『沈黙のフライバイ』を読んだ

ロケットガール』『太陽の簒奪者』と読んで、そして今作『沈黙のフライバイ』はかなりストイックなSF短編集になっています。 SFというか、ほんのちょっと先を擬似的に実現してみせたというような印象が相応しい、ちょっと郷愁の漂う感じさえしました。
表題作の『沈黙のフライバイ』は『太陽の簒奪者』に続くファーストコンタクトものですが、こちらではまた別の形で異星人と地球人の文化的相違を描いています。 実際に宇宙開発機関に属していたあの方のアイデアがフィーチャーされています。 また、目を見張る「置き土産」にはニヤリとさせられました。 最後に収録されている『大風呂敷と蜘蛛の糸』も実にイイですね。 非常にユニークな手法での高空探査、もう少しで宇宙に手が届くという場所で目にした光景などには息を飲みます。 そういった、「もう少しで手が届く」という所を巧みに描き出した作品集でした。


沈黙のフライバイ (文庫)
野尻 抱介 (著)
出版社: 早川書房 (2007/02)