表面化したスペースシャトル引退延期 [日経BP]

米露の関係悪化に伴いNASAソユーズ宇宙船調達が難航する恐れが出てきていますが、単にシャトル引退を延期すれば良い、とはいかないそうです。

ソユーズTMAは、2002年10月の運行開始以来、これまでに12機が打ち上げられている。うち11機が地上に帰還して任務を終了しており、現在最新の「ソユーズTMA-12」がISSにドッキングしている。

ところがこれら12機のうち「ソユーズTMA-1」(2003年5月4日帰還)、「TMA-10」(2007年10月21日帰還)「TMA-11」(2008年4月19日帰還)の3機が、帰還時にトラブルを起こして緊急モードの弾道再突入で帰還している。死者が出ていないので一般マスコミではあまり問題になっていないが、11機中3機が緊急運用で帰還しているというのはかなり大きな問題だ。

これらのトラブルが、「ソユーズTMA」の設計に起因するものなのかははっきりとしない。ロシアの宇宙機製造の現場は1990年代の経済不振の時期に、かなりの数のベテラン作業者が離職しており、それが原因となっての製造ミスの可能性もある。

ロシアが最初の宇宙観光客を受け入れ、ソユーズ宇宙船で打ち上げた2001年当時、ソユーズ宇宙船は3000万ドル(1ドル107円として約32億円)、打ち上げに使うソユーズロケットは約2000万ドル(21億円)と推定されていた。ところが今年に入ってから、NASAシャトル引退後の宇宙飛行士打ち上げにソユーズを使うためロシアと交渉を行う過程で、宇宙飛行士1人の打ち上げ価格として5000万ドル(約54億円)という数字が報道された。どうやら3人乗りのソユーズ宇宙船の価格は1億ドル(約107億円)以上となっているらしい。

ソユーズロケットも、ソユーズ宇宙船と同様に価格高騰が進んでいる。欧州アリアンスペース社は、2009年から南米ギアナ無人仕様のソユーズロケットを打ち上げる計画を進めている。海外報道によると、アリアンによるソユーズの打ち上げ価格は5000万ドル(約54億円)となっている。有人打ち上げ仕様のソユーズがこれ以上の価格となっていることは、まず間違いない。

シャトルのサポート手段として重要なソユーズですが、かなり価格高騰を起こしているようです。 というかロシア製宇宙機全般でも言える事なんでしょうねこれ。 しかも最新型は緊急トラブルが頻発しているようで、最近も弾道突入による急激なショックで韓国人宇宙飛行士が帰還時に負傷するという事故もありました。 実績のあるソユーズシリーズも決して万全とはいかないようです。

しかしシャトルの引退延期は、そう簡単な問題ではない。

まずシャトルは金食い虫である。NASAシャトル運行1回当たりの経費を公開していないが、2008年10月からの2009会計年度の予算で、57億8800万ドル(約6193億円)をシャトル運航に投ずる計画となっている。2009会計年度中のシャトル打ち上げは5回なので、シャトルの1回の運行には11億5800万ドル(約1239億円)かかっている計算となる。2003年2月のシャトル「コロンビア」空中分解事故の以前は、この額はおおよそ5億ドル程度だったので、老朽化が進むシャトルの安全性を確保するために、莫大な資金が必要となっていることが分かる。

NASAシャトル引退以降、生じた予算的余裕をオリオン宇宙船などの有人月探査向け機材開発に振り向ける予定だが、シャトル引退が延期となると資金的余裕は失われ、オリオンなどの開発も遅延することになる。シャトル引退を遅らせることで、次世代宇宙船の開発がますます遅れてしまうわけだ。

1回の飛行で1000億円超て。 そりゃ簡単に延期とは言えないわけですね…