小惑星探査機「はやぶさ」イオンエンジン−Cへの切り替えに成功 [ISAS/JAXA]

当初は、近日点通過時の探査機の温度が高い時期に合わせて、エンジン−Cの点火および起動を試みる予定でした。しかし、逆に温度が高過ぎて、事前に脱ガスを行った際の温度を超えて危険な状態に入る可能性が出てきたために、これを延期し、むしろ姿勢を傾けて太陽光の入射を避け、低温化を図ってきました。幸い6月7日無事に近日点(太陽距離0.95天文単位)を通過させることができました。なお、この間もエンジン−Dによる軌道変換を計画通りに継続しました。

探査機の温度が十分に降下した7月下旬になって、数日間をかけてエンジン−Cの電源をヒータで昇温させ、新たな立上げ手順によって同エンジンの再起動を試みたところ、7月28日にイオン加速に成功しました。これにともない、これまで連続運転してきたエンジン−Dを停止させ、エンジン−C単独運転に移行させました。エンジン−Cの累積運転時間は短く余力十分のため、これに切り替えたものです。同エンジンについては、2005年8月以来の運転であり、制御手順や調整および姿勢制御装置との連動運転の調整にしばしの時間を要しましたが、現在のところ安定な運転状態を維持しています。

グッジョブ! Aは最初から調子が悪く動かせず、Bは若干寿命に響く兆しがあり、運転時間が一番長いDだけで航行していましたが、これは帰還に向けた実に大きな好材料ですね。 先月の28日頃からCエンジンのテストをするという話が以前イベントであったそうですが、それが上手くいったという事ですね。 あとのネックは一つだけ生き残っているリアクションホイール

はやぶさ」は、軌道変換に効率のよい時期に対応する本年11月まで、イオンエンジン−Cによる動力航行を継続し、それ以降はしばらく冬眠モードで弾道飛行させる計画です。

地球に向けての巡行開始宣言が4月下旬、一旦火を落として慣性飛行に移るのが11月なので、その間の加速はおよそ5000時間。 地球帰還に必要とされるのがエンジン1台での運用で計8000〜10000時間の運転が必要らしいので、その時点でおそらくノルマの半分といったところでしょうか。