かぐやモニターカメラ映像からわかること [松浦晋也のL/D]

月探査機「かぐや」のモニターカメラが撮影したのは656×488ドット、32万画素のJPEG画像だ。画像のレベルとしては10年前、発売直後のデジカメ程度である。

それでも、これだけ臨場感溢れる画像が撮影できるZ(pdfファイル)というのは驚くべきことだ。

が、プロの科学者なら、我々が「きれいだな」「素晴らしい」と思う以上の情報を、同じ画像から読み取れるのではないだろうか。

と、思っていたら、産業総合研究所の中村良介さんが、「クレーターの底の永久影の状態が分かりますよ」と、教えてくれた。もっと詳しく知りたいのだが、とお願いすると、「では、平田さんに連絡して図を作ってもらいましょう」ということになり、ご存知、会津大学の平田成さんが、詳細な図を作成してくれることになった。

かくして、平田さんから届いたのが、冒頭に掲載した図だ。かぐやのモニターカメラの画像に写った、シュレーディンガーアムンゼン、そして、シャックルトンの各クレーターの位置が、1994年にアメリカの月探査機「クレメンタイン」が取得した月表面データと比較してある。

中村さんによると、ここで注目すべきは、クレーターへの日照の入り方なのだという。たとえばアムンゼン・クレーターを比べれば、日照の入り方が異なるのが一目瞭然だ。
極における日照は、月の水の存在と密接に関係している。モニターカメラの画像から、日照の状態を読み取ることができるのである。

なんと、あのモニターカメラ画像から早くも「科学観測」を行なっておられます。 なるほど、確かに影の入り方が違いますね。