアテにならないわけです。 「ふじ」構想のように、モジュールを再利用する形で独自の宇宙ステーションを建築できる従来のカプセル型こそコストパフォーマンスと安全性を両立した有人宇宙計画のコンセプトとして有力です。 試算次第ではこれらの開発費はISSモジュールの開発費を「大きく」下回るそうです。 日本の無人探査機制御技術の高さからすれば、決してこれらのシステムの実現は難しくはないと言えるでしょう。 他方、日本製の宇宙服を開発するというニュースも出ていますし、もしかしたら既に一部でそういう動きが出てきているのかもしれませんね。
 ただでさえ遅れをとっている日本の宇宙開発は、今こそシャトル依存から脱却する必要があると理解できました。

 スペースシャトルの落日~失われた24年間の真実~』
 著者:松浦晋也
 出版社:エクスナレッジ
(2005年5月)