陸域観測技術衛星「だいち」データの地図への利用 [JAXA]

先日報道された、標高データの誤差がやや大きい問題について。 実は去年の時点で既に技術的な目途が付いていた模様です。 地形図の修正例なども載っています。

1. 高さ精度について

背景と原因

・2万5千分1地形図に必要な高さ精度は等高線間隔(10m)の半分の5mであるが、衛星の微小な熱歪等に関する設計解析・検証などの技術的な課題があり仕様化が困難であることから、高さ精度については技術目標とした。
・高さ精度の誤差の主要因は、衛星の熱歪等による微小な変化であり、これは季節等により変動するため、精度を向上するためのデータを長期に取得する計画としていた。
・昨年12月中旬までの高さ精度は地上基準点を用いて6mであったが、その要因は姿勢制御の問題ではなく、高さ精度を向上させるためのデータが蓄積途上であったことなどによる。

対応

・現在はデータが蓄積されており、地上基準点を用いて5mの目標精度を満たしている。

2. ブロックノイズについて

背景と原因

・ブロックノイズは、「だいち」衛星上でPRISMデータをJPEG*1圧縮することで発生する。*1:JPEG(Joint Photographic Experts Group)は、データ圧縮に関する国際標準化機構(ISO)の一規格であり、世界的に広く利用されている。
・PRISMデータが大容量であり、データ中継技術衛星「こだま」とのデータ伝送のため、日本の地球観測衛星として初めて「非可逆」圧縮方式を採用した(詳細は添付1参照)。圧縮率は、画質への影響が少なく、データ伝送が可能な約1/4とした。
JPEG圧縮方式はブロックノイズ等の誤差を発生することを認識していたため、圧縮による高さ精度及び画像に対する影響を、航空写真を用いたシミュレーションにより評価した(平成7年度) 。その結果、高さ精度への影響は小さく、ブロックノイズは認められないことを確認した。
・シミュレーションに用いた航空写真と実際のPRISMデータでは、大気の影響や撮像特性の差(フィルムとCCD*2の違い等)があるため、これらが引き金となり、画像の一部においてブロックノイズが発生したと推測している。*2:CCD(Charge Coupled Device, 電荷結合素子):光を電気信号に変換するデバイス

対応

地理院で研究された手法を基にしたブロックノイズ軽減ソフトウェア(新規開発)を用いることで改善することを、昨年12月末に確認済み。
・本年3月までにJAXA地上システムに適用し、提供を開始予定。

ん、観測に問題ないなら結構なことです。 読売ももうちょっと落ち着いた報道をして欲しかったところですねw

追記:

プレスリリースのアドレスが変わった模様→http://www.jaxa.jp/press/2008/01/20080116_sac_daichi_j.html
「だいち」の観測画像を取り扱っているRESTECより読売記事への反論文(pdf)が出ております。